米で5年間の事前契約を導入したJA常総ひかり 令和7年産米の10%強、集荷も前年比10%増に JA全農が視察会2025年7月11日
JA全農は7月10日、茨城県のJA常総ひかりで現地視察会を実施した。JA全農いばらきは今年から新たに、米の集荷対策で5年間の事前契約制度を導入し、各JAが最低保証金額を設定し、組合員の農家と契約を進めている。JA常総ひかりの取り組みについて、JA全農の金森正幸常務は「JAや生産者、卸売業者の意見も聞きながら効果を振り返り、メリットが大きければ他県でも横展開を検討する」と述べた。
左からJA全農いばらきの前野副本部長、JA常総ひかりの堤組合長、生産者の飯泉敏郎氏、JA全農の金森常務
JA全農は「事前契約比率7割を目標として掲げ、複数年契約はその一つ」(金森常務)として位置づけている。事前契約では「3年間」が一部の県で始まり、「5年間」は「初めてではない」ものの全国的にも珍しい。従来の出荷契約では営農が継続可能な生産者手取りが担保されず、概算金と商系など集荷業者との価格が乖離し、集荷数量の減少につながった。そのため、JA全農では生産者とJA、全農(連合会)間の結びつきを深め、生産者が持続可能な契約栽培を導入している。
JA全農 金森正幸常務
5年の複数年契約は、JA全農いばらきが導入を決め、県内17JAのうち米を取り扱う16JAに対して提案。各JAが導入を判断し、組合員に周知してきた。仕組みは、各JAが期間中の最低保証金額を設定し、9月末までに、市場価格を勘案して「最低保証価格にプラスアルファできる価格を確定」(JA全農いばらき・前野三千丈副本部長)し、最終的な買い取り価格を決める。JAは生産者が提示した希望数量をもとに、販売先と交渉する「三者での取り組み」。現時点では「販売先は米の卸売業者で、小売業や中食・外食は含まれていない」としている。
JA常総ひかり 堤隆組合長
JA常総ひかりは、令和7年産米の集荷で買取、概算金、5年契約の3つの方式から組合員が選択できるようにした。このうち5年契約は今年3月頃に2万200円の最低保証金額を決め、5月の連休明けから生産者に示し契約を進めた。6月時点でとりまとめた結果によると、主食用米のうち「10%強が5年契約となった。全量契約は不履行のリスクもあるため勧めていない」(堤隆組合長)としており、契約した生産者の大半は、生産量のうち一定の数量を契約している。
なお、同JAの令和6年産米の集荷量は約40万袋(1袋30kg)で、「買取と概算金が半々」だった。うち12万袋は飼料用米で、主食用に限ると概算金分が20万4000袋、買取は5万5000袋。買取分は直売や学校給食、ふるさと納税の返礼品用が中心だった。
大規模農家への大口集荷奨励金も導入し、出荷量に応じて1俵(60kg)あたり200~400円を加算し、小規模生産者にも50円を支給する。こうした取り組みの効果もあり、令和7年産米の集荷契約量は5年契約分を含めて前年比10%増となっている。
委託方式の概算金は「コシヒカリ」の場合、8月末に価格を決定し「年間を通じて販売され、精算までに約1年を要する」(堤組合長)。これに対して、5年契約では「最低保証価格の決定が(概算金より)1カ月後ろにずれるので、市場動向を見極めたうえで価格提示できる」というメリットがあり、市場価格の変動をある程度反映させることが可能となる。
一方、買取方式では「契約金額が最終価格となるため精算は早いが、追加払いはなく、価格変動が反映されにくい」。それぞれの方式には一長一短があるが、長期契約の場合「最低限の収入が見通せるうえ、米価の変動という最大の不安要素を軽減でき、経営の長期的見通しを立てやすい」との評価もある。
販売先にとっても、「原料の調達原価が一定で、予定通りの数量が確保できるため、調達の安定化に資する」(金森常務)利点がある。ただ、近年は需給バランスの影響による価格変動が顕著であり、従来の概算金方式や買い取り方式と組み合わせた経営判断が求められる。
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