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コラム:正義派の農政論

【森島 賢】

2018.04.23 
政府攻撃の戦略目的は弱者にとって何か一覧へ

 モリカケ問題と日報問題が、国会で最大の問題になっている。そのため、清濁とり混ぜた労働法制の審議が止まっている。野党は激しく政府を追及しているが、その戦略目的が分からない。
 野党の戦略目的は何なのか。それは、農業者にとって、どう関わるのか。労働者や中小企業主などの経済的弱者に関わって、いったい何なのか。そこのところが分からない。政府を窮地に追い込んで、どうしようというのか。
 分からないからといって、弱者は野党の追及を、冷淡に見ているわけではない。好意をもって見ているからこそ、内閣支持率が下がっているのである。
 だからといって、野党はそれに甘えてはならない。追及の戦略目的を、弱者に分かり易く説明しなければならない。そうすれば、もっと強力な追及ができるし、弱者からもっと熱い支持が得られるだろう。

 野党は、これまで安倍晋三首相から、さんざんに痛みつけられてきた。だから、このさい思う存分いじめて鬱憤を晴らし、留飲を下げて内閣支持率を落とし、積年の恨みを晴らそうというのだろうか。
 それもいいだろう。否定はしない。むしろ拍手をしたい。しかし、それが目的ではないだろう。
 モリカケ問題にしても、日報問題にしても、それを公文書の隠蔽や改竄で終わらせてはならない。隠蔽や改竄を実行したのは誰か。その実行犯を陰で操ったのは誰か。彼らをどう処罰するか。
 とりあえず、そこを入り口にするのだが、それで終わったのでは皮相的に過ぎる。それらは、問題の入り口に過ぎない。

 問題は、その入り口の奥に何があるか。そして、それらは弱者とどう関わっているか。そこのところを見定めて、厳しく追及しなければならない。
 そうすれば、野党は与党と違って、弱者の真の代表であることが分かる。そこに与野党の鋭い対立軸があることが、もっと鮮明になる。
 そして、弱者から、もっと深部からの、もっと力強い支持が得られる。

 野党が、入り口で問題の追及を止めてしまえば、行政の不祥事などという低次元の追及に終わってしまう。いま、次々に表面化しているセクハラ問題などという、破廉恥罪の追及と同次元になってしまう。
 それはそれで大事だが、そこで終わるのでは、国民の圧倒的な支持は得られない。弱者とは関わりの薄い、雲の上の出来事として、冷ややかに傍観する人は少なくないだろう。
 野党は、この入り口を突破した奥にある巨悪を、徹底的に暴かねばならない。そうすれば、弱者からの拍手喝采が得られるだろう。

 入り口の奥にあるものは何か。それは内閣人事局による幹部行政官の人事の壟断である。人事局に睨まれれば、昇進の道は断たれる。官僚にとって、それは致命的である。だから、人事局の意向には逆らえない。
 その人事局の意向の内容は、規制改革推進会議が決める。この会議の議長は、安倍首相である。
 このように、人事局と規制改革推進会議が一体になって、首相の意向を、あるときは公然と、また、あるときは隠然と、官僚に伝える。官僚は、それに応えて首相の意向に沿うように行動する。こうしたなかで、醜い忖度が横行する。
 このような政治機構が、官僚を腐敗させる。それは早急に打ち破らねばならない。
 これが政府攻撃の入り口の、1つ奥にある攻撃目標である。

 規制改革推進会議は、これまで悪事を積み重ねてきた。農業と農協を企業に売り渡すことで、財界のために、新しい搾取の場を創り出すことを狙ってきた。また、労働法制を改悪することで、財界のために、搾取の強化を狙ってきた。それらを具体化し、実行するのが内閣人事局に操られた官僚たちである。
 それゆえ、この政治機構への攻撃には、農業者や労働者などの弱者も参加するだろう。
 野党は、この弱者の攻撃を全国の各地で組織し、その先頭に立たねばならない。そうしてこそ、野党は弱者の代表になれる。

 こうした政治機構は、どうのようにして生まれ、存続しているか。それは、安倍一強による専制的な政治が生んだものである。
 では、なぜ安倍一強政治が生まれたか。それは、国民の圧倒的な支持によるものではない。安倍首相の政策が支持されたからでもないし、個性が好まれたからでもない。小選挙区制の魔術によるものである。
 だから、つぎの攻撃目標は、小選挙区制に的を絞らねばならない。

 野党は、安倍内閣を退陣に追い込むというが、その後にどんな内閣を作るのか。
 安倍首相は総辞職によって、自民党政権を存続させるのかもしれない。いまの自民党政権を温存したままで、首相を代えるだけの宮廷革命で誤魔化そうとしているのかもしれない。野党はどうするか。
 安倍首相の、もう1つの選択肢は、衆議院の解散である。そうなったとき、野党に準備はできているか。小選挙区制のもとで、勝ち目はあるか。

 小選挙区制は、2大政党による政権交代を目指した制度として発足した。しかし、それは幻想だった。実際には、野党の四分五裂によって安倍一強政治を生んだ。そして、諸悪の根源になり、いまでも続いている。
 野党は、この反省のうえに立って、いまこそ小選挙区制を廃止するための検討を始めねばなるまい。それを究極の戦略目的にする時期ではないか。

 第1野党の民進党をはじめ、多くの野党は、小選挙区制のもとで、保守主義による2大政党制を目指している。我が党も保守主義だ、などといって与党との対立軸をボカし、財界にすり寄っている。
 それでは、野党の存在意義はない。弱者にとって、野党などなくていい。
 保守主義は、市場原理主義を基礎にして、資本による労働の搾取の強化を是認し、その必然的な結果として生まれる格差を容認する考えである。格差を容認したうえで、あまりにも酷いから弱者に少しばかり恵んでやろう、という不遜な考えである。
 野党は保守主義を目指すというが、それでは弱者の代弁者になれない。それどころか、弱者に敵対する。そんな野党ならいらない、と弱者は考える。

 農業者をはじめ、国民の圧倒的な多数を占める弱者は、第2の保守政党ではなく、弱者の政党の出現を要求している。野党は、この要求に応えねばならない。
 野党が政権を奪うというのなら、農業者や労働者や中小企業主など、広範な弱者の支持のもとで、倒閣を戦略目的にした、国会内外での運動を強力に展開しなければならない。
(2018.04.23)

(前回 ボロボロの安倍政権

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