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シリーズ:JA 人と事業2014

2015.03.16 
【JA 人と事業2014】八木岡努代表理事組合長・JA水戸(茨城県) JA出資法人で営農支援一覧へ

多様な担い手育成

 JA水戸は東京都心から100km余り。大消費地に近く、広い農地があり、農業の生産・販売条件に恵まれている。この環境を生かし、新規参入者を含めたさまざまな農家支援策を講じ、野菜を中心とした農業の振興、JAづくりに努めている。八木岡努・代表理事組合長にその取り組みを聞いた。

 ――JA青年部の活動から組合長になり、当初、思っていたことは実現していますか。

八木岡努代表理事組合長・JA水戸(茨城県) 八木岡 就任して3年経ち、播いた種がやっと芽を出してきたかなと感じています。総合ポイント制の導入や、将来のエネルギー問題を見越し、6億円あまり投資にした太陽光発電は年間約7300万円の売電ができるようになりました。
 また、この3月にはJA出資型法人のJA水戸アグリサポート株式会社を立ち上げました。そこで、新規作物の導入や生産技術の実証、農作業の受委託、共同利用施設の運営管理、遊休農地の活用などを行い、農家の経営をサポートします。
 また今年1月には、JA管内にある鯉渕学園農業栄養専門学校、日本農業実践学園、それに水戸市の4者で、新規就農者の確保・育成に向けた協定を結びました。在校生に研修先などを紹介して、水戸市内で就農を促すための産官学の提携です。

 

 ◆地元資源を有効に活用

 ――どのような地域農業のビジョンを描いていますか。

 八木岡 管内には広い農地があり、消費人口も多く、農業の立地としては恵まれたところです。しかし、これまでは京浜の大市場に目が向いて、それをうまく活用できなかったように思います。組合長に就任したころ、水戸市内の学校給食における食材の地元産の自給率は30%後半でした。日本の食料自給率40%と比較し、この水準では生産地としての意味がありません。いま、やっと42%にまでなりましたが、まだまだです。
 もっと地元に配慮し、「水戸野菜」を学校や病院、福祉施設、レストランなどで使ってもらうよう働きかけ、自給率を50%を超えるくらいにはしたいものです。そうすれば、農家所得向上のための農産物輸出をしなくても、十分やれると思います。
 そのためには、消費のニーズに合った作物を作って生産と消費を近づけ、生産者と消費者の顔の見える関係をつくる必要があります。同じ作物でも、見た目だけでなく、栽培方法や味、さらには地域の伝統、文化にまで消費者の関心を広げていくのです。それができると、学校給食は単に食材の提供でなく、食育の教材になるのです。
 毎年開いている食育イベントの「ちゃぐりんフェスタ」や、学校に出向いての出前授業(バケツ苗・野菜栽培)など、食育活動に期待しています。例えば朝どりのトウモロコシを学校に納めるときは、JAの職員や生産者である青年部員が同行し、おいしい食べ方だけでなく、一緒に皮を剥き、どのようにして作っているのかを伝えるのです。農業体験では学校で刈り取った稲を乾燥させ、昔の千歯こきや足踏み脱穀機で脱穀・精米しています。それでおにぎりを作り、これも100%地元産の豚汁などと併せて味わってもらっています。
 JA青年部によるこれら活動がスタートしたころは近隣の学校だけでしたが、いまではJAグループや水戸市がバス代を負担するなどで範囲が広がり、行政とのタイアップも定着してきました。また管内の公立小中学校に新米の「コシヒカリ」を1食分プレゼントしています。お陰さまで、水戸産のお米も定着してきています。
 「水戸野菜」の統一ブランドづくりと言う面では、どの品目を選ぶかについて検討を始めています。赤ネギ、柔らかネギなど、水戸ブランドとしてある程度認知されはじめてきています。

 

◆「担い手」の 受け皿必要

 ――地域農業確立のための担い手対策はどのようにしていますか。

 八木岡 新規就農の担い手は、研修生として、それぞれ農家が個人的に受け入れています。ほかに一時的に県の農業大学校から引き受けることもありました。そうした受け入れを通じて感じたことは、新規就農者には、親や家族に不安を与えないように、しっかりした受け皿が必要だということです。それがJAなら安心してもらえます。そのために学校・行政・JA水戸の協定を結んだのです。そして座学は県立農業大学校が行うなど、行政と連携の仕組みができつつあります。
 また水戸市の農業公社には、農家の仕事をサポートするパートバンクがあります。いま30人ほどが登録しています。これは水戸市の農業公社なので事業は市内に限られますが、広域のJA水戸アグリサポートなら、行政を超えた対応ができます。これは広域JAの強味です。
 JAではこの数年で約6000名の組合員を増やしました。1戸1人が多かったのですが、後継者も加入して頂き複数組合員化しました。その目的は、経営者が引退して代替わりするのでなく、現役のころから後継者を育てて欲しいということです。そうすればJAも、次世代向きの営農対策がやりやすくなります。
 お陰で正組合員数の減少は少なく、平成27年1月末現在、正組合員1万2639名、准組合員9252名で、正・准逆転という都市型のJAにはなっていません。ただ水戸市にあるということで都市型JAとしての性格も持っており、両方のいいところをとって、JA水戸のカラーを出せればと思っています。
 後継者の育成は、それをサポートするJAの部会や農業法人がしっかりしていると間違いありません。JAの直売所やインショップもその一つで、ここに出荷してもらうことで所得を確保できます。受け皿づくりには具体的な手立てが必要です。 

 ――農地の利用増進はどのように取り組んでいますか。

 八木岡  基本的には水戸市の農業公社が取り組んでいます。農業公社にはオペレーターや貸し手、借り手などの細かい情報があります。JAは顔の見える、よりきめ細かい農地の情報提供などを通じて、そのお手伝いをしています。
 そのため先進JAなどでは農地管理の面でGIS(地理情報システム)を導入していますが、管内に多い畑地で真価の発揮を期待しています。年1作の水稲と異なり、畑作は作目、肥料、収量などのデータが年間を通じて必要で、その量も多いので管理が大変です。
 この点で、JA出資法人のアグリサポートが野菜苗を供給することで、品目や品種を特定し、収穫時期、出荷量の把握ができます。そのデータから市場向きか、直売所向きかを判断し、出荷を誘導できます。
 また、JAの直売所は現在8か所あります。出荷者には定年退職者も含め、65歳以上の人も多くいます。こうした人たちには苗の供給があると身軽に野菜づくりにスタートできます。

 

◆地域の人に見える活動

 ――地域への働きかけではどのような活動していますか 

 八木岡 直接的には総合ポイント制や、さまざまなJA事業・活動へ参加のキャンペーンが中心です。基本は、やはり小さいころから食育や体験農業,あるいは商工会との提携など、地域の人の見えるところへ出て活動することだと思います。この考えで地元の水戸フォーリーホックの試合には幟を立て、農産物の即売を行っている。また「生き生き健康プロジェクト」や「ウォーキング大会」、女性大学など文化活動にも力を入れています。

 

◆現場の経験     一番大切に

 ――職員には、どのようなことを求めますか。

 八木岡 現場の経験を大切して欲しいと思っています。金融担当であれば、信用金庫などを訪ね、人が集まるところはどんなところか、そこにどのように関わっているかなどを学び、農業資材に関わる職員は売るだけでなく、興味をもったものは展示相談会を開いて組合員の声を聞いて欲しい。また販売の担当者は、市場に行って他の産地と比較し自分のJAの農産物はどの位置にあるか、包装ケースはどうかなどの知識を入れ、組合員から頼りにされるようになって欲しいと考えています。
 組合員から「助かる・頼りになる」といわれるようになるには相当レベルアップする必要があります。組合員の声や意見をよく聴くことが大切です。信頼されて「ありがとう」といわれることを心掛け組織維持のための改革ではなく、現場からしっかりJAを建て直す力になっていただきたい。

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