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シリーズ:新世紀JA研究会 課題別セミナー

【K・F】

2017.03.02 
【覚 醒】基本に人間の「本性」一覧へ

協同組合とは

新世紀JA研究会 今回の農協改革で一番大きな問題になっているのが、協同組合とはどのような存在かということです。そこで協同組合について考えてみます。結論から言いますと、協同組合とは助け合いという人間の本性(Human Nature)に基づいてつくられた組織ということです。
 協同組合について語られるのは、そのほとんどが役割論です。「経済成長が止まった今こそ協同組合の役割発揮の時だ」などというのがその典型例です。協同組合論でもこの役割論が主流です。国際的にみても、フランスの協同組合研究者のジョルジュ・フォーケのセクター論、つまるところ社会は私益・共益・公益という領域の役割発揮で成り立っているという役割論が協同組合論の到達点のように考えられていますし、戦後、「貧しさからの解放」で近藤康男が唱えた「協同組合は国家独占資本主義が利益を吸い上げるパイプの役割を果たすものだ」というのも役割論です。
 今にして思えば、この「パイプ論」はマルクス主義による協同組合論であり、協同組合の本質論からはあまりにもかけ離れたものでした。役割論の説明内容はともかく、一般的にこうした役割論は協同組合の理解にとって有益なものであることは間違いがなく、それぞれが、協同組合は人間の本性である助け合いの組織であるという本質の理解に役立てられれば問題はありません。
 しかし、今回の協同組合攻撃に対抗していくためには、これをさらに一歩進めて、「役割論」のコインの表裏の関係にある協同組合の「そもそも論」についても思考を巡らせておくことが重要になっています。
 それでは、協同組合のそもそも論とは一体どのようなことを言うのでしょうか。その出発点は、世の中には私益組織、共益組織、公益組織の三大組織があるという事実認識からはじまります。言うまでもなく、私益組織の代表は会社組織であり、共益組織は協同組合、公益組織は政府組織です。
 およそあらゆる組織は人間の欲望をかなえるために、人間に代わってつくられるもので、組織は人間の何らかの欲望によってつくられたものと考えられます。そこで、この問題を考えるうえで参考になるのが、公益組織たる国家・政府組織の存在です。前述の三大組織のうち、歴史上最初に登場したのが国家・政府組織です。国家・政府組織は、紀元前から存在します。
 国家・政府組織はなぜ古くからこの世に存在するのでしょうか。それは、この組織が安全に暮らしたいという究極的な人間の「自己保全」の本性に基づいてつくられた組織だからです。古来、人間は敵から自分を守ることが必須でした。収穫を終え、団らんの生活が保障されたといっても、外敵からの襲撃に合えばそれは一瞬のうちに藻屑になります。
 そこで、人間の安全を保障する組織が必要になります。それが国家・政府組織です。この組織は、安全に暮らしたいという人間の本性に基づいてできた組織なのです。このように、組織の存在を人間の本性からとらえれば、会社組織は「競争」、協同組合組織は「助け合い」という人間の本性によってつくられてきたものだということに思い至ります。人間には、誰しも競争心がありますし、一方で、人間には助け合っていかなければならないという心があります。
 世の中の三大組織である会社組織、協同組合組織、政府組織はこうした人間の本性によってつくられたものであると理解できます。一方で、逆説的に言えば、世の中に会社組織、協同組合組織、政府組織が存在するということは、人間の本性が競争・助け合い・自己保全であることを物語っているものでもあります。

◆    ◇

 ところで、いま進められている農協改革は何を目指そうとしているのでしょうか。言うまでもなくそれは、競争社会一辺倒の社会の実現です。しかしこうした政策は、以上に述べた人間が持つ本性に背き、幸せな社会をつくることには決してつながりません。それは協同組合をつくった人間の歴史が物語っているものでもあり、進化論を唱えたダーウィンも、人間が持つ「利他の愛」の重要性を指摘しています。
 課題別セミナーで入澤肇氏が述べているように、世界的な格差拡大によって、フリードマンが唱える新自由主義によって競争が社会発展の要(かなめ)であるという説は間違いであるということが明らかになってきました。農水省は農業振興を図ることを目的にした政府組織ですが、同時に助け合いという協同組合の育成をはかることが求められています。競争と助け合いの心が調和した行政こそが健全な社会をつくると考えられるからです。
 自己保全という人間の究極の目的を担う政府組織の使命は重大です。今回の農協改革は、協同組合組織は遅れた組織であり、効率的な会社組織にしなければ経済は発展しないという偏狭ともいえる価値観によって進められています。JAはこれまで行政主導でつくられた組織であり、お上の言うことは間違いないという風潮がいまだに漂っています。
 この際、われわれは確固たる理論と実践に基づき、農業の大切さと協同組合とはどのような組織であるのかを内外にはっきりと主張すべきです。「あまり騒ぐとJA批判を招く」などと言って沈黙を守る姿勢を貫くようでは、戦いに勝つことはできないでしょう。

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