JAの活動 シリーズ詳細

シリーズ:緊急連載-守られるのか? 農業と地域‐1県1JA構想

【田代洋一横浜国大・大妻女子大名誉教授】

2017.11.03 
3段階で「内なる合併」JA香川県(2)一覧へ

 今回はガバナンスの模索から見ていく。

◆経営管理委員会の体制へ

seri1710060901.jpg 合併一年目は支部に常務を35名配置したこともあり、理事52名という大所帯だった。直ちに役員体制に関する審議会が設けられ、2001年度からは経営管理委員(定数30名)、理事10名の体制に移行した(役員支部長は廃止して職員へ)。経営管理委員は県内6地区からの選出枠25名、全県枠5名であり、1期目は経営管理委員の支部担当制もとられた。
 委員会方式の採用は、理事会を専門的知識をもった者で構成し、その執行スピードを高めつつ、その理事会を地域組合員サイドからコントロールしようとするものである。そこには次の二つの事情も作用していよう。第一は、合併当初は本店が中央会・連合会出身者で固められたことである。第二は、2001年農協法改正で経営管理委員会制度が導入され、その活用が国から強く勧められたことである。
 委員会は地域代表カラーが強いが、理事会のコントロールと言う本来の趣旨からすれば全県的な視点が欠かせない。このようなガバナンスのあり方をめぐって理事長諮問機関としての「総合企画会議」から2010年に答申が出された。そこでは07年、09年に相次いで県から不祥事に関連した業務改善命令がだされたことを強く意識し、経営管理委員は全県をにらんだ実質審議、迅速な意思決定のために12~16名に減らし、地区選出枠と全県選出枠を半々にし、前者については選出地域を6区から2区にまとめ、後者については女性・青年、利用者の代表、実務精通者を含むこととした。
 これに基づき2010年から経営管理委員は16名とし、弁護士・公認会計士を経営管理委員に含め、今日に至っている。2010年は前稿のように地区本部制から<本店―とりまとめ店―支店>体制に移行した年でもある。


◆支店の統廃合

 合併により177支店、223店舗をかかえるに至り、支店・出張所の再構築が二次にわたり追求された。
 第1回は、2007年に経営管理委員会で計画決定され、09年にかけて実施された。常時人員3名以上、貯金量40億円以上、黒字見込み等のいずれかの条件をクリアできない店舗が93店舗あり、うち収支改善の可能性のある店舗を除き56店舗を統合や出張所化の対象とし、09年までに180店舗(148支店)に整理した。それにより窓口職員は平均6.8名、貯金額は82億円になった。
 しかし、なお職員5名以下が36店舗あり、総合事業対応とコンプライアンス強化(前述の不祥事は小規模店舗で起こりやすい)が必要ということで、1店舗12名(管理者3名)、貯金100億円、長期共済保有高400億円以上をめざし、2012年までに128店舗(94支店)、JA豊南の合併で133店舗(99支店)体制とし、現在に至っている(小豆島をはじめ島しょ部には9支店、9出張所が置かれている)。これにより支店平均で窓口職員12名弱、貯金123億円になった。
 店舗統合については特に初回は組合員からの強い反対があったが、とことん説明して切り抜けたという。代替措置として年金宅配、ATMの設置、渉外の増員、移動店舗等がとられた。貯金額は2008年末が対前年比0.3%減、2010年0.4%減、11年0.7%減となったが、それぞれ1~2年で回復している。 支店には支店運営委員会が設けられ、年2~4回開催される。総代、集落委員、生産者組織・女性部・青年部から推薦された者等で構成され、全体で5,500名程度である。
 統括店には、支店運営委員会の正副代表、青年部・女性部・部会代表からなる地域運営委員会がおかれている(615名)。また統括店単位で准組合員代表との意見交換会がもたれている。


◆営農指導部門

 組織体制の変更に対応して営農指導部門も変遷してきた。
 第一段階の支部体制時代には同部門も支部に属していた。
 2004年に支部制を廃してからはほぼ郡単位に6つの地区営農センターがおかれ、信用共済事業は<本店―支店>方式、営農関係は<営農センターー支店>方式がとられた(農業諸施設もセンターに属する)。
 しかし、この方式では本店や営農センターからの指揮命令が複線化し、支店が混乱するという理由で2007年に地区本部制に移行し、営農経済関係(集荷・分荷・清算事務を含む)も施設管理ともども地区本部に包摂された。しかし2010年に地区本部を廃して現在の<本店―統括店―支店>体制に移行することに伴い、地区営農センターが本店機構として復活された (JA香川豊南の合併後は7センター)。センターは地区農業振興計画の策定、営農指導、水田農業ビジョンの実践、生産調整、行政対応、部会事務局、農業施設の管理運営等を担い、「各地区の農業振興の司令塔」とされている。 営農指導員は本店に52名、営農センターに118名の計248名である。2016年に本店営農部に「担い手サポートセンター」(営農経済と融資担当のチーム)を設置し、本店10名(専任)、統括店融資課19名(兼任)、営農センター22名(兼任)の体制で、販売額500万円以上の生産者1,000戸弱を中心に個別巡回している。
 また野菜生産者等にお願いして、県域に10名、地区に17名の「園芸インストラクター」を置いている。
 分荷権は、販売主力の野菜については地域特産品等を除き9割を本店が握り、また量販店等への事前値決めによる契約取引が8割を占めている(債権管理のため市場経由)。全県的なロット確保に基づく事前値決めが強みである。
 なお、統括店にも金融共済・融資課のほか営農経済課等がおかれ、自治体エリアと重なることから行政対応や、生産者とセンターとの取次機能、産直店舗の運営管理等にあたっている。資材関係は34のふれあいセンターが扱う。
 支部・地区本部体制の一時期を除き、郡規模の営農センターという体制は動かず、JAとしては「この体制でよかった」としている。要するに信用共済事業・統合、営農指導機能・分権というのが1県1JA体制の基本である。

◆剰余金処分

 出資配当率は合併当初の2年は3%、2002年度から今日までは1.5%である。事業利用分量配当金(以下「利用高配当」)は合併前には1/3ほどの農協が行っていたという。合併当初は利用高配当ができず、さらに支部制・地区本部制の時代は「独立採算制」をとり、計算上の「剰余」に応じて、支部活動費等が「還元」されてきた。還元金は販売額に応じて配分するなど個人配分が主だった。地域間の格差の平準化に伴い2007年から利用高配当制がとられることになり、「還元」は2008年度に廃止された。
 2016年度の剰余金は33億円弱、内訳は利益準備金15%、信用事業積立金26%、出資配当金10%、利用高配当19%、次期繰越29%である。利用高の配当基準は定期貯金、長期共済契約、販売額、産直売り上げである。剰余金処分については配当原資として7~9億円、内部留保率70%の確保の方針であり、今後はさらに出資配当から利用高配当へシフトするつもりである。現在はポイント制は産直だけに導入している。
 なお経常利益31億円を100とした部門別損益は、信用事業168%、共済事業51%、農業関連▲39%、生活事業▲18%、営農指導▲62%で、信用事業依存度が高い。営農指導にの赤字額(収益の営農投資)19億円を正組合員1人当たりで割ると3万円で、全国平均の2.5万円を上回る。


◆合併から17年

 合併時の2000年度末の数字を100として2016年度末を比較すると(この間に2農協の合併があるがそれは無視して)、まず正組合員数は74.1%、准組合員数は137.6%、合せて98.0%である。最近も60歳未満の組合加入者4千名を目標に加入促進運動を展開し、「JAの組合員になろう!! JAってなあに?」のパンフレットを配布、3千名強の成果を得ている(准組合員が87%)。
 事業面は貯金130.1%、貸出金112.5%、長期共済保有額55.6%、購買33.3%、販売84.2%である。購買の落ち込みが大きいが、合併直後に生活事業改革を行い、価格競争力のない商品の扱いは止め、香川県はとくに量販店が多いこともありAコープも豊南地区のそれを残すのみとし、その他の店舗は産直等への転換を図り、現在は葬祭、子会社による燃料、車両を主としている。
 共済の落ち込みも大きく、販売額も合併4年までがピークだが、相対的には野菜等で持ちこたえており、自己改革プランでは野菜等の品目別生産量目標を掲げている。
 収益面では、事業総利益72.4%、事業利益74.9%、剰余金65.0%(2010~12年に43%まで落ち込むがその後回復)である。
 正職員は62.3%、臨時は151.7%、トータルで79.1%である。労働生産性は84.5%。先の生活事業の縮小等もあり、早期退職、希望退職、採用調整を行い、2007年度末にはトータルで73.6%まで減るが、その後、支店の管理者3名体制等の取組みを通じて若干回復している。
 減収減益の克服には至っておらず、合併効果の評価は人によりけりだろうが、「合併なかりせば」との比較は難しい。JA香川県としては「将来に向かっての可能性と言う点では合併してよかった」、「それぞれの県域で十分審議して1県1JA化を選択したのであれば、迷わず実践することだ」、それに対して「可能な限り協力や支援をしたい」と考えている。
 焦点となっている信用事業の代理店化に関連しては、全国一の還元率をキープしている香川県としては、信連統合は単協の余裕金運用上の制度問題(外貨建て運用の可否等)をクリアできない限り県域トータルとして大幅な減収になり、信連の代理店化は単協としての大幅減収になる。地域密着業態としてのサバイバルは、野菜等の担い手・販売力を確保し、担い手や准組合員へのウイングをさらに伸ばして堅実なかたちで貯貸率を高め、直売所や福祉の充実等で地域活性化に尽くすことだろう。

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