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シリーズ:新世紀JA研究会 課題別セミナー

2017.11.08 
的確な監査人選任を 組合員への説明責任が重要【戸津禎介・有限責任監査法人トーマツJA支援室】一覧へ

・監査の備え 来年度前半までに

 JAの会計監査は、これまでの中央会監査から、一般の株式会社などと同じく、金融庁管下で公認会計士監査に移ることになります。JAは公認会計士監査に備えて何をすべきかについて、第12回課題別セミナーで意見交換しました。その内容を紹介します。

戸津禎介・有限責任監査法人トーマツJA支援室 農協法の改正を受けて、平成31年10月1日以降、農協の会計監査は従来の中央会監査から公認会計士監査に一本化されることになりました。
 公認会計士監査の導入に向けては、内部統制の整備・運用など全国の農協で鋭意準備を進められています。31年度から公認会計士監査を受監するためには、この準備を29年度中、遅くとも平成30年度上期中には対応を済ませ、下期以降は、「会計監査人の選任」を進め、数多の公認会計士や監査法人(以下「監査法人」)から会計監査人を選任することが必要となります。

 会計監査人の選任にあたっては、透明で的確な選考過程を経ることで、監事、役員の説明責任を果たすことが重要になると考えます。具体的には、組合員に対して、監査品質はもとより、組合経営に資する監査法人等を会計監査人として選任したのだと説得的な説明を行い、特に外部(政府、マスコミ等)の目を意識し、現状維持ではなく自己改革を進めるべく適任の監査法人等を選任したことを主張できるような選任をすることが重要と考えます。
 では、具体的にどのように選任するのかということになりますが、系統内で会計監査人を選任する際に考え方や指針は、未だ示されていないと認識しています。一方で、一般事業会社においては、会計監査人の選任議案の決定権を持つ監査役等向けに会計監査人選任のための実務指針『会計監査人の評価及び選定基準策定に関する監査役等の実務指針』(以下「実務指針」)が公表されています。一般事業会社における会計監査人選任の指針の内容や実務を理解することで、透明で的確な選考過程の理解に役立ていただきたいと思います。

 


◆評価項目に軽重つけて

 農林水産省による報酬調査が公表された影響もあり、監査報酬の多寡に注目が集まっているように感じます。一般事業会社では、監査報酬の多寡のみならず、実務指針に沿った評価基準項目に照らして多面的な検討を行ったうえで、会計監査人の選任を行うことが一般的です。
 評価基準項目は多数ありますが、(1)ガバナンスサイドの目的、(2)執行サイドの目的、(3)制約条件の3つの要素に分類することができます。
 「ガバナンスサイドの目的」は、経営者のアグレッシブな意思決定に対して厳しい判断ができるかといった観点、抜けや漏れのない監査を実施できる品質管理体制を有しているかといった観点が含まれます。
 「執行サイドの目的」は、業界への理解の程度や論点を整理する力といった会計監査人としての指導機能の観点、現任監査人への不満を解消できるのかといった観点が含まれます。
 「制約条件」は、監査と同時提供が禁止されている業務を提供していないかといった独立性の観点、監査報酬が許容可能な適正レベルなのかといった観点などが含まれます。
 制約条件をクリアーしたうえで、ガバナンスサイドの目的と執行サイドの目的のどちらをどの程度を重視するかは、企業によって様々です。各組織の価値観、風土、おかれている状況等を踏まえ、どの評価項目を重要視するのかといった軽重をつけることが必要になります。

公認会計士監査が焦点に(写真)公認会計士監査が焦点に

 
 次に、これらの要素や評価項目に照らして会計監査人の選任を行うための実務を紹介します。企業が会計監査人を見極めるために重要と思われるポイントが3つあると考えています。
 1つ目は「提案書」です。会計監査人の候補者となっている監査法人等に提案書の提出を依頼し、提案書を受領し、その提案書の内容を検討することで評価をすることになります。ただ提案書を依頼すると、監査法人等は、自らがアピールし易い点だけを提案書に織り込んできてしまい、公平に比較することが難しくなってしまいます。そこで、事前に提案書に織り込んでほしい事項を特定し文書で通知することで、監査法人等が提案書に織り込むべき項目を事前に決めてしまうことが、望ましい対応と考えられます。
 2つ目は「プレゼンテーションの場での質問」です。提案書を見ただけでは判断がつかないようなものについては、監査法人等に直接質問をすることで、より深い理解を得ることができます。よりよい質問をするためには、提案書をプレゼンテーション当日に提示を受けるのではなく、事前に提示を受け、何を質問するかを練っておくことが肝要です。
 3つ目は「定量的な評価に基づく評価」です。企業の会計監査人の選任は、検討過程の客観性を高めるために、通常、複数の監査法人等によるコンペで実施されます。その際に、監査法人間の優劣をつけるべく、評価の数値化を行う実務があります。評価項目ごとに点数をつけるとともに、評価項目の軽重も数値化して評点を計算することで、透明で的確な選考過程を実現しています。
30年半ばには選任へ
 最後に、会計監査人選任のためのスケジュールですが、提案書の要請から始まり、会計監査人予定者を決めるだけでも通常2~3か月程度を要します。また、会計監査人予定者が決まった後にも、実際に株主総会(農協での総代会)で会計監査人を正式に選任し登記を終えるまでには、期首残高調査、新旧会計監査人間の引き継ぎなど、多くのことを実施する必要があります。
 これらのスケジュールを考慮すると、平成30年度の半ばには会計監査人の選任に着手することが必要ということになります。比較的時間のない状況であると言えると思いますので、今のうちから、会計監査人の候補者への接触や会計監査人の選任に向けた評価項目や選任プロセスの検討を進めておくことも必要をと考えます。

※このページは新世紀JA研究会の責任で編集しています。

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