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JAの活動:激動に対応して

【対談 村上前副会長・伊藤前常務(前編)】WTO・政権交代・大震災・TPP...激動に対応し、JAの力示す2014年10月3日

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・日本の主張しっかり
・WFOは認識一致
・先行き不安のTPP
・くらしも大きな影響
・国民に本当のことを

 平成20年のWTO交渉決裂、21年政権交代による民主党政権の誕生、そして23年の東日本大震災、25年TPPへの参加表明等・・・この数年の期間に、日本の社会・経済はかつてない大きな変動に見舞われた。この激動の間、JAグループの司令塔であるJA全中にあって、日本の農業と地域のくらしを守る活動を展開し、この8月に退任された前副会長の村上光雄氏、同じく前常務の伊藤澄一氏に、この間の出来事を振り返り、今後のJAの取り組むべき課題と、進むべき方向について対談していただいた。(文中敬称略)

TPPの危険性、国民に周知を
自由化から農業・くらし守る

 

 

JA全中前副会長・村上光雄氏 伊藤 村上会長は7年間、JA全中の理事・副会長として、日本のJAグループを代表して国際的な会議にも出席され、活躍されました。私も教育・生活分野で6年間、様々な面で指導していただきました。いろいろ話を聞かせていただければと考えています。
 村上 全中の副会長を辞めて1か月余りたちました。その間10日ほどの入院もあり、ゆっくり考える機会になりました。過去の整理をつけ、これからの生き方、ライフスタイルについて考えることができたかなと思っているところです。ちょうどよい機会でもあり、7年の全中役員の仕事を振り返り、今後のJAグループの取り組みに結び付くもの、あるいは宿題として明らかにしておくべきものについて、現在の思いを述べさせていただきたい。役職を離れた立場での発言であり、その点もご理解ください。
 伊藤 退任後、私も少し時間ありましたので、これまでの仕事を通して発言してきたことやイベント、会議などでコメントしてきたことを、自分なりに整理しました。
 私の役割として、JAグループのテーマは農業生産だけではなく、組合員のくらしや地域社会への関わりも大事だということをクローズアップすることでした。新聞や雑誌などでJAの外に向けて発言する機会もありました。この3年間は、村上副会長に直接指導していただきました。さらに茂木元会長、萬歳現会長のもとで貴重な経験をしました。
 振り返ってみますと、村上副会長が理事・副会長として活躍された期間の農協界は、WTO(世界貿易機関)、リーマンショックとアベノミクス、2度の政権交代、東日本大震災・原発事故、異常自然災害など、何百年、あるいは何十年に一度の大きな出来事が連続しました。その一つにWTO交渉があります。20年に7月末に交渉決裂となりました。その時のことから聞かせてください。

(写真)
JA全中前副会長・村上光雄氏

 

◆日本の主張しっかり

JA全中前常務・伊藤澄一氏 村上 WTO交渉はインド、中国などの新興国の反対で決裂となりましたが、日本は農産物の自由化を巡ってアメリカやオーストラリアなどの輸出国からぎりぎり責められていただけに、正直にいってインドや中国に救われたという気持ちでした。これで長期戦になり、時間稼ぎができ、TPPに反対のわれわれには好都合だと思いました。
 だが、それまでの長い交渉があり、思い出すことが多くあります。2001年、当時、JA三次の組合長として全中の訪問団に加わり、フランス、ポーランドを訪れました。当時、ポーランドはEU加盟により大きく変わらざるをえない状況にあり、農産物の価格交渉が大変だという話でした。
 意見交換のなかで、ポーランドもフランスも農業者の立場は日本と共通で、同じ考えを持っているということが分かりました。ヨーロッパでは受け入れてもらえるのに、それがなぜアメリカとはだめなのか、なぜ新自由主義一辺倒でなければならないのかという思いを持ちました。
 JAグループはWTO交渉について、農産物はほかの工業製品とは違う、別の貿易ルールをつくるべきだと主張してきました。そのことはWTOで十分議論されないまま、今度はTPP(環太平洋連携協定)が出てきました。いまだに工業製品と同じまな板の上で議論しているのはおかしなことです。
 世界の農業者の連携のあり方では、ICA(国際協同組合同盟)、WFO(世界農業者機構)の2つの組織があります。南アのケープタウンで開かれたWFO第1回総会に出席しましたが、こと農産物に関してはそれぞれの国の農業者と共通の認識を持つことができました。

(写真)
JA全中前常務・伊藤澄一氏

 

◆WFOは認識一致

 WFOは、農業は、それぞれ自国の食料をつくっているのだという基本的な部分は認め合い、その上で貿易自由化を考えるという認識で、共通の土俵を持っています。最初に貿易ありきではなく、食料をつくっているという農業主権の認識です。
 WFOでは、オブザーバー出席のニュージランドの農業者から、貿易の自由化を議論しようとの提案がありましたが、軽々しくやるべきでないということになってとりあげられませんでした。このへんは食料主権を大事だというわれわれと、立場の違いが出ましたが、貿易自由化一本ではない、それぞれの国の農業者の立場、農業の価値を認めるべきであり、そこから議論をスタートさせるようという認識では一致しました。
 総会のメインテーマは食料の安全保障でした。私は、世界にはいろいろな国があってそれぞれ農業の形態があり、それを尊重し合って議論を進めるべきだと主張しました。グローバル化した世界で、国民の食料安全保障を軽視しているのは日本だけではないでしょうか。
 伊藤  WTOに関しては、全中の役員になる前から、関心をもって見ていましたが、タリフライン(除外対象とする細目数の割合)の10%とか8%、さらには代償付など厳しい交渉をしているとの報道に接していて、 日本の農業に不利な合意になるのではないかと不安に思っていました。しかし、、アメリカとインド・中国などの新興国との間で、補助金やセーフガードを巡って折り合いがつかず決裂しました。やはりほっとした気持ちがありました。
 教科書的に言うと、GATT(関税及び貿易に関する一般協定)を受け継いだのがWTOです。第2次大戦後に当時の国々や地域のブロック経済化が一因で戦争になったことを反省し、それでも貿易は大事ということでGATTができ、WTO体制に進化しました。
 従って、交渉は決裂したものの、WTOの目指す方向は大事にしなければと思います。改めてWTOは何だったのかと考えることがあります。
 それがいま、なんでもTPPという土俵で議論されています。地域・くらしの現場からみても、あまりに影響が大きく、きちんとした議論の場がほしいと思います。

 

◆先行き不安のTPP

TPP反対で運動をリードするJAグループ 村上 振り返ってみますと、貿易自由化交渉のなかで、大きな問題は補助金でした。アメリカのカリフォルニアの農家は莫大な助成金をもらっています。それも大きな農家だけです。そのことをちゃんとまな板にのせて議論しなければなりません。輸出国と同じ土俵にのって相撲をとるのでは勝負になりません。WTO交渉では、アメリカの補助金削減を議論し、それぞれの国の農業の実態を反映した交渉になっていたように思います。
 輸出国同士でも対立があります。カナダで小麦生産者から話を聞きました。小麦をつくっても、インフラが整備されておらず、内陸部の産地からはるばる太平洋側の積出港であるバンクーバーまで鉄道で運ばなければならないがその輸送コストが大きい。しかしアメリカはインフラができているので輸送コストが少なく、補助金にしても規模が大きく、競争にならないということでした。
 伊藤 WTO交渉では参加国の実情や農業政策をある程度加味しながら緑の政策、黄色の政策、環境にも配慮した議論などがあり、いい意味での複雑さと分析的な区分がありました。日本も国内農業の状況を世界に理解してもらえるよう努力しました。
 WTOにも細かく国情を照らすと合意しにくい問題はありますが、TPPは内容の分からない交渉ルールで進んでいくことが大きな不安です。他の国があるのに、日本とアメリカだけの問題になっているのではないか。多くの人がそう思っているのではないでしょうか。
 村上 TPPに反対の一番の理由は、関税の全面撤廃です。農産物の生産にはそれぞれの国の事情があります。完全撤廃ではなく、それぞれの国に必要な最低のものは守るんだという一線を設定しないと、多くの国は、食料を生産国だけに頼るといういびつな構造になってしまいます。
 それぞれの国でつくれるものはつくり、不足するものは輸入することを前提に、世界的規模での食料安全保障を考えることが重要です。そのためには関税の完全撤廃はありえません。

(写真)
TPP反対で運動をリードするJAグループ

 

◆くらしも大きな影響

 伊藤 TPPは農業生産、食料確保だけのテーマではありません。やはり地域と組合員のくらしに大きな影響をおよぼします。生産現場が苦しくなることは地域社会での生活の営みが苦しくなり、地域の賑わいが失われます。1次産業の農業が元気だと2、3次産業が元気になることは誰でも知っています。当たり前のことが議論の核にならず、TPP交渉を進めるのは問題です。
 ただ、JAグループが、TPPの問題を“みえる化”させることで、食の安全安心、高齢化問題、農村女性の社会参画など地域の問題もクローズアップされてきたと思います。村上副会長もマスコミなどで度々発言されてきました。TPPは、短兵急に進めるのではなく、地域社会の維持、生活のあり方も含め、複眼的かつ分析的に考えていくことが大事だと思います。
 平成22年10月に首相がTPP参加を言い出したとき、JAグループは、その影響が農業だけではないと反論しました。TPPはJAの持つ協同組合の原則・理念に抵触します。農業以外の生協や医療、弁護士・学者などのみなさんも同調しました。「日本の論点」でもあるTPP交渉をどう見ていますか。

 

◆国民に本当のことを

 村上 アメリカは中間選挙が終わらないと前に進めないでしょう。またTPA(大統領貿易推進権限)が議論されないうちにやってもだめです。日本はそんなに急ぐ必要はありません。アメリカの議会でも、議論のなかでいろいろ条件が付け加えられ、無理強いできなくなるのに、なぜ安倍政権は交渉を急ぐのでしょうか。
 アベノミクス成功を印象付けるための実績づくりでしょうが、円安になれば輸出が増えますが、これは関税率の問題ではない。われわれはこのことを指摘しているにもかかわらず、政府はマスコミと一緒に行け行けどんどんです。われわれがやるべきは、本当のことを知ってもらうよう、国民に広く呼び掛けることです。
 伊藤 TPPに関して、22年10月以降、JAグループは本当に苦しみながら取り組んできたプロセスがあります。
 いろいろな声を代弁する国民運動にもなってきたように思います。これから先は、農産物の重要5品目などが大切な砦として残っています。
 村上 政府はTPPを推し進めるでしょうが、主要農産物を守る国会決議を守り、セーフティガードを認めたオーストラリアとのEPAのような形もあります。規制改革会議の農協改革議論もそうですが、JAグループのやることはすべておかしいというような見方をされてしまい、まだまだ本当のことを知らない人がたくさんいるのではないでしょうか。

後編に続く)

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