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農政:TPPを考える

TPP 「自由化」という「仕組みの競争」2015年12月25日

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宮城大学教授三石誠司

 (一財)農政調査委員会はこのほど『のびゆく農業1027』で『日本の農業・食品産業とTPP』を発行した。これは米国農務省が2014年10月に公表した報告書を翻訳したもので米国による日本農業や食品産業の現状とTPPの影響などを分析したものである。刊行を機に翻訳した宮城大学食産業学部の三石誠司教授に改めて同報告書のポイントとわれわれが考えるべき課題について寄稿してもらった。

◆米国の日本分析

宮城大学教授 三石誠司氏 2014年10月、米国農務省は「日本の農業・食品産業とTPP」と題する報告書を公表した。これは大筋合意(2015年10月5日)のほぼ1年前の時点で、米国がTPPとその将来的な影響をどう見ていたかを示している。米国という国は面白く、様々なレベルで各種情報を発信している。この報告書も一担当者の形をとりながら、米国がTPPと日本をどう考え、その上でメッセージを送っていると理解すれば、彼等の考え方がよくわかる。
 一方、日本国内では、TPPでは極論の賛成派と極論の反対派がお互いの主張を述べてきた感がある。二項対立の状況下では現実適応型の打開策を見つけるのは困難だ。 そこで切り口を変え、やや古いとはいえ、先の報告書に記された米国のメッセージの解読につとめてみたい。報告書の主要項目は、1)TPPという文脈下における日本の農業と食品産業、2)日本の農業支援と保護:国境措置と国内措置、3)日本の農業政策の全体的な影響、3)日本の農産物貿易の構造・相手先・将来的な変化、4)TPPにより起こり得る将来的な変化、5)まとめ、である。
 以下、簡単に報告書の要点を記し、その後に若干の私見を記す。
 第1に、外(米国)から見た日本の姿を「農業・農産物の多くは国内向けだが、食品産業は急速に海外向けにシフトしている」と指摘している。多くが気付きながらも言わない現実を「裸の王様」の子供の如く、明確な形で正面から指摘している。
 人口減少に伴う国内需要減少への対応として、食品企業が必死に海外需要を取りこもうと明確な「戦略的」行動を取っていると米国は見ていることに他ならない。
 第2に、日本政府の農業支援や保護、つまり国境措置や国内措置には様々なものがあるが、全体として「日本市場は極めて開放されている」という認識を米国側は十分に持っている。但し、複数の経済的な指標では、他のTPP加盟国と異なる特徴があり、それを農業政策のゆがみとして指摘している。
 第3に、日本の農産物貿易構造は、戦後の小麦や綿花などから高度成長期以降の飼料穀物、さらに90年代以降の食肉や、近年の加工食品という形で、時代とともに柱が変化している。「バルク」から「高付加価値品」、または「投入財」から「消費財」という変化である。
 こうした中で、アジアの周辺各国からの安価な加工食品等の日本への輸出増加には米国としても注目し、一定の対応を取る必要があると認識している。
 第4に、日本市場は将来的に大きく成長するとは米国も考えていない。もちろん、成長要素としては外国人労働者・観光客等があるが、消費者の関心は、地元産、健康、安全、安心などだ。ただし、農産物輸出はそれなりに明るい見通しが得られると思われる。
 第5に、まとめとして、TPPはあくまでも日本農業が高度な自由化へ移行するためのステップであるとしている。その上で、(1)「日本の農家は輸出先の国々の安全基準に合致するか上回る能力を保持しており、(2)農協を中心としたネットワークは、強力かつ非常によく資本化された基盤であるとともに、(3)日本の農家は北米あるいは南米で農場を開始したという長い伝統を持つ、と示唆に富んだメッセージを記している。
 さて、これをどう受け止めるべきか。少なくとも3つのレベルで解釈ができる。


◆米国農業の戦略とは

のびゆく農業 第1は、牛肉やコメなどの品目レベルである。例えば、米国から見た場合、最も輸出したい商品は牛肉だ。牛肉こそが米国型農業の一番の強さ(大量生産・大量飼育)の恩恵が得られるからだ。そう考えれば1人当たり牛肉消費量が米国と比べて圧倒的に低い日本の市場は十分にターゲットとなる。
 日本人は自由化というとまず主食であるコメを念頭に置くが、中長期的に見た場合、米国は間違いなく自分が最も強い分野の勢力を拡大する方向で動くはずだ。
 第2は、競争のレベルである。低価格戦略で競争力を築いてきた米国が、同じ戦略でアジア諸国に遅れを取りつつある。但し、競争相手の商品は安全性が不安定だ。そこで、自らルールを作り、生産工程・履歴を管理した農産物を差別化して輸出するという対応が考えられる。すると対象品目はコメや牛肉以外にも拡大し、有機農産物なども充分に射程圏内に入る。
 最後に第3のレベルが、日本だけではなくアジアの市場開拓という大戦略のレベルである。その鍵が「クールジャパン」だ。評判の良い日本食や日本産農産物と同等、あるいは国際認証を取得し、「日本的な装いや雰囲気」をもったコメ(例えばカルローズ等)をアジア諸国へ輸出することが可能となる。
 こう考えると、将来のTPP圏で何が求められるかは明らかだ。「日本農業も各分野で国際基準に沿った形で生産工程や履歴を提示できるようにしておいてほしい」ということだ。
 TPPは完全発効までに時間がある。メッセージを受け止めた上で、猶予期間をどう使うか、その準備をすべき「自由化」という「仕組みの競争」が始まったと理解すべきであろう。
(写真)宮城大学教授 三石誠司氏

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