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シリーズ:日本農業とともに

2016.08.29 
農協・法人・行政が共働することで力を(下) 佛田利弘(公社)日本農業法人協会副会長一覧へ

農業の新しい価値を創造
佛田 利弘
(公社)日本農業法人協会副会長
((株)ぶった農産代表取締役)

◆同じ土俵に上がり地域の合意形成を

 こうした法人経営者や生産者の問題意識を、研究機関や全農、資材メーカーと組んで「イノベーション(新しい価値の創造、革新)を起こすようなアプローチをしていかなければならない」というのが、密苗という水稲の栽培技術を開発した佛田さんの問題意識だ。
 そして日米の米の収量を比較して「日本の収量が停滞しているが、これは品種改良の問題もあるけれども、栽培技術のイノベーションが起きていない」からだ。だから「イノベーションとかインテグレーション(複数の要素を有機的に組合せ一体として機能させる)をどう作り出すかを、法人経営や全農・農協、行政、消費者が一緒になって協議して取り組む本当の意味でのコラボレーション(共働)をしないといけない」。
 具体的には、米や穀物の消費量が減るなかで、穀物の生産性を上げ、余った農地を野菜や施設園芸、果樹とか畜産に転用する「非常に重要な局面にきている」。そのときには、米国や欧州に比べてほ場が狭いからといって進んでいかない「機械化にチャレンジしていく必要がある」のだと考えている。そしてアジアモンスーンの水田地帯という「日本オリジナルな農業スタイルを確立していく」。
 そのために「モノづくりを含めて地域のマネジメントをどうポジティブに前向きに考えるかがポイントだ。それは、農協だからとか法人経営、集落営農組織だからとか、誰かに役割を任せる話ではなく、地域の合意形成のために、みんなが同じ土俵に上がって、真摯で真剣な議論をすることが、求められている。そのことで地域にとってプラスに働くことがものすごく多くなる」と佛田さんは考えている。


◆小さなコミュニティ 大事にする組織に

 最後に農協についての意見を聞くと、「一組合員の立場から」と断って、次のように語った。
 「経営合理化の視点からは、一県一農協が一つのゴールだと思いますが、その前提として、自分たちの地域をどう考えるのかが必要だと思います」という。なぜか?
 農協の規模が大きくなると「組合員と経営者が遠くなるのでそれを埋める意味でも、かつて小学校があった単位(校区)、そういうコミュニティが非常に重要であり前提だと思います」。それは「何かあっても20分くらいで行ける、スープの冷めない距離の地域」で、人的関係を深められ、意思決定や合意形成がスピード感をもってしやすい単位だということだ。
 そして「そこに住む人たちが自分たちの地域をどうしたいのかを考える単位でないと、人任せになってしまう」ので、子どもの教育や年寄りの面倒や介護、地域の農地管理をどうするかなど、さまざまな社会サービスをする「地域マネジメント会社」のような組織をつくり、それを農協グループが支援するような形が必要だということだ。
 もう一つが「人材の育成」だ。それは法人経営も同じで、経営者、農場管理者、働く人の育成が必要だ。とくに生産現場では、技術系人材を育てることが必要で「その人たちが生産イノベーションを起こしたり、新しい技術を導入し改革するリーダーになる」。農協も行政も、そうした法人経営の人材と同等の人材を育成しないと「一緒にコラボレーションすることが非常に難しくなる」からだ。
 農協にも法人経営にも、常に状況が変わり時代が変化することを視野に入れて、いつも何をすべきかを考え、互いに協力して議論することが求められているのではないかと結んだ。

(ぶった としひろ)昭和35年石川県生まれ。58年農林水産省農業者大学卒業、農業(家業)に従事。63年(有)ぶった農産取締役、平成6年農水省農政審会専門委員、13年(株)ぶった農産代表取締役社長(~現在)、14年石川県農業法人協会副会長理事、17年石川県稲作経営者会議会長、19年石川県農業法人協会副会長理事(~現在)、24年(国法)北陸先端科学技術大学院大学博士前期課程技術経営コース修了、25年(公社)日本農業法人協会副会長理事(~現在)。その他、規制改革、生産資材、政策評価等多くの公職を歴任。

・農協・法人・行政が共働することで力を (上) (下)

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