絶滅危惧きのこ「オオメシマコブ」は実は2種でどちらも新種と判明 森林総合研究所2022年6月3日
環境省のレッドリストに掲載されているきのこ「オオメシマコブ」には2種類が含まれ、それぞれが新種であることが明らかになった。1種は小笠原諸島の固有種でオガサワラグワ上に、1種は高知県の限られた地域でヨコグラノキ上にのみ発生。2種ともに、絶滅の可能性が高いランクに該当する絶滅危惧種に該当し、今後保全対策が求められる。
小笠原産オオメシマコブ。上面は通常黒っぽく、ゴツゴツしている
森林研究・整備機構森林総合研究所、日本大学生物資源科学部、鳥取大学農学部の研究グループは、環境省レッドリストに掲載されているきのこ「オオメシマコブ」について、遺伝子解析および形態的な特徴について詳細に検討。その結果、小笠原諸島に分布するタイプと高知県に分布するタイプは別種であることが判明。また、これらが正式な学名を持たない種類であることがわかり、それぞれを新種として命名した。
小笠原諸島に分布するタイプは、小笠原諸島に固有の種類で、オガサワラグワにしか発生しない。オガサワラグワ自体も小笠原諸島に固有の樹木で、絶滅危惧種の一種。一方、高知県に分布するタイプは、ヨコグラノキにしか発生しない。ヨコグラノキは宮城県以南に広く分布するが、多くの地域で希少な樹木となる。
高知県に分布するタイプは、これまで高知県の一地域からしか記録がなく、さらに近年安定してこのきのこの発生が確認できているのは数本のヨコグラノキ上だけ。両種はいずれも国際自然保護連合(IUCN)が定めるレッドリストの基準においても、絶滅の可能性が高いカテゴリーである「絶滅危惧IA類」に該当することがわかった。両種の絶滅を防ぐには、宿主となる樹木の保全が不可欠となる。
高知県産オオメシマコブ。上面は最初黄褐色でやや毛羽立つが、古くなると黒っぽくなる
小笠原産オオメシマコブが絶滅の危機に瀕している理由は、小笠原諸島内の限られた範囲内にしか分布しないこと。また、生息地の多くでオガサワラグワの生木が減少するとともに切株も腐朽によって消失が進むことで、このきのこにとっての生育環境が悪化していることにある。このきのこを守るには、外来樹木の伐採を進めて小笠原本来の植生を回復させ、オガサワラグワの減少を食い止めることが必要となる。
オガサワラグワの古い切株。小笠原産オオメシマコブの多くはこのような切株上にきのこを形成している
一方、高知県産オオメシマコブが絶滅に瀕している理由は、現存するきのこの数が極端に少なく、このままでは安定して将来の世代を残すことができないと考えられること。このきのこを守るには、現在きのこの発生が確認されているヨコグラノキだけでなく、このきのこが発生するヨコグラノキを新たに発見して保全すること。同時に、地域のヨコグラノキの生息環境を保全することでこのきのこが生存可能な環境を将来にわたって確保することが必要となる。
同研究成果は5月31日、『Mycoscience誌』でオンライン公開された。
重要な記事
最新の記事
-
【注意報】野菜類、花き類、豆類にハスモンヨトウ 県内全域で多発のおそれ 兵庫県2025年9月12日
-
【注意報】果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 佐賀県2025年9月12日
-
ドローン映像解析とロボットトラクタで実証実験 労働時間削減と効率化を確認 JA帯広かわにし2025年9月12日
-
スマート農業の実践と課題を共有 音更町で研修会に150名参加2025年9月12日
-
【地域を診る】個性を生かした地域づくり 長野県栄村・高橋彦芳元村長の実践から学ぶ 京都橘大学学長 岡田知弘氏2025年9月12日
-
(452)「決定疲れ」の中での選択【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年9月12日
-
秋の味覚「やまが和栗」出荷開始 JA鹿本2025年9月12日
-
「令和7年台風第15号」農業経営収入保険の支払い期限を延長 NOSAI全国連2025年9月12日
-
成長軌道の豆乳市場「豆乳の日」前に説明会を実施 日本豆乳協会2025年9月12日
-
スマート農園を社会実装「品川ソーシャルイノベーションアクセラレーター」に採択 OYASAI2025年9月12日
-
ご当地チューハイ「寶CRAFT」<大阪泉北レモン>新発売 宝酒造2025年9月12日
-
「卵フェスin池袋2025」食べ放題チケット最終販売開始 日本たまごかけごはん研究所2025年9月12日
-
「日本酒イベントカレンダー 2025年9月版」発表 日本酒造組合中央会2025年9月12日
-
北海道檜山特産品マルシェ「ひやマルシェ」開催2025年9月12日
-
農福連携 食品産業向け展示商談会「ノウフク見本市2025in大阪」開催2025年9月12日
-
次世代モデルの人工光型植物工場「福井美浜工場」竣工 椿本チエイン2025年9月12日
-
福井市の砂丘地でオリーブ栽培 就農体験の参加者募集中2025年9月12日
-
国産原料で食品添加物不使用「自然派Style」からコチュジャンが新登場2025年9月12日
-
玄米60kgを3万円で買い取り 米生産農家支援事業 茨城県境町2025年9月12日
-
魚沼産コシヒカリを使った「日本酒の棚田オーナー制度」開始 津南醸造2025年9月12日