2025参院選 各党に聞く「米・農政・JA」 【自由民主党】別枠予算で農業を成長産業に 宮下一郎総合農林政策調査会長(衆議院議員)2025年7月8日
「令和の米騒動」を受け、7月20日投開票の参議院選挙では米問題、農政についても注目が集まっている。猛暑の下の選挙戦で、各党は何を訴えるのか。与野党の代表、農政責任者に聞いた。
自由民主党 宮下一郎総合農林政策調査会長
「令和の米騒動」と農政の問題
米政策は戦後、食管制度から流通自由化、平成30年の減反廃止等、さまざまな制度を経て現在に至っていますが、「需要に応じた生産」が基本です。特に近年、少子高齢化の影響もあって毎年10万tほど消費が減るトレンドにありましたから、そうしたことも踏まえ主食用米の作付面積を全国みんなでコントロールしてきました。全国の作付意向等の情報を共有し、各産地で決めていただく形です。
去年は8月の南海トラフ特別情報の発出で販売量が急に増え、スーパーの棚からお米がなくなりました。2024年産の生産量がどうだったのかはもう一度精査しているところですが、前年より18万t多くとれたがJAの集荷は31万t減り、それ以外のルートが44万t増えました。「備蓄需要」に加え、インバウンドによる需要増、高温障害による白未熟粒の発生、相対的に安かった米への需要シフトもあったかもしれません。JAグループ外の、もっと高値で集荷した外のルートから卸も小売も高値で仕入れたために、値が上がっていきました。
「備蓄米放出が遅かった」とよく言われますが、備蓄米制度の本来の趣旨からすれば、今回の放出は極めて異例です。江藤前農相が需給ギャップを埋めるために決断しました。それでも高騰が続き、小泉農相への交代もあって、入札方式から随意契約による放出に転換しました。店頭予想価格も農相が明言しみんなが協力するという、まったく新しいやり方になりました。備蓄米は店頭に並びつつあり、米の価格は低下傾向にあります。
余裕がない形で生産量を決めてきたのは反省点です。今後はもう少し余裕をもった生産計画を立てていくことが必要だと思います。一方で産地には、出来秋、さらに来年に向け需給バランスが崩れて価格暴落の懸念があることも認識しています。持続可能な生産を脅かすような価格の下落については、しっかり備蓄米の買い入れを通じて安定させていく方向も確認しています。
今年の国会で食料システム法が成立しました。まずは価格を安定させた上で、食料システム法にもとづく合理的な価格形成につなげていくということが必要です。
参院選での農政公約の柱
国際紛争もあり、食料安全保障のリスクが高まっています。環境問題への対応も重要です。最大の課題は人口減少であり、それを上回る農業人口の減少です。こうした諸課題に対応するため、食料・農業・農村基本法を改正し、4月には新しい基本計画も作りました。
農業を成長産業に変えていくためには、基盤整備、選果場・カントリーエレベーターなど老朽化した集出荷施設の再編更新、スマート農業の推進、輸出産地育成などが重要です。そこで今後5年間を「農業構造転換集中対策期間」と位置付けました。そのため事業費ベース2.5兆円(国費ベース1.3兆円)の予算を別枠で確保し、この5年間で大きく農業を転換します。
私の地元の長野県では、リンゴ産地で、斜面にある樹園地を階段状に平らにし高密植栽培をしました。すると作業効率も単位面積当たり収量も2倍になり、若い人への承継も実現しました。中山間地も含め、条件を整えればまだまだ手はあると思います。
私は中山間地農業を元気にする委員会の初代委員長ですが、農地の4割が中山間地で、農業生産量でも約4割を担っています。そこを多くの家族農業が支えています。中山間地は条件不利で生産コストが余計にかかります。そこで中山間地直接支払を実施し、みどり戦略に沿った農業をしていただければ環境支払も新たに導入します。中山間地農業も、それを担う家族農業もしっかり支えていくのがわれわれの考え方です。
JAグループへの期待と注文
協同組合組織であるJAには、地域計画をブラッシュアップするとか、他地域と連携して輸出を増やしていくとか、さまざまな場面で情報提供や新しい技術導入のアドバイスを期待しています。スマート農業では、サービス事業体を作り、農機やドローンをシェアしたり作業委託する際にもサポートいただけるのではないでしょうか。全農の国際的ネットワークも含め、大転換期だからこそJAグループのみなさんにはいろいろな面でお力を発揮していただきたいと思います。
米の販売には委託販売(概算金)と買取販売がありますが、委託では、最終的に高く売れれば精算金が追加で払われます。生産者に選択の余地があっていい。生産者のみなさんのニーズを踏まえてどういうサービスを提供するかというのが、JAのあるべき姿でしょう。
今国会で私は、国際協同組合年の決議採択のお手伝いをしました。人口減少を迎えるわが国であればこそ、いろんな意味での助け合い、協同組合理念は重要です。そして、農業は地域の魅力です。「助け合い」の精神で地域を支えるJAグループのみなさんには、農業を盛り上げるため、元気に頑張ってほしいと思っています。
重要な記事
最新の記事
-
食料自給率 4年連続38%で足踏み 主食用米消費増も小麦生産減 24年度2025年10月10日
-
【特殊報】トマト立枯病 県内で初めて確認 和歌山県2025年10月10日
-
【特殊報】チュウゴクアミガサハゴロモ 県内の園芸作物で初めて確認 高知県2025年10月10日
-
【特殊報】スイカ退緑えそ病 県内で初めて確認 和歌山県2025年10月10日
-
【特殊報】ショウガ褐色しみ病 県内で初めて確認 和歌山県2025年10月10日
-
【注意報】チュウゴクアミガサハゴロモ 県内全域で多発のおそれ 埼玉県2025年10月10日
-
26%が米「買い控え」 米価上昇が家計に影響 住友生命「台所事情」アンケート2025年10月10日
-
コシヒカリ3万3000円に JA常総ひかりが概算金改定 集荷競争激化受け2025年10月10日
-
大豆の吸実性カメムシ類 甲信、東海、北九州一部地域で多発 病害虫発生予報第8号 農水省2025年10月10日
-
(456)「遅さ」の価値【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年10月10日
-
「いちご新規就農者研修事業」2026年度研修生、若干名を追加募集 JA全農岐阜2025年10月10日
-
10月23日に生活事業総合展示会 贈答品や暮らしを豊かにする事業を提案 JA全農いばらき2025年10月10日
-
本日10日は魚の日 岡山県産「冷凍かき」など90商品を特別価格で販売 JAタウン2025年10月10日
-
収穫が遅れた完熟の「黄かぼす 食べて応援企画」実施中 JAタウン2025年10月10日
-
国消国産の日 一斉行動日イベント「国消国産×防災」開催 JA全中2025年10月10日
-
「日産ビオパーク西本郷」と「小野田工場ビオトープ」が環境省「自然共生サイト」に認定 日産化学2025年10月10日
-
「えひめ・まつやま産業まつり-すごいもの博 2025-」に出展 井関農機2025年10月10日
-
まるまるひがしにほん 宮城県「登米市物産展」開催 さいたま市2025年10月10日
-
農業・食品特化の合同企業説明会「食品・農業就活サミット」27卒向けに開催2025年10月10日
-
東京産農林水産物を味わい、体験「東京味わいフェスタ2025」開催2025年10月10日