JAの活動:第46回農協人文化賞
【第46回農協人文化賞】集落と農地 地域の要 営農事業部門・広島市農協組合長、広島県農協中央会会長 吉川清二氏2025年7月8日
多年にわたり農協運動の発展などに寄与した功績者を表彰する第46回農協人文化賞の表彰式が7月4日に開かれた。
各受賞者の体験やこれまでの活動への思い、そして今後の抱負について、推薦者の言葉とともに順次、掲載する。
営農事業部門・広島市農協組合長、広島県農協中央会会長 吉川清二氏
JA広島市は、1市(広島市)・3町(府中町・北広島町・安芸太田町)にまたがる広域かつ標高差のある地域となっており、都市農業と中山間地域における農業が混在しています。
都市農業においては、施設園芸による葉物野菜や、露地での広島菜等の栽培が盛んです。中山間地域では、水稲、雨除けハウスによる野菜の生産が行われています。いずれも小規模で、農業従事者の高齢化や、宅地並みの税負担や近年の市街化の進行も影響し、農地と販売農家は減少傾向にあります。
私は、中国山地の標高650メートルの小さな集落で育ちました。我が家は水稲と野菜、和牛繁殖を行う複合経営農家です。夏場は農業に従事し、冬場は近隣のスキー場で働くなど年間を通じ就労することができる環境でした。
地元の高校を卒業後、東京農業大学へ進学し、卒業後は地元へ戻り、芸北町農協(当時)に入組しました。
農協では、27歳から、新設されたトマト選果場と販売を担当し、生育状況の確認や販売計画の策定、出荷管理まで対応していました。
産地形成の途上だったため、農家との調整など厳しい局面もありましたが、産地全体の底上げのために、農家と密にコミュニケーションをとり、そのかいあって農家と強い絆を培うことができました。毎日がとても充実した日々であり、当時の経験なくして、今の自分はないと思います。
こうした経験をふまえ、JAの販売担当部署に販売企画マネージャーを配置し、営農指導員とともに市場や量販店との情報交換等により市場等のニーズを把握し、産地への農作物生産誘導を行い、農家所得の安定や増大に向けた取り組みをすすめています。
イメージ写真:管内産コマツナを使った商品が株式会社セブン-イレブン・ジャパンから発売
(令和5年11月15日撮影、写真左がコマツナ生産者、右が販売企画マネジャー)
待っているだけでは、信頼はついてきません。
また、地域ごとの農業振興方策を明記した「地域別農業振興プラン」を策定・実践するとともに、地域の特性に応じた営農指導を実施しています。農業者の所得増大に向け、主要品目野菜を中心に、契約販売やリレー出荷、加工品の開発など販路の確保と販売高の拡大に向けた取り組みをすすめました。
さらに、出向く相談対応の取り組みのほか、担い手の確保に向け、新規就農者の初期費用や規模拡大等における投資軽減を目的に、行政と連携した「アグリサポート21事業」、家庭菜園、市民農園など野菜づくりに幅広く農業に興味がある方を対象とした「JA広島市農業塾」などの事業に取り組み、目的に応じた育成や支援を行っているところです。
JA広島市の管内には、今も集落営農の伝統が残っています。こうした昔ながらの集落を守っていくことも農協の使命であると考えます。集落と農地が無くなることは、地域農業自体が失われることにつながります。たとえ農地が小さくとも、直売所への出荷や、加工品の製造等、営農を継続し地域で生きていけるようにすることが必要です。そのため、JA広島市では、地域の活性化に向け、支店ふれあい委員会や総代、レディースクラブ、JA YOUTH広島市など地域住民が中心になり支店を拠点とした「ふれあい活動」により地域を盛り上げる取り組みを行っています。
また、組合員の日常的な暮らしの悩みや将来への不安を解消するため、本年4月に「組合員サポート部」を新設しました。専任担当者が各支店担当者と連携し、組合員からの相談に対し、最適なプランを提示していくことが目的です。
終わりに、組合員・利用者のニーズは、時代とともに変わってきています。そのため私たちJA役職員は、常に組合員に寄り添い、知恵を絞り、与えられた場所で一人一人が力を発揮することが必要です。こうした環境づくりをすることが、わたしの仕事だと思っています。
【略歴】
きっかわ・せいじ
1953年9月生まれ。1976年3月東京農業大学卒業、1979年4月芸北町農業協同組合入組、2007年4月広島市農業協同組合営農販売部長、2013年6月同代表理事専務、2019年6月同代表理事組合長、現在に至る。2023年6月広島県農業協同組合中央会代表理事会長、現在に至る。
【推薦の言葉】
信念持ちしっかり旗振り
吉川氏は1979年に芸北農協に入組以来、46年を超える長きにわたり、協同組合運動に邁進してきた。
JAでは、販売担当部署に販売企画マネージャーを配置し、地域ごとに配置した営農指導員とともに市場や量販店との情報交換などで市場ニーズを把握し、産地へ農産物生産誘導を行い農家所得の安定と増大に取り組んだ。また、支店に相談専門担当者を常駐させ、出向く相談対応に積極的に取り組んだ。
新規就農者の初期費用や規模拡大における投資軽減を目標に行政と連携した「アグリサポート事業」などで担い手の確保にも力を入れた。
氏は常に広島県農業の振興と地域社会の活性化に向けた確固たる信念を持ち、しっかりと旗振りをしていけば必ず展望は開けると信じ、農家組合に寄り添ってきた。農協運動の模範である。
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