耕さずに種を播く 飼料作物スーダングラスの不耕起播種・栽培技術SOP公開 農研機構2024年3月13日
農研機構は、夏季に栽培される飼料作物として繁殖牛向けに広く利用されているスーダングラスを対象に、播種作業を省力・効率化できる不耕起栽培技術を体系化し、標準作業手順書をウェブサイトで公開。新技術の導入効果、必要な機材や手順・条件などをまとめており、同手順書の活用により、夏作飼料の生産拡大や周年生産の安定化、国産飼料の増産に貢献することが期待される。
スーダングラス不耕起栽培技術標準作業手順書
輸入飼料価格の高止まり傾向や農業者の高齢化、労働力不足が続くなか、省力的に国産飼料を増産し、畜産経営の安定化を図ることが喫緊の課題となっている。
九州のような温暖な地域では、夏冬を通して同じほ場に2種類の異なる飼料作物を作付けする二毛作が普及しているが、経営規模が拡大し、作付面積が拡大する場合など、前作の収穫作業と後作の播種作業との競合がより起きやすくなる問題がある。特に夏季に作付けする場合は、梅雨などの天候の制約を受けて播種作業の期間が限られるため、より効率的に作業ができる省力栽培技術が求められていた。
スーダングラスは、ソルガム類の一種で、夏季に作付けされる一年生のイネ科の飼料作物。初期生育が早いため雑草との競合に強く、収穫後も再生するため、複数回収穫できる特徴がある。主に繁殖牛向けの粗飼料として広く利用される夏作の基幹作物の一つ。
農研機構は、このスーダングラスを対象に、播種作業の工程を大幅に省略した不耕起栽培技術を開発・体系化。スーダングラスの不耕起栽培適性や市販の不耕起播種機を利用した作業方法などをまとめた技術マニュアルを公表。生産現場へのさらなる普及推進を図るため、飼料生産組織の協力のもと、経営的な導入効果の事例を新たに加えるとともに、導入に必要な機材、手順、雑草対策や、作業の省力化効果などをより詳細に解説した同技術の標準作業手順書を作成・公開した。
同技術の導入により、スーダングラスの作付面積拡大や飼料生産ほ場の年間収量増加が期待できる。現地実証試験の事例では、一定期間中の播種可能面積は耕起栽培に対して2倍以上に拡大(規模拡大)。作業時間では56%の削減(省力化)、軽油消費量では74%の削減(省エネ)などの経営的な効果が認められた。
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