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コラム:グローバルとローカル:世界は今

【三石誠司 宮城大学教授】

2016.11.11 
(006)ブラジルの大豆とトウモロコシ一覧へ

毎週金曜日更新

 前回、ポルトガル語の恩師の件を記したが、ブラジル繋がりで、食料の国際貿易や食料需給の視点から思うところを記してみたい。

ブラジルの大豆とトウモロコシ 穀物の国際貿易という視点で見た場合、現在のブラジル農業を代表するものは、大豆、トウモロコシ、そして技術としての遺伝子組換えである。
 米国農務省のデータによると、2016/17年度、世界の大豆とトウモロコシの生産量見通しは各々、3億3322万トン、10億2569万トンである(※1)。 大豆が3億トン、トウモロコシが10億トンと覚えておけば一般的には十分である。
 このうちブラジルの生産量は、大豆が1億200万トン、トウモロコシが8350万トンである。つまり、現在、世界で生産されている大豆は、概ねブラジルと米国(生産量1億1618万トン)が各1/3、残りがその他の国(そのうちアルゼンチンが5700万トン)ということになる。ブラジルの大豆は生産量こそわずかに米国に及ばないが、世界の貿易量に占める割合では、全体の42%を占め第1位である。
 一方、国際アグリバイオ事業団によると、2015年時点でブラジルにおける遺伝子組換え大豆の普及率は94.2%である(※2)。2016年の数字も、恐らくは同様の水準で推移するものと考えられる。

  ※  ※  ※

 さて、これを国際貿易という視点で見ると、非常に興味深い。2016/17年度、世界で最も大豆を輸入する国は中国であり、その数量は8600万トンと見通されている。世界の大豆輸入量は1億3623万トンで、その約6割が中国の輸入という訳だ。
 もちろん、ブラジルの大豆輸出数量全てが中国向けに振り向けられる訳ではないため、中国はその他の国からも調達している。可能性として最も高いのは米国とアルゼンチンであるが、両国における大豆の遺伝子組換え普及率はいずれも9割を超えている。
 こうした事実から合理的に推定できることは1つ、世界で最も大量に遺伝子組換え大豆を輸入しているのは中国ということである。

  ※  ※  ※

 さて、トウモロコシはどうか。穀物と大豆等の油糧種子を合計した世界の生産量は約30億トンだが、トウモロコシの生産量は前述のとおり全体の1/3を占めている。世界のトウモロコシ生産量で37%、輸出量で41%を占める米国は、穀物の国際貿易において長年圧倒的な1位の座を保ってきた。
 かつてはハイブリッド・コーンの普及、そして近年では遺伝子組換えトウモロコシの導入など技術面からの革新だけでなく、米国中西部の恵まれた耕作地帯(コーンベルト)と、収穫後のトウモロコシを大量輸送するミシシッピ川という天然の輸送路があればこそである。
 一方、ブラジルはどうか。トウモロコシの生産量で米国(3.8億トン)、中国(2.2億トン)に次ぐ第3位(8350万トン)でありながら、その輸出量は2100万トンと依然として少ない。生産の中心は内陸部のマット・グロッソ州およびその南のマット・グロッソ・ド・スル州を中心とした地域(この両州だけで全ブラジル生産量の約4割を占める)と、パラナ州(生産量の約2割)を中心とした南部生産地域に分かれている。米国と異なる点は、生産地域が南北に大きく伸びている点、夏作と冬作がある点、そして大量輸送のインフラ(河川、道路、トラック、鉄道、船積み施設等)である。
 筆者が直接穀物取引に携わっていた20年以上前に比べれば、ブラジル内陸部から輸出港へのインフラは格段の進歩を遂げたようであり、その結果が大豆の大量輸出に繋がっている。ただし、ブラジルはまだ潜在力を充分に発揮しているとは言い難い。今後のブラジル農業におけるトウモロコシ輸出がどうなるかは、極めて興味深い。

※1:USDA, "Grain: World Market and Trade", 及び "Oilseeds: World Market and Trade", October 2016. 以下、穀物・油糧種子関係の数字は全て両資料に基づく。
※2:ISAAA(国際アグリバイオ事業団)資料による。

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