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コラム:TPPから見える風景

【近藤康男「TPPに反対する人々の運動」世話人】

2017.03.23 
CETA、3月チリ閣僚会合から見える日欧EPA、日米交渉一覧へ

◆カナダ対EUのCETAと日欧EPA

 カナダとEUの包括的経済貿易経済協定CETAはほとんど日本では報道されていない。
 CETAのような条約は、執行機関である欧州委員会が交渉に当たり、加盟国政府の長が加わる欧州理事会での署名、域内で選出された議員からなる欧州議会での承認に加えて加盟国の議会での承認が得られなければ発効しない。そして各国の議会での承認手続きは各国の仕組みにより異なる。そして地方政府・議会の権限強いベルギ-で、ワロン地方の政府・議会が反対したためCETAの発効が一旦頓挫した。
 それだけでなく欧州では、TPP型ISDSに対抗するEU提案の常設法廷や2審制が形式に過ぎないとして投資章への反対が強く、ベルギ-以外の議会からも反対の声が上がっていた。結局CETAでは投資章を除外することでやっと全加盟国が承認、4月発効にこぎ着けた。
 投資章抜きの発効は暫定発効と言われている。
 日欧EPAでも日本はTPP版の投資紛争処理システムを主張、EUはCETA版を主張している。
 3月21日EU本部で安倍首相とトゥスクEU大統領・ユンケル欧州委員長が会談、日欧EPAの年内大枠合意を目指す方針を確認した。更に安倍首相は共同記者会見で「日欧が米国と協力して自由貿易の旗を高く掲げなければならない」と相変わらず威勢がよかった。4月には東京で首席交渉官会合を開く見通しとされている。
 しかし米国との環大西洋貿易投資連携協定TTIP交渉が宙ぶらりんになっているEUは、依然農産品ではTPP以上の市場開放を求め、"高水準"のEPAに拘っている。一方日本は日米ハイレベル経済対話での米国との着地点が見えない限り、安易な譲歩も出来ない筈だ。CETAと同じような運命を辿らないとも限らない。

◆成果を期待するべくもなかったチリ閣僚会合

 チリで開催された太平洋同盟、TPP参加国、中国・韓国のハイレベル会合が3月14日~15日に開催された。TPP参加国だけの会合は、会合前に発表された日程では15日の朝食を食べながらの会合だけだったようだ。米国は駐チリ大使が出席したが朝のTPP関係国の会合には招待されなかった。中国は中南米特別代表の殷恒民大使が参加。そして豪州・NZは閣僚が出席したが、日本は副大臣だ。
 これでは、当たり障りのない共同声明を発表するのがやっとだったのも当然だろう。次回TPP参加国の閣僚会合は5月20~21日APEC貿易相会議に並行して行われる予定だ。
 米国が抜けた後のTPP参加国は代わりの市場を日本や成長のアジアに求めて必至だ。中南米・EUもアジア市場に目を向け、その中で日本には農産物市場への参入拡大を狙っている。TPP11ヶ国がまとまるのも容易ではない。

◆日米ハイレベル経済対話を前にリアリティに乏しい安倍政権

 米国は貿易赤字解消を2国間交渉に求めてまずメキシコと日本を見据えている。通商政策の中心である国家通商会議ナバロ委員長、ロス商務長官、ライトハイザ-USTR代表も異口同音に日本市場の重要性と優先度、TPP以上の譲歩を語っている。"米国第一主義"のトランプの"自由で公正な貿易"は"身勝手な、自国にとっての自由と公正"でしかない。
 これに対して日本は、投資・技術協力などのお土産を日本企業と米国に差し出しつつ、米国のTPP復帰に拘っている。そして欧州訪問での安倍首相発言には、威勢のよい総論だけが目立っている。世耕経済産業相などは3月8日衆院経産委員会で「日米でなければ出来ないレベルの高い議論を進める」「日米で合意したル-ルをアジア太平洋地域に広げたい」と能天気な発言をしている。これでは2国間での貿易協議が始まれば、日本は押しまくられるだけ、としか思えない。他の国々は、米国抜きの市場を前に、リアリズムに立っている。
 日本は日米交渉の着地が見えないと日欧EPA始め、多国間交渉で安易に前に進めない状況に囚われるだろう。苦し紛れに農産品で大幅譲歩を繰り返すことだけは止めて欲しい。

◆   ◇

 自民党は、2月に訪米した西川・森山両氏を始め"農林水産分野でTPP以上は認められない"と威勢だけはよい。TPPでも"日豪EPA合意を超えるTPPは認められない"と大見栄を切った。掛け声だけの譲歩の連鎖はもう断ち切るべきだ。そして政府も、わざわざご用聞きに出掛けるような外交はいい加減にして欲しい。
 "Corporate Globalization"が曲がり角に来ている今、必要なのは"共生"を基礎に、暮らしと地域主権を基盤とする、国家間のあり方を構想することだろう。

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