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コラム:正義派の農政論

【森島 賢】

2018.05.07 
国民民主党は第2保守党か一覧へ

 新党の国民民主党が、今日発足するようだ。民進党と希望の会が合流する新党である。
 民進党は、参議院で17%の議席を占める大政党だし、希望の会は、昨年の総選挙の比例区で17%の得票率を得た大政党である。しかし、最近の世論調査では、両党を合わせても2~3%の支持率しかない。いまや、党勢の退潮は見る影もない。だから、危機感を持った両党が合流し、新党を作って復活しよう、というのだろう。
 いったい、この新党は何を目指しているのか。
 新党は、綱領案をみると、生活者、納税者、消費者、働く者の立場に立つのだという。だが、国民は誰もが生活している生活者だし、消費税を納めている納税者でもある。これでは、誰のための政党か分からない。自民党の党員の中にも、この綱領案に賛同する人は少なくないだろう。
 この曖昧さは、新党に参加しなかった立憲民主党の綱領でもみられる。
 いまや、「立憲」も「国民」も、「自民」との対立軸を曖昧にして、第2自民党を目指し、財界にすり寄ろうとしているかに見える。

 新党の「国民」も、「立憲」も、保守主義を標榜している。そのほうが、財界から睨まれず、居心地がいいのだろう。しかし、それでは「自民」との対立軸が分からない。だから、安倍晋三内閣の支持率が下がっても、「自民」の支持率は、それほど下がらないし、野党の支持率は、それほど上がらない。
 多くの野党は、いまの政治の混乱は、「自民」の政治に起因する、とは考えていないようだ。安倍首相の特異な政治理念に起因すると考えて、そこを攻撃目標にしている。安倍晋三氏という個人への攻撃のようにも見える。

 ここで強調したいのは、安倍首相の政治理念に対する野党の攻撃を批判することではない。強調したいのは、野党は「自民」の政治理念を、真っ向から否定すべきだ、という点である。それは、綱領で示すべきものである。
 しかし、「国民」の綱領案にはそれがない。それがなければ、安倍首相が総辞職しても、別の自民党員が安倍首相の後を継いで、自民党の政治が続く。つまり、宮中革命にしかならない。それでは、野党は万年野党に堕ちてしまう。

 ここには、多くの野党の、いまの政治の混迷に対する、深い認識が見えない。
 いま、多くの国民は、経済的格差の拡大、つまり、貧困化によって苦悩のどん底にある。これは自民党の市場原理主義政治がもたらしたものである。これが社会の底流になっていて、深刻な社会問題を生み出す根源になっている。しかし、こうした認識が多くの野党にない。
 貧困化による格差の拡大は、自然現象ではない。避けられない社会現象でもない。これまでの自民政治がもたらした社会問題なのである。
 こうした状況のもとで、いったい、新党の「国民」は格差の拡大を是認するのか。市場原理主義に基づく政治理念を信奉して、それに支持を求めるのか。保守主義だ、などと言って財界に秋波を送るのか。

 そうではないだろう。市場原理主義の政治がもたらした貧困に呻吟する経済的弱者の代弁者になって、そこに支持基盤をおくのではないのか。
 そうだとすれば、「国民」は、そのことを綱領で明確に示さねばならない。そうすれば、国民の大多数を占める弱者からの圧倒的な支持を得て、万年野党から這い上がり、政権を奪うことができるだろう。農業者をはじめ、多くの弱者は、それを期待している。

 「国民」の基本政策案には、安保法制の白紙撤回と、2030年代の原発ゼロ、の2つの政策を盛り込むようだ。この2つの政策は、ともに自民党の政策と対立する。しかし、この2つの政策が、綱領案のどの部分から出てくるのか、が分からない。それが、弱者にとって何を意味するのかも分からない。
 それらは、綱領の水準で明確にすべきことである。新党の綱領案の曖昧さは、ここにある。新党は、国民の党、などという醜い鵺のような党ではなく、市場原理主義と決別し、弱者のための党であることを、綱領で明確に宣言すべきである。

 このことは、最大野党の「立憲」の綱領に対する批判でもある。
 「国民」も「立憲」も、ともに八方美人の考えを捨て、保守主義の看板を捨て、財界への媚態を改めて、弱者を代表する弱者党であることを、綱領で宣明すべきである。
 弱者の党であるのなら、綱領は、党幹部の頭の中だけで作るものではない。全国の弱者の声を組織し、それを結集して作り上げるべきものである。
 そうして、互いに競い合うことを、農業者などの弱者は期待している。
 もちろん、選挙では、この両党を含む6野党が、互いに協力しあうのだが。
(2018.05.07)

(前回 政府攻撃の戦略目的は弱者にとって何か

(前々回 ボロボロの安倍政権

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