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シリーズ:揺れる米生産の現場

2018.03.08 
揺れる米生産の現場 JA秋田おばこ問題一覧へ

・独自販売 二重帳簿で?

 30年産米からは行政による生産数量目標の配分と米の直接支払交付金が廃止されるなど、米政策が見直されるなか米産地とJAグループには需要に応じた生産と販売への取り組みが求められている。こうしたなか発覚したJA秋田おばこの米販売事業をめぐる不正会計処理問題については、米の大産地として先進的な取り組みをしてきたと見られていただけに、他の産地やJAグループ関係者に深刻な受け止めと今後の事業への不安も広げている。まずは何よりも真相の解明が期待される。関係者からの取材や同JAの調査などからこれまでの問題の経過などを報告する。(写真はJA秋田おばこ本店)

◆2つの問題-未収金と共計赤字

 齋藤健農相は2月2日の記者会見でJA秋田おばこの調査委員会が1月31日に報告した今回の問題点について、▽平成18年以降、米卸売業者に対して信用状況を確認しないまま取引を継続して未収金を増大させたこと、▽平成16年産米から直接販売を開始したが、帳簿などが未整理で全体収支を把握できないまま販売を継続、累積赤字を発生させ不適正な会計処理を行った、の2点に整理した。
 また、農相は米の取引について理事会で審議されていなかったことも判明したとして「極めて遺憾」と述べ、秋田県と連携して事実関係の解明を進める考えを示すとともに、今後JAグループに対しても「必要な指導を行っていく」との考えを示した。
 本紙のこれまでの取材では米の直接販売事業の不適切な事務処理については昨年9月初めJA全国監査機構の監査で発覚した。その後、JAは内部調査を実施するとともに12月には顧問弁護士・税理士、組合員代表による米穀販売調査委員会を設立し関係役員の聞き取り調査を開始した。
 一方、この間、県中央会などJAグループ関係機関も調査支援チームを組み損失金額の確定などの再調査を支援している。

JA秋田おばこ本店(写真)JA秋田おばこ本店

 

◆販売事務 職員の手作業

 齋藤農相が指摘したように問題は大きく2つある。監査でJAの独自販売米の共同計算処理状況を確認するなかで、米卸業者への約12億5000万円の未収金が存在することと、共同計算(以下、共計)の赤字が50億円を超える見込みであることが明らかになった。
 JA秋田おばこは平成16年産米からは系統販売に加えてJAが直接販売する独自販売を本格させた。ただ、JAによる買取販売ではなく受託販売であり、また、全量独自販売ではなく、年産ごとに系統販売と独自販売の清算結果を合算する共同計算のルールがあったとされる。
 しかし、独自販売については系統販売で導入していた電算システムを使っていなかった。その理由は不明だが、県内JA関係者や調査報告などによると、担当職員がいわば手作業で事務を行っており、独自販売の取扱い数量が増えていくと人手が不足して、販売台帳と伝票との突合せや正確な在庫数量管理もできなくなっていったという。
 この点について、県内JA関係者からは独自販売を電算システムから切り離し、手作業で事務を行うようになったことで「二重帳簿が可能になった」との見方も出ている。思うように米販売ができず、生産者に支払った代金より販売金額のほうが下回ってしまい損失が出たとしても事態が発覚しなかったのは、実質的に「二重帳簿」になっていたからだという指摘だ。発覚しなければ役員の責任が問われることもない。
 実際、どんな意図でどこにどういう価格水準で販売されていたのかは不明だが、今回の調査で共計赤字は昨年12月末で55億円を超えることが報告されている。
 この共計赤字が各年産でどのように積み上がっていったのかはいまだ明らかではなく、それどころか米の独自販売について、理事会などで販売予定数量や販売先などを含めた販売計画が審議されたり、その結果の検証などもまったく行われていなかったことを調査委員会は指摘。それが累積赤字発生の原因だと報告している。

 

◆未収金あっても取引継続

 一方、未収金問題が発生した米卸業者とは、平成16年の独自販売開始当初から取引を始めていたという。その後、取引量が増え平成18年には販売代金1億円が振り込まれずJA職員が出向いて回収したこともあった。しかし、同社との取引は続いた。回収に苦労した業者となぜ取引が継続されたのか、これも今回の調査では検証できなかったという。
 さらにこの問題ではその後、別の卸業者から発注を受けるという取引形態となったのだが、それでも米は当初の卸業者に出荷され代金もその業者から支払われるという不可解な取引となったという。それも未収金が増える原因にもなったようだ。そもそもなぜ発注した卸業者から代金を取らなかったのかの理由も定かではないが、この未収金問題もまた共計赤字と同様、理事会に報告されることもなかった。
 調査委員会が強調しているのは、米の独自販売事業については担当理事から営農経済部署へという指揮命令系統のもとにはなく、組合長ら特定の者だけで情報共有が行われていたという実態である。
 同JAの直接販売事業はすでに触れたように買取販売ではなく委託販売であり、年産ごとに清算するという共計ルールも定められていた。農家には多くのJAと同様に、仮渡金が支払われており、その清算は年産ごとに行う。販売代金が仮渡金より多いという結果となればJAは追加払いを行う。一方、販売代金が下回れが仮渡金の一部をJAに返さなければ共計は赤字になる。これは全国のJA・県段階で大きな問題で出来秋の仮渡金水準設定は米事業の焦点となる。 同JAについては一部報道で、実際には販売代金が見込みより少なく収入不足が生じていたが、複数年を足し合わせて収入不足が生じないよう会計処理がなされていた可能性も指摘されている。調査委員会はこの点は確認できなかったという。

 

◆農協はだれのものか?

 これまでの調査で問題の枠組みは見えてきたものの、詳細な実態はさらに調査される必要があり、何よりもなぜこうした問題が起き、長期間に渡って分からなかったのかということも明らかにされる必要がある。
 今回の損失見込み額をJAの損失金として計上することになれば自己資本比率を割り込む可能性も指摘されるなど、米事業問題ではなくJAの経営問題にもなっている。ただし、関係者のなかからは「JAの経営問題と米事業問題は切り離すべきだ」との指摘もある。そのため組合員の合意も得て、少しでも赤字を解消するため共計の複数年清算などの手法も検討する動きもある。
 しかし、県内のあるJAトップは「今後の処理を検討する時期ではない。とにかく真相を徹底的に解明すべきだ」と怒りを込める。同JAの組合員にとってはもちろん、共同でJAの事業構築に取り組んできた関係者としても徹底した真相究明は譲れないことである。
 同JAの調査委員会は業務規約などを無視した業務執行が許されており「理事会は機能不全の状態であったと言っても過言ではない」と指摘、今後は特定の者に情報や権限が集中しないよう理事会の活性化を求めた。
そのうえで「役員においては組合員の財産を預かっているということを強く自覚し組合業務にあたるべきである」と強調している。

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