JAの活動 シリーズ詳細

シリーズ:新世紀JA研究会 課題別セミナー

2017.06.30 
【覚醒】農業農村協同組合運動を正准組合員の共同参画一覧へ

「附則」の形骸化警戒

 2016年8月に可決成立した改正農協法の附則には「政府は、准組合員の組合の利用に関する規制の在り方について、施行日(2016年4月1日)から5年を経過する日までの間、正組合員及び准組合員の組合の事業の利用の状況並びに改革の実施状況について調査を行い、検討を加えて、結論を得るものとする」(附則第51条第2項)と規定している。
 さらに、2016年11月11日に政府の規制改革推進会議の農業ワーキング・グループの「農協改革に関する意見」では、「農水省は准組合員の利用規制の在り方についての実態調査・研究を加速すべきである」と明示し、農協法改正附則の形骸化に繋がる点を警戒する必要がある。
 協同組合の組合員制については、国際協同組合同盟(ICA)が1995年に制定した「21世紀の協同組合原則」の第1原則において、「協同組合は、自発的な組織であり、...そのサービスを利用することができ、組合員としての責任を受け入れる意志のあるすべての人びとに開かれている」と明示している。
 さらに第4原則で、「協同組合は組合員が管理する自治的な自助組織である。協同組合は、政府を含む他の組織と取り決めを行う場合、または外部から資本を調達する場合には、組合員による民主的管理を保証し、協同組合の自治を保持する条件のもとで行う」と明示。民間組織である世界の協同組合(ICA傘下の組合員は10億人)に加えて、国際連合や国際労働機関(ILO)においても協同組合の世界的発展を支援する「ガイドライン」としてこの原則を堅持している。
 一方で、 民間組織である農協に対する日本政府による驚くべき干渉は非科学的で、協同組合の本質的理解の欠落が基本原因である。わが国の農協組合員・役職員は、政府の干渉を座視せず、上記の「21世紀の協同組合原則」を座標軸として、地域特性を有する各単位農協段階から協同組合らしい組合員制の再点検、再構築運動によって政府の干渉を是正し、農協の組合員・役職員が国民的、国際的な共感を広げることが大きな使命として問われている。
 このような課題解決のために注目されるのは第1に、今年1月17日に新世紀JA研究会の第4回課題別セミナーで、JA京都にのくにの迫沼満寿代表理事専務が、食と農を基軸に「地域になくてはならないJAづくり」のための「わがJAの組合員メンバーシップによる関係深化への取り組み」を報告された点である。
 具体的には、正組合員対象のアンケート調査(2015年3月)で、「准組合員の運営参画について」、(1)「正組中心の運営で部分的に必要」が27%、(2)「正組と同様に参画」21%、(3)「必要で議決権等は正組に限定」12%、(4)「必要ない」が6%、「不明・無回答」が3.4%と、「正組と同様に参画」に賛同が21%で、「正組が限定的でも准組合員の運営参画に賛同」を含めると60%に達する。一方、准組合員対象のアンケート調査では、准組合員の〝農〟への関心は、「家庭菜園をしたい」が45%、「農業をしたい」が14%、「農作業を手伝いたい」が6%、「農業振興に協力したい」が3%と70%の准組合員が〝農〟への関心と実践の意向を持っており、「関心がない」が30%にとどまり、正組合員と准組合員双方の組合員意識が大きく変化し、両者の差異は縮小している点に注目したい。
 このような意識・意向分析をふまえ、当JAの組合員ステージアップ戦略の実践は、(1)多彩なキッカケから正・准組合員としての加入活動を出発点に、(2)情報発信と組合員学習を通じた理念の共有・理解の活動、(3)組合員が集まる「場」づくりと活動参加・JA事業の利用拡大、(4)青壮年部や女性部、生産者部会・支店協同活動・座談会などを通じ、JA運営への意思反映・深化、⑤理事、総代、組合員組織役員、支店活動活性化委員などとして、JA運営に参画・コアへの組合員メンバーシップの強化・関係深化へとラセン的に運動展開を進化させ「形」にする。
 このために、JA定款を改正し、2015年5月に准組合員総代の定数65名(うち女性34%)を准組合員戸数の1%基準で支店に配分、任期3年(2016年4月改選)で委嘱し、実践するなどの主体的取り組みを高く評価したい。
 すなわち、現行の農協法の枠組みを遵守しつつ、正准組合員が運営参画できる定款導入を開拓し、豊かな食料農業農村指向の新農協運動を展開しており、JAグループ全体で多様な定款見直し運動として開花すべきである。
 豊かなくらし実現へ
 第2に、「農業協同組合新聞(2017年6月10日号)」で、JAいわて中央の久慈宗悦代表理事組合長は、JAの新しい経営理念として採用している「農・人・自然を大切にし、豊かな暮らしの実現と、地域社会の発展に貢献します」という狙いを「営農も大切ですが、組合員1人ひとりがうるおいある生活を実現することこそが、JAのこれからの大きな任務となるのではないでしょうか」と新たな生活文化運動の戦略的課題を明示している。
 営農も信用事業も、また税務も組合員にとって「生活の一部」であり昨年から8支所すべてに、そうした相談に応じることのできる地域の人から信頼度の高いベテラン生活指導員を配置している点を高く評価したい。このような豊かな暮らしの実現をめざす「食料農業農村指向の新農協運動」を、JAグループ全体で開花すべきである。

◇   ◆

 以上のような営利企業セクターとの本質的差異を鮮明にした新農協運動こそが、激動期の農協の正准組合員・役職員と地域社会の経済的社会的文化的ニーズと願いの実現に加え、国際的協同組合運動の発展につながるものである。農協の一人ひとりの組合員、役職員が協同組合人としての誇りをもって、危機感を共有し、好機のタイミングの逃さず、柔軟に挑戦して欲しい。
 (M・S)

一覧はこちら

このページの先頭へ

このページの先頭へ