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シリーズ:新世紀JA研究会 課題別セミナー

2017.07.14 
新全中を支え将来像を JAの体質改善・人材育成へ【前JAしまね組合長 萬代宣雄氏】一覧へ

周知・広報の充実図れ

 新世紀JA研究会が6月26日開いた第9回「新総合JAビジョン確立のための危機突破・課題別セミナー」では、(一社)全中の組織や機能について意見交換しましたが、新世紀JA研究会設立の呼びかけ人の一人で初代の代表でもあり、その後も今日まで研究会を引っ張ってきた前JAしまね組合長(前JA島根中央会会長)の萬代宣雄氏に、新全中への期待と要望を話していただいた。この中で同氏は、全国のJAは財政面を含めて新全中を支え、新全中もそれに応えてJAグループの司令塔として機能を発揮すべきだと強調しています。

◆はじめに

前JAしまね組合長 萬代宣雄氏 農協グループ長年の努力に対し、安倍内閣発足以来、急激に「いじめ」とも取れる手法で攻撃を受けていることは、ご案内のとおりです。
 まずは、TPP衆参両院の決議を「反故(ほご)」にすることに始まりました。重要5品目の594細分類のうち170の関税撤廃を約束したにも関わらず、重要5品目を守ったと言い切りました。守ったと言う意味、言葉の解釈によって受け止め方の違いはあるにせよ、国会や国民、特に農民を軽視した発言は、許すことの出来ない不適切な言動ではなかったかと思います。
 また、私達が信じていた多くの国会議員のそうした同様の発言、行動に対し、失望せざるを得ませんでした。当時の怒りを思い出すにつけ、その後の農協改革、その手法はこれまた容認できるものではありません。
 規制改革会議なるものが突然出来て、ここでの意見、発言が国会議員よりもはるかに強く、重く取り上げられ、次から次へとエスカレートし、今日を迎えています。
 そうは言っても、農業や地域を、また農協の歴史、現状を理解いただいている数少ない国会議員や農水省の皆様のおかげで、極端な発想、費用対効果的な手法に対して是正を加えられていることは感謝しなければとも思っています。
 TPPについて、アメリカはトランプ大統領出現で不参加の表明を出しましたが、さらに厳しさが増すと予想される二国間協議等が取り沙汰される中、農協改革は既に走り出しています。

◆これまでの全中監査

 今さらではありますが、改正農協法は平成27年9月に公布され、28年4月1日から施行されています。その中で一番ショッキングなことは全中の解体です。全中については平成31年9月末までに一般社団法人への組織変更が定められました。
 元々、行政に代わって地域や農業を守るために中央会制度を国が作り、本来行政が果たすべき重要な役割を我々に汗をかかせておきながら、時代が変わったから「はい、ご苦労様」では、いかにも冷ややかな仕打ちとしか受け取れません。
 しかし、そのような愚痴を言ってもすでに改正農協法は施行されており、今、最も重要と思われるのは全国中央会の進むべき方向性についてです。戦後間もない昭和29年に導入された、特別認可法人とされた全中による全国農協の指導、監査の義務付けを廃止し、公認会計士監査を義務付けるという内容です。
 そうした全中の監査業務について、全中監査が信用されておらず、農水省、規制改革推進会議から、同じJAグループということで監査が甘いのではないか、公認会計士によるもっと厳しい監査を導入するべきではないかと随分言われています。
 しかしながら、公認会計士監査の義務付けについては、何十年も実績を確認し、法を根拠に厳しく指導を行ってきた農水省が、今までの全中監査を否定すること自体、何か別の意味が隠されているのではないか、と疑わざるを得ません。(農協組織の弱体化、政治力の削減)。
 全中監査と公認会計士監査は本当に違いがあるのか、言われているように全中監査は甘いのか疑問を感じている農協もあります。この件について、合併問題が浮上していることもあり、全中監査に加えて、かなりの費用をかけて公認会計士監査を行った農協があります。結果は「厳正に監査がなされており、何一つ問題は無い」ということでした。別に監査費用は掛かったものの、全中監査で何ら問題は無かったという現実です。しかし、このことも重なるようですが、法改正が行われ、既に走り出しています。

(一社)全中への期待は大きい(第9回セミナー)

◆新全中の体制と財源

 全国の農協にとって、監査費用やどこの監査法人を選ぶのかが今後、問題となります。監査法人によっては監査のみでなく、農協経営のアドバイザー的な発想も取り入れ、粛々と準備されているとも聞いています。捉えようではありがたい話でもありますが、全中との関わりがどう展開していくのか、法的根拠の無い中での今後の全中による指導についての方向性が重要となります。
 このような問題を抱える中、「今までの指導」や各連合会の調整、営農指導、経営指導、規律、規範等が、今後どうしようとされているのか。既に、全中においては29年3月の通常総会に報告された「一社全中のあるべき姿」の大枠を基に機能、事業、体制、財政等にかかる具体的事項について、JA、県中央会、全国連等会員との協議検討をすすめることとなっています。着々と準備が進められている部分もありますが、期限が迫る中、準備に時間的な余裕はないと思っています。全中サイドではいろいろと組織決定されている部分もあるようですが、その内容が単協、組合員に周知されているかと言えば、充分でないことは明白であり、周知、広報の充実を願う次第です。
 今ひとつ心配しているのが、全中の財源です。監査機構の外出しに係る賦課金の削減は当然ですが、代表機能、総合調整機能、経営相談等の機能を発揮するための費用に伴う賦課金については、「JAグループ全体で厳しい財政事情の中、各々の組織で進んで賦課金を出せるような環境、状況」を作るため、新全中の一層の改革努力が必要と思っています。また、出す側も財政が厳しいのは理解できますが、あまり出し惜しみするようでは、政府、財界等の思う壺になると考えます。
 これまでの全中の事業費、人件費等の経常的な費用は約60億円であります。将来の農家のため、健全なJA運営のために頑張るべきと考えています。極端な言い方かもしれませんが、新全中に対し「JAグループ挙げて、必要なもの、資金はいくらでも出すから、思い切って農業が、組合員が、単協が納得する役割を発揮しろ」と言えないものでしょうか。財政が厳しいかもしれませんが、全中が変われば、出す方も考え方が変わるのではないのかと思います。
 JAグループ(組合員、単協、連合会等)が、多少のお金のことでチマチマ言うようでは我々のグループに明日は無いと思っています。一方、全中も官僚体質と言われないような、一般企業よりも優れた体質への改善や人材育成に向け、早急な対応、改革が必要と考えます。

◆おわりに

 農水省上級官僚の某氏をはじめ、政財界の多くから農協改革が叫ばれてきました。いろいろな反論をしてきましたが、今までのままで良いのかと問われれば、確かに大いなる反省をしなければならないこともあろうかと思います。時代の流れを吸収し、変革しなければならないことをJAグループも怠っていました。そういう意味では、このようなことに火をつけた某氏には感謝であります。
 しかし、例えば、「農協は専門農協であるべし」が基本にありますが、全国の80%以上は総合農協として地域や自然を守っています。農協組織を根底から否定する動き(全農の株式会社化、農林中金によるJAの代理店化等)は許せません。また、食料自給率について、誰一人(政・官)言及する人がいません。政治家は何をしているのでしょう。(一部の人を除き、誰もが保身に走っているのではないか)。
 某氏には官邸ばかり向かず、一番可愛いはずの農協のこと、日本の食料のことを考えて欲しいものです。また、余分なことですが、官邸、政治家等の打ち合わせはほとんど一人で行動されていると聞きますが、部下に知られると困ることでもあるのでしょうか。
 規制改革推進会議とは何者か。会議のメンバーで、農業、農協について理解している人がいるのか、規制改革推進会議の名の下で、農水省が裏で情報を全て提供しているのではないか、農協組織を崩壊させようとしている勢力に加担しているのではないか、疑いたくなる次第です。
 さらには農協改革、准組合員制度について、いずれも「5年間の結果を検証し、必要があると認められる時は、必要な措置又は検討を加えて結論を得るものとする」となっています。努力の検証、検討について定かな基準が無い中、我々の努力が反故にされない保証は見つかりません。時の指導者、関係者(特に良識ある国会議員、農水省)に頼るしかないと思います。これからの動向を大いに注視し、日本の農業、農協組織の将来に誤りが無いように、一層の努力を願う次第です。
 このような中で、先刻(6月10日付)農業協同組合新聞で「規制改革会議の運営 改善要求―参議院決算委員会 与野党全会一致―」の記事を見つけて、参議院に良識の府としての同志がまだ残っていることに感激したところです。農協法等の改正の場合、当然ながら担当省庁の審議会で充分議論すべきところですが、安倍総理誕生以来4年半の内で4回しか開催されていません。一方で規制改革会議は頻繁に開催し、その意見を関係者の総意だと言わんばかりに、腰砕けの国会議員を操って法改正を強要していると思われる実態は許せません。今回のような理解ある仲間と共に、誤った方向に行かないよう、さらに努力しなければと思っています。

(写真)(一社)全中への期待は大きい(第9回セミナー)

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