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シリーズ:新世紀JA研究会 課題別セミナー

2017.10.18 
水田・畑作とイチゴ経営で【JA鳥取中央代表理事組合長 栗原隆政氏】一覧へ

 JAが農業生産に関わる場合、ほぼ100%JA出資と、一定の割合で組合員との共同出資がありますが、地域の農業を支えるJAの役割を考えると、組合員も積極的に巻き込むのが本来の姿と考えられますが、まずJAが経営の見本を示して地域農業をリードすることから始めざるを得ないのが現実です。その典型を水田、畑作、施設イチゴで実践しているJA鳥取中央の報告を紹介します。

◆スイカ単価で過去最高

栗原隆政・JA鳥取中央代表理事組合長 JA鳥取中央は鳥取県の中央部に位置し、管内約11万人の人口のうち組合員が約2万3000人を占め、県内でも農業は一番盛んです。平成10年に倉吉市と東伯郡内の9JAが合併し、その後、19年に東伯町農協と合併、再スタートしました。スイカと梨の2大品目を中心にJAの農産物の販売高は約169億円です。合併時は200億円余りありましたが、減少傾向が続いています。
 このためいま、JA鳥取中央・地方創生総合戦略による産地パワーアップ事業として4つのプランを掲げています。(1)輝きある梨産地技術革新プラン、(2)活力ある園芸施設増設プラン、(3)魅力あるイチゴ団地プラン、(4)中部地区酪農・和牛基地化による増頭プランです。
 梨は「二十世紀」に代わり、鳥取県の育成品種である「新甘泉」(しんかんせん)をいかに普及させるかが課題です。JAでは生産者を支援するためジョイント栽培を勧めています。「新甘泉」は大苗を植え付けるので、JAで1年間育てて生産者に渡し、計画本数を確保しています。現在47haほどの面積がありますが、これを100haにまで増やす計画です。

(写真)栗原隆政・JA鳥取中央代表理事組合長

 園芸施設の増設はスイカが中心です。JA鳥取中央のスイカは、スイカの台木にスイカを接ぐ倉吉市の「極実(ごくみ)すいか」、北栄町のスーパーブランドの「大栄スイカ」、琴浦町の黒皮スイカ「東伯がぶりこ」、と、それぞれ特徴あるスイカがあります。ハウス栽培が増えて、熊本県に次ぐ指定席を確実にしています。今年は過去最高の6月出荷率を達成し、平均価格もキロ200円と、過去最高の実績をあげました。
 施設園芸は新設ハウスを平成32年には30haにする計画です。和牛基地化による増頭プランでは和牛繁殖牛を500頭増頭します。今年10月の全共(全国和牛能力共進会)では鳥取牛が第7区の総合評価群で肉牛日本一を獲得しましたが、このように平成29年度は9品目で過去最高の平均価格を実現し、農家に喜んでもらうことができました。

◆集落営農・法人を育成

 こうした管内の生産基盤を支えるとともに、地域の農業を継続するためJAでは、生産者の高齢化に対応して集落営農組織・法人の育成に力を入れています。平成28年度で、農事組合法人が39、集落営農組織68で、合計107の経営体があります。これらの組織によって集積された水田面積の割合は10年で約3倍になり、28年度で28%に達しています。
 またJA出資の関連会社に(有)グリーンサービス、(株)北栄ドリーム農場、子会社として(株)グリーンファーム大黒の3会社があります。
 グリーンファーム大黒は、稲作を中心とした有限会社と畑の遊休農地解消と地域農業の担い手としての育成を目的とする株式会社を合併して平成29年に発足した経営体で、いわば水田と畑を融合させ、一体化させた経営の確立をめざします。具体的には、(1)水田を中心としたモデル的法人経営を確立する、(2)農地を有効活用し耕作放棄地を解消する、(3)ハウス施設の増反によって、さらに生産販売の安定と労力の分散をはかる、(4)新規就農者を育成する、(5)土地利用型品目として畑作大豆の作付けを拡大する、ことです。研修生受け入れでは、平成22~29年度までに合計12人を受け入れ6人が新規就農しました。ファームはJAの新規採用職員の研修の場にもなっています。
 出資金は1685万円でほぼ全額JA出資。社員は、人件費を支援しているJAからの出向者の2人を含めて18人で、29年度は39haの農地を受託しました。生産の中心は24haの水稲のほか大豆、白ネギ、スイカ、長いも、キャベツなどで、販売計画4800万円、農作業受託面積は延べ220haで約2200万円の取扱高です。
 北栄ドリーム農場は平成28年度設立のイチゴ農場です。イチゴに注目したのは、価格が安定していることですが、高齢化で面積が減り、県内の需要をまかなえなくなっているのが実態でした。そこで北栄町の町長から産地化の話が持ちかけられ、町とJAが半分の1500万円ずつ出資し、町長が社長でスタートしました。ハウスの内にも外にも、遠隔操作できる環境制御センサーを設置した最新設備で、おいしいイチゴをつくるため最適なハウス環境を保っています。
 きっかけは、大手洋菓子メーカーの会長と北栄町の町長が大学の同窓生であったことですが、ケーキ用には大玉は不要でM、S級の中・小玉が求められます。従って加工用だけでなく、イチゴの観光農園も検討しています。ハウスは大きな設備投資が必要です。いかにコストを下げるかが重要で、慎重に拡大していきたいと考えています。
 グリーンサービスは中山間地域を対象に平成5年、三朝町とJA鳥取中央(当時JA三朝町)の共同出資で設立しました。農作業受託、農畜産物の生産・加工販売、観光果樹園の運営などが主な事業です。約4000万円の売り上げですが、経営的には苦しい状態にあります。農地・水・環境保全事業交付金の事務も町一本化し、それの事務も行っており、広域の環境保全組織としての機能を果たすものとして期待しています。農家の役に立ちたいとの思いで取り組んでいます。約20haの水田受託に作業受託が45haで、作業受託はなるべく集落営農に任すようにしていますが、水田受託は増えています。

◆農地集約で経営確立へ

 今後は、分散農地の集約、作業の相互補完などで経営基盤を強化する必要があります。また集落協定による休耕地の草刈りの応援などによって耕作放棄地が発生しないようにしなければなりません。なお、三朝町には普通の大豆に比べイソフラボンを約2倍含む「三朝神倉大豆(みささかんのくら)」があり、納豆や水煮、豆腐が人気です。かつて1haだった作付けが、いま35haまでなっています。さらに増反して地域の特産化に貢献したいと思っています。
 中山間地域の農業法人経営は、コストがかかるだけに経営が難しいところがあります。しかも農家の後継者は帰ってこず、耕作放棄地は増える一方です。だれが地域の農地と農業を守るのでしょうか。一般企業の株式会社ではできないでしょう。最終的は赤字になってもJAが関わるしかありません。農地・水・環境を守ることは日本の国土を守ることです。国の政策として守らないと農村が荒れるのは明らかです。JAの法人による大規模化だけが道ではないかもしれませんが、いまはそれしかないと思っています。

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