JAの活動 シリーズ詳細

シリーズ:新世紀JA研究会 課題別セミナー

2017.12.20 
総合性の強み活かせ【山田貴彦・農水省金融調整課グループリーダー】一覧へ

・フィンテック時代に備えを
・大手行で先行 人員削減も
・高まる顧客利便性
・処理スピード向上
・法体系化の検討も
・農村も活用広がる

 先月開いた第13回課題別セミナーでは、JAの信用事業および代理店化について、活発な意見交換が行われた。特に信用事業の比率の高い都市部のJAからは代理店化に伴い、死活問題となる手数料について、農林中金に質問が集中した。銀行も含め、金融のあり方を大きく変えるフィンテックについての農水省の担当者の報告と併せ、意見交換の詳細を掲載する。

◆ 高まる顧客利便性

山田貴彦・農水省金融調整課グループリーダー フィンテックとはどういうものかについて、今年の4月から勉強しているところです。10社以上の担当の方と意見交換や勉強会を重ねてきました。そこで得た知見を話し、フィンテックについての理解と関心を深めていただきたい。今後そういう世の中になるので、5年、10年先、農協でどう活用できるか考えるきっかけにしていただければと思います。新世紀JA研究会企画部会小委員会の今年5月の報告に「フィンテックを『システムが事業間の壁を取り払い顧客の利便性を高める』と定義するなら、フィンテックの発展がJAの総合事業をさらに利便性の高いサービスにできると考えます。またフィンテックの発展により現在のような金融店舗がなくなれば、JAはさらなるコスト削減が可能となり、総合事業としての渉外体制の強化にもつながります」とあります。こういうことを言いたかったのですが、結論にいたるまでのプロセスがあり、それを説明させていただきます。

(写真)山田貴彦・農水省金融調整課グループリーダー

 

 日本の3大メガバンクは最近、厳しくなる収益環境を背景に、事業効率化のためAI(人工知能)やロボット等のデジタル化を進め、大幅な人員削減を発表しています。これは銀行のじり貧を意味するものではなく、事業構造の転換を模索している状況だと理解すべきだと思います。つまり、単純な窓口業務はロボット化し、有人チャネルを高度化しようというものです。
 フィンテックとは「ファイナンス」と「テクノロジー」を合せた言葉で、決済や融資などの分野に、大幅に進化したIT技術が活用できるようになったことからフォーカスされたものです。世界の流れは、米国のシリコンバレーや中国のアリペイ等、既存の金融サービスを侵食する破壊的なイノベーションが進み、競争が激化しています。しかし日本では、伝統的な金融機関の利便性向上に資するイノベーションとして、銀行主導で進んでいます。
 具体的な新技術としては、(1)AIによるロボアドバイザー、自動仕分け、(2)ブロックチェーン(分散型電子台帳)による仮想通貨、決算システム、(3)ビッグデータとその処理スピードの向上による電子マネー等が挙げられます。さらに、(4)スマートフォン・タブレットの普及で場所を限定しない通信ができるようになりました。これらがフィンテック拡大の背景です。
 この中でブロックチェーンは、ビットコインなどの価値記録の取引を第3者不在で実現するもので、従来の取引システムを大きく変えるものです。ブロックチェーンとは、各ブロックがチェーンでつながっていることを意味しますが、これは参加者全員で取引の信頼性を確保する仕組みです。これまでは中央集権で、信頼性を担保にした通貨の発行主体である中央銀行、送金の管理主体の金融機関、プリペイド式電子マネーの発行者などが不要になり、システムの維持コストが大幅に縮減できます。
 また、それぞれの取引履歴が順番にブロックに格納され、各ブロックが直前のブロックとつながっているため、改ざんが極めて困難という特長があります。みんなで取引し、情報を共有するこのシステムは、食品のトレーサビリティ、取引契約、不動産登記等に幅広く使えます。

 

◆ 処理スピード向上

 こうした新技術によって、融資面では、従来活用されていなかった日々の取引データをもとに融資ができたり、ロボアドバイザーで素人でも投資が可能になったりします。決済、送金の手数料も下がり、処理スピードも向上します。この結果、既存の金融サービスにフィンテック企業がどんどん参入しています。
 フィンテックは今後どうなっていくのか、またわれわれはこれをどう受け止めるべきか。ホームページでもみることができますが、金融庁の見方を、森信親長官の講演からエッセンスを拾ってみます。キーワードは「デジタル化」、「顧客のライフログ(生活記録)の自動蓄積」、「AIによるビッグデータの処理・学習」です。つまり、これによって、顧客に応じた商品やサービスの提供ができるということです。消費者の発想でビジネスが可能になり、消費者側に主権が移りつつあります。
 また、金融サービスと非金融サービスを組み合わせて提供することで、顧客とウインウインの関係を構築することになるのではないか。つまり、金融機関は預金、為替、融資がシステム化されていますが、これを分離して、小売店の売り買いのサービスと結びつけることで金融機関はフルラインの必要がなく、店舗などへの投資が不要になります。

 

◆ 法体系化の検討も

 では金融機関の将来性はどうか。これについて長官は、

(1)外部との連携によるイノベーションを進めることが、これまで以上に重要になる
(2)顧客情報の蓄積や情報技術など、新たな要素の重要性が高まると、経営力とガバナンスを有する企業が新しい金融の主体になる
(3)企業の事業の将来性を見極め、ファイナンスやアドバイスを提供する役割など、少なからず金融機関に残る


と指摘しています。こうした考えから、金融庁ではフィンテックを含むITの進展を前提とした監督および法体系を検討しています。

 

◆ 農村も活用広がる

 以上のように金融機関は、これまでのビジネスモデルの見直しが求められます。想定される方向性を整理してみました。

 

(1)異業種との協力関係の構築
(2)さまざまな情報を集約するとともに、実態を踏まえたデータの解釈・評価
(3)顧客に選ばれるため、他にないサービスの提供
(4)自らの特性を活かした利益の源泉の確保について、検討する必要があると思います。

 

 フィンテックの進展で、どのような場所でも金融サービスを享受できるようになり、現金を使う必要も少なくなります。こうした利便性で農村地域でも活用が広がる可能性があり、将来的にはJAの店舗網やシステムが利用されなくなる恐れもあります。
 従ってJAとしては、農業現場の実態を把握している強みを発揮し、その地域に応じた指導等のサービス提供ができます。この強みを活かして、新技術を経営指導、営農指導、集出荷などの業務に積極的に取り込んでいく必要があるのではないでしょうか。そのためのチャンスだと考えていただきたい。

※このページは新世紀JA研究会の責任で編集しています。

 

新世紀JA研究会のこれまでの活動をテーマごとにまとめていますぜひご覧下さい。

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