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JAの活動:新世紀JA研究会 課題別セミナー

「中間総括」農協改革はどこまで進んだか【福間莞爾・元協同組合経営研究所理事長】2018年1月11日

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・食と農を基軸の組織に
・国民的理解得る方向性示せ

 平成27年10月にスタートした「新総合JAビジョン確立のための危機突破・課題別セミナー」は、昨年12月のセミナーで14回目となり、「農協改革はどこまで進んだか」のテーマで、これまでの報告、意見交換をまとめた中間総括を行いました。中間総括について新世紀JA研究会常任幹事(元協同組合経営研究所理事長)の福間莞爾が報告します。

 中間総括する手掛かりは、「規制改革実施計画(平成26年6月24日閣議決定)」です。これらの内容は、協同組合否定、総合JAビジネスモデルの否定という基本コンセプトによるものですが、JAグループはこれらの課題に有効な対抗軸を示し切れておらず、ほぼ一方的な形で農協改革が進められています。
 一方、農水省は農協改革の目標とされる農業所得の向上・農業生産の拡大等について進捗状況を示すことができない状況にあり、JAの優良事例の提示や生産農家との徹底した話し合い、認定農業者へのアンケート調査を示すに止まっています。こうした状況をみると、政府がいう農業所得の向上・農業生産の拡大という農協改革の目標は単なるお題目であることが明らかです。
 いま、農協改革は、第1段階(中央会制度の廃止)、第2段階(全農改革)を経て第3段階(JAからの信用事業分離)、そして最終章(准組合員の事業利用制限)へと突き進んでいます。そこで、中間総括を、(1)農協改革の経緯、(2)総括・課題、(3)今後の展開としてまとめてみます。

【農協改革の経緯】
1.農協法の改正
福間莞爾・新世紀JA研究会常任幹事(元協同組合経営研究所理事長) 全中では、政府が今後JAの自己改革の状況を見ながら農協改革を進めるとして
いたため、「JAグループの自主改革に関する有識者会議」を発足させてJAが取り組むべき方策についての意見を聴取し、平成26年11月に「JAグループの自己改革」をまとめました。
 この時点では中央会監査の廃止通告があったものの、中央会制度の廃止はきまっておらず、自己改革案はひたすら中央会制度の存続を訴えつつ、全体としては、JAグループの従来路線を踏襲するものでした。
 政府の姿勢は、中央会監査の廃止通告などJAが進める自己改革の内容とは関係なく農協改革を断行するものでしたが、JA全中の改革案は従来路線の踏襲であり、出だしから政府との間でボタンの掛け違いが生じていたことの認識が重要です。自己改革における両者の違いは、政府がJAを「職能組合」とみているのに対して、JAは自らの組織を「職能組合+地域組合」とみている点にあります。
 27年4月からの農協法改正審議に先立ち、2月には政府からの「准組合員事業利用規制」をとるか、「中央会制度廃止」をとるかの"大手飛車取り"にあい、JA全中は中央会制度の廃止を容認せざるを得ない状況に追い込まれました。ここで、事実上農協法改正の基本が了承され、その後の国会審議の中でもさしたる論戦もなく27年8月には改正農協法が成立しました。
 27年4月には、JA全中の萬歳章会長が辞任しましたが、辞任は一応の区切りということで、本当の理由は明らかにされませんでした。政府から提案された農協改革案は良い意味でも悪い意味でも、戦後70年のJA運動の総括を求めているものでしたが、そうした認識が示されることは一切なく、それが今日まで続くJA自己改革の空白の時期をつくる原因になっています(今次農協改革のターニングポイント)。
 平成28年4月からは改正農協法が施行されましたが、その内容は営農・経済事業分野のみの利益追求原理の導入、組合員の協同活動を組合員の自主性を侵害するものとして排除するなど、協同組合否定の考えが色濃いものでした。
 
2.全農改革
 平成28年11月11日の「規制改革推進会議」からの衝撃的な提言、「(1)全農の農産物委託販売の廃止と全量買い取り販売への転換、(2)全農購買事業の新組織への転換(いずれも1年以内)、(3)信用事業を営むJAを3年後目途に半減、(4)准組合員の利用規制についての調査・研究の加速」が行われました。
 これを契機に全農改革が加速し、全農は生産資材価格の引き下げ(肥料の銘柄集約等)、販売力強化(買取販売等)について平成29年3月の総代会で具体策を策定、また平成29年4月には「魅力増す農業・農村の実現のための重点事項等具体策の策定」が行われました。
 
3.信用事業分離
 今次農協改革の本丸とみなされるJAからの信用事業分離は、株式会社という形ではなく、代理店化に的を絞って進められています。農林中金では「JAバンク基本方針等見直しの検討方向」(平成29年3月15日)を示し、平成31年5月までに代理店化についての考え方をまとめるとして組織協議を開始し、各JAには代理店手数料が示されて検討が行われています。
 代理店化はJAの自主選択が建前ですが、(1)内部統制の未整備、(2)准組合員の事業利用規制との天秤によって代理店化に追い込まれないような環境づくりが急務になっています。
 
4.中央会制度の廃止・変更
 JA全中では、総合審議会での審議を踏まえ、平成29年2月に「一般社団法人全中のあるべき姿」をまとめ、また、公認会計士監査移行に伴って、平成29年7月には「みのり監査法人」が設立されました。
 さらに、JA全中では「JA自己改革の実践と改正農協法5年後検討条項を踏まえた取り組み具体策」(平成29年7月)をまとめましたが、その内容は自己改革の加速と組合員1000万人アンケートの実施です。

【総括・課題】
 第2次大戦後70年のJA運動の総括という姿勢が必要です。今次農協改革は中央会制度の廃止をもって事実上敗北していると考えるべきで、その原因追求とJAは何も悪いことをしていない意識(究極の行政依存体質)、トップの名誉職意識からの脱却が求められています。
 農協法改正審議前のJA全中会長辞任劇を通じ、その後の第27回JA全国大会で組織としての敗北を認め総括しなかったことは、今次JA改革の最大の悲劇といって良いでしょう。それがその後の、方向感のないJA運動の空白期間を生むことになっています。従ってJAの自己改革とは、従来路線を踏襲することではなく、これまでのJA運動を総括し、新しい路線を組織討議し、広く国民的理解を得ることです。
 
1.従来路線に対置する新総合JAビジョンの確立
 基本コンセプトは、農業者・農家だけの利益体現組織から、農と食を基軸とした国民的組織(1%産業を守る国民組織)への転換をはかることです。これは農業者から消費者と地域にウイングを広げた政府の「食料・農業・農村基本法」の方向に合致します。
 そのためには、農業振興への原点回帰、および職能組合と地域組合の「2軸論」からの脱却と新な農協論の構築が必要です。同時に、総合JAの仕組みは日本農業を支える有効な社会的装置であることを訴えていくことが重要です。
 
2.准組合員対策
 准組合員排除の思想とそのアウフヘーベン(止揚)および、戦後第3世代へ期待をつなぐJA運営の大転換(農業振興について、本音で准組合員への協力を求める正組合員の意識転換)が必要になっています。そのことにより、准組合員に農業振興への協力義務を負ってもらい、協力者に限って組合加入を認め、同時に制限付き決議権を持ってもらうなどの具体策を考えることが可能になります。
 
3.抜本的な農業振興対策
 JAおよびJAグループの農業生産段階への関与、およびバリューチェーンの確立と系統経済事業(とりわけ販売事業)の組織・機能分担の見直しが求められています。
 
4.中央会の体制整備
 (一社)JA全中案は、誇り高き協同組合運動の司令塔組織という姿からは程遠く、(1)農業者の組織、(2)業界の利益体現組織という色彩が濃厚で、経営・教育・広報機能の認識が十分とは言えません。中央会だけでなく、家の光や新聞連の組織・機能再編を視野に入れた議論も必要と思えます。
 
5.JA自立経営の確立
 JA運動の起点となる組合員主体、過度な事業タテ割りの排除(JAのみで可能)を旨とした組織・事業・経営の全面見直し、大規模JAの運営のあり方の探求が必要になっています。
 信用・共済事業(営農貸し付けを除く)のタテ割りに対する組合員目線からの生活事業の位置づけを明確にした事業の再構築や内部統制の整備、非営利法人の監査基準の検討等が喫緊の課題です。
 
6.政治・行政への対応
 自民党公認のJA推薦・支援議員は、小選挙区制のもとで、結果としてすべて政府の方針に従わざるを得ない宿命を負っています。農業者の利益実現にとって政治力の発揮は欠かせませんが、そのためには、党派を超えた人物本位の議員の擁立と支援が重要になっています。もともと協同組合は、政治に対して等距離な存在であるからです。
 また、現在のようにJA運営について行政との間に大きな溝があるのは不幸なことであり、異常です。JA運営の考え方について、将来ビジョンを共有し連携した取り組みを進めることが重要です。
 
7.現実に対応できない協同組合論
 協同組合論はマネジメント論であるという基本認識が欠けています。このため、牧歌的協同組合論による自己満足の議論しか行われていません。

【今後の展開】
 政府が意図する農協改革は、准組合員の利用規制を除き、すでに大方は終わっています。総じていえば、総合JA解体の端緒となるトリガー装置の整備が進められ、後はJAや行政の対応次第といった状況です。
 JA全中は組合員1000万人のアンケート調査を呼び掛けていますが、これはJA組織の引き締め、組合員教育といった面からみればそれなりの効果を持ちますが、対外的にはJA改革はしょせん身内の議論・組織を守るためのものと受け止められる可能性が大きく、むしろJA改革が遅れるのを懸念すべきです。
 可及的速やかに今次農協改革の総括を行い、将来ビジョンのもと新たなJA運動の展開をはかるべきです。経営問題等急を要するものも目前に迫っており、課題は(超)長期・中期、短期的なものに分けられるでしょう。

※このページ「紙上セミナー」は新世紀JA研究会の責任で編集しています。

 

新世紀JA研究会のこれまでの活動をテーマごとにまとめていますぜひご覧下さい。

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