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2017.07.07 
日欧EPA 大枠合意一覧へ

 2013年4月に交渉を開始した日EU・EPA交渉は7月6日、安倍総理とEUのユンカー欧州委員会委員長が首脳協議を行い、大枠合意に至ったと両首脳が発表した。交渉開始から4年、情報開示はほとんどなされず、今年に入ってから急速に交渉が進展していると伝えられ生産現場に不安が広がるなか、合意に至った。TPPでは関税を維持したカマンベールなどソフト系チーズで段階的に関税率を下げていく輸入数量枠を設置した。乳牛頭数確保で生産基盤強化が急務となっている酪農生産への影響が懸念される。

◆農相「国境措置確保」強調

山本有二・農林水産大臣  今回の大枠合意で農林水産物では、米と海藻類(のり、昆布など)について関税削減・撤廃の「除外」を確保した。TPPでは「除外」という規定自体がなかったが、日EU間の経済連携協定にはこの規定を盛り込んだと政府は強調する。ただし、EUからの米輸入は最近はイタリアからのSBS輸入で年間100t程度。EUの関心品目ではない。
 麦ではごく少量(小麦200t→7年目270t)の関税割当枠を設定したものの、乳製品も含めて国家貿易制度を維持したほか、糖価調整制度、豚肉の差額関税制度といった基本制度を維持したとする。また、関税の削減・撤廃に合意した品目にも関税割当やセーフガードなど有効な措置を獲得し「農林水産業の再生産が引き続き可能となる国境措置が確保できた」と山本農相は談話で強調している。
 乳製品のうちソフト系については「意欲ある酪農家の生産拡大の取り組みに水を差さないよう、関税割当にとどめ枠の数量を国産の生産拡大と両立できるものした」と説明している。
 具体的にはナチュラルチーズ(クリームチーズ、モッツアレラ、カマンベール)や、ナチュラルチーズを加工した粉チーズなどに枠数量を設定する。
 これらの品目横断的に初年度2万tを設定する。16年目に3万1000tまで拡大し、この間に枠内税率を段階的に削減し16年目に撤廃する。チーズ3万1000tは生乳換算で39万2000tになる。17年目移行の枠数量は国内消費の動向を考慮して協議することで合意した。数量枠を設けるが枠外税率は維持する。
 一方、熟成ハード系チーズ(チェダー、ゴーダなど)はTPPと同様、関税撤廃するが、段階的に16年目でなくす。プロセスチーズ原料用チーズに対して国産品の使用を条件に無税とする(=抱き合わせ)関税割当制度は維持する。
 農水省によるとEUからのチーズ輸入量は2016年で7万8200t。このうち2万tがソフト系チーズだという。低関税枠を設定するといっても、現行の輸入量を超えない数量とすることで国内生産への影響を抑えることできると説明する。
 また、山本農相は乳製品の消費拡大傾向が続いていることから、消費量の伸びに対応して国産チーズの生産量を増やすことも課題で、創意工夫で品質・生産性向上を図っていき輸入品への置き換わりがおきないような努力も必要だと指摘した。
 脱脂粉乳・バターでは国家貿易を維持したうえで、TPPと同様、民間貿易によるEU枠を設定した。TPPでは7万tとされたが、EU枠は生乳換算で1万2857t。6年目に1万5000tまで拡大する。枠内税率は段階的に削減する。

◆説明と万全な対策を

 豚肉については差額関税制度を維持した。安い部位には従量税、高い部位には従価税をかけるこの制度では、従量税と従価税の分岐点となる価格が最小の課税額となるため、安い部位と高い部位を組み合わせて輸入することが合理的となる。今回の合意で10年後には、EUからの豚肉にかかる従量税は50円/kg・従価税は無税となるが、差額関税制度の仕組みは引き続き維持されていることから、輸入量の抑制になるという。また、輸入急増に対するセーフガードも確保した。
 牛肉については16年目に関税を9%まで削減し輸入急増に対するセーフガードも獲得した。
 一方、今回の合意で日本はEU側の関税については牛肉、茶、水産物など輸出重点品目を含めて、ほぼすべての品目で関税の即時撤廃を獲得した。山本農相は「EU5億人の市場に向けた輸出環境の整備ができた」とし「輸出産業への成長をめざした強い農林水産業の構築のため、交渉で獲得した措置と合わせ万全の対策を講じる」ことを表明した。

◆経営への影響 徹底検証を

 大枠合意に関してJA全中の奥野長衛会長は7月7日に談話を発表した。
 談話では「重要品目につき輸入国の実情に対する一定の配慮がなされ、乳製品や畑作物等に関する制度の基本が今後とも維持され得るものと受け止めている」と表明。ただ、TPPに加え、日EU・EPAが発効すれば「アジア太平洋地域のみならず、欧州の主要輸出国とも質・量両面において厳しい競争にさらされることになる」と指摘。足腰の強い農業を確立するための関連対策とともに、農業経営や生産基盤確保の取り組みに影響が出ないか「徹底した検証」を行い万全な予算措置や関連法制度の整備を求めた。
 JA北海道中央会の飛田稔章会長は「北海道の重要な農畜産物への影響についてはこれから評価を行うべきだが、道内事情に一定の配慮がなされたものと受け止めている」との談話を発表した。談話では「持続可能な北海道農業の確立への取り組みをより一層充実・加速化する必要がある」として、そのため「生産者の意見を十分に聴き取り万全な対策を講じるよう強く求める」と訴えている。

(写真)山本有二農林水産大臣

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