【熊野孝文・米マーケット情報】インド料理店にバスマティライスを売り込む業務用専門店2020年2月25日
◇ ◇
在留外国人は昨年末で約283万人に増加している。国籍別に多いのは中国、韓国、ベトナムである。都道府県別では東京都が最も多く約58万人で、区別では新宿区が最も多く4万3068人、次が江戸川区の3万5710人になっている。江戸川区に住んでいる在留外国人には特色があり、インド人が多く住んでおり、国別では断トツに多い。江戸川区にインド人が多く住み始めたのは、最初に日本に紅茶を売り込みに来たインド人が江戸川区に住み、その伝手で多くのインド人が集まり始めた。今やアチコチにインド料理店が出来、マスメディアでも取り上げられるほどになっているほか、公園ではヒンズー教のお祭りまで開催されるまでになってる。
インド料理と言えばカレーかタンドリーチキンぐらいしか知らなかったが、実際に食事してみると実に多彩なメニューで、カレーだけでも一つの皿に4種類もの異なった味のカレーが付いてくる。カレーはナンとライスを選べるが、ライスは文字通りインディカ米である。インドは中国に次いで世界第2位のコメ消費国であり、年間約1億tも消費している。
◇ ◇
会食した業務用米専門店の経営者の狙いとは、急増するインド料理店にインド料理に合ったコメを納入するということ。こうした思いに至ったのには伏線がある。この業務用米専門店はルート販売に特化していたこともあって、そのエリアは実に幅広く、納入先は小規模の外食チェーン店から個人経営の外食店や弁当店など1000店にもなる。配送に出かけるたびに各地でタイ料理店など東南アジア系の店舗が次々にオープンしているのが目につき、こうした店舗に新規に営業をかけてみた。それまで国産米しか扱っていなかったが、そうした東南アジア系の店は「長粒種」を求めていることが分かり、タイ産長粒種を扱い始めた。
それが2年前で、その時、これほど外国人が増えているのだからネットでタイ産長粒種を販売してみたら売れるのではないかと思い立ち実際にやってみた。やってみたところ意外なことが分かった。それは日本人からの注文が多いことで、はじめた当初は「パサパサしておいしくない」というクレームもあった。そこでタイ米の調理法として「炊飯器でお米を炊く場合の水分量は30%増しぐらいにしていただくのがおすすめですが、お好みにより調整をお願いします。おすすめなのは『湯取り方』で、パスタを茹でる感覚で大量の沸騰したおゆでシンがなくなるまで茹で(時々かき混ぜながら約10分)、一度ザルにあげ、お湯を捨てた鍋にザルを戻し、蓋をして約5分蒸らしたら出来上がりです」といった文言を商品案内に添付した結果クレームも減り、現在、ネット販売会社に1回の納品で5kg精米を2t納めるまでになっている。この経営者が幸運だったのは、以前はもっぱら酒類の販売を手掛けており、コメの知識がなく、平成5年の大凶作に伴う緊急輸入でタイ米が輸入されていた際、タイ米がハトのエサになっていたということなど知らなかったからである。
もう一つは飲料関係者から「日本人の食は東南アジア化し始めている」という話を聞いたからである。いま、この経営者が考えていることはインド人が最も高く評価する自国産のバスマティライスをインド料理店に売り込めば買ってくれるのではないかということで、そのためにインドに拠点のある商社にバスマティライスの輸入を依頼したのである。
本コラムの記事一覧は下記リンクよりご覧下さい。
(株)米穀新聞社記者・熊野孝文氏のコラム【米マーケット情報】
重要な記事
最新の記事
-
「良き仲間」恵まれ感謝 「苦楽共に」経験が肥やし 元島根県農協中央会会長 萬代宣雄氏(2)【プレミアムトーク・人生一路】2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
-
アメリカ・バースト【小松泰信・地方の眼力】2025年4月30日
-
【人事異動】農水省(5月1日付)2025年4月30日
-
コメ卸は備蓄米で儲け過ぎなのか?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年4月30日
-
米価格 5kg4220円 前週比プラス0.1%2025年4月30日
-
【農業倉庫保管管理強化月間にあたり】カビ防止対策徹底を 農業倉庫基金理事長 栗原竜也氏2025年4月30日
-
米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
-
【JA人事】JAクレイン(山梨県)新組合長に藤波聡氏2025年4月30日
-
【'25新組合長に聞く】JA新潟市(新潟) 長谷川富明氏(4/19就任) 生産者も消費者も納得できる米価に2025年4月30日
-
備蓄米 第3回は10万t放出 落札率99%2025年4月30日
-
「美杉清流米」の田植え体験で生産者と消費者をつなぐ JA全農みえ2025年4月30日
-
東北電力とトランジション・ローンの契約締結 農林中金2025年4月30日
-
大阪万博「ウガンダ」パビリオンでバイオスティミュラント資材「スキーポン」紹介 米カリフォルニアで大規模実証試験も開始 アクプランタ2025年4月30日
-
農地マップやほ場管理に最適な後付け農機専用高機能ガイダンスシステムを販売 FAG2025年4月30日
-
鳥インフル 米デラウェア州など3州からの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年4月30日
-
埼玉県幸手市で紙マルチ田植機の実演研修会 有機米栽培で地産ブランド強化へ 三菱マヒンドラ農機2025年4月30日
-
国内生産拠点で購入する電力 実質再生可能エネルギー由来に100%切り替え 森永乳業2025年4月30日
-
外食需要は堅調も、物価高騰で消費の選別進む 外食産業市場動向調査3月度 日本フードサービス協会2025年4月30日