【2025国際協同組合年】情報を共有 協同の力で国際協力 連続シンポスタート2025年5月2日
2025国際協同組合年全国実行委員会は「協同がよりよい社会を築く~連続シンポジウム」の開催を企画し、4月11日に家の光会館コンベンションホールで第1回「協同組合と国際協力」を開いた。会場には51人が参加、191人がオンラインで視聴した。
小林氏(左)と大島氏
ともに学ぶ関係へ
シンポジウムでは(一財)アジア農協振興機関(IDACA)の小林寛史常務がJAグループの国際協力と今後の課題を話した。
IDACAは全中の荷見安初代会長のリーダーシップで設立された。当時、荷見会長には「農業は各地の自然条件の違いで事情を異にするため、近接した組合が相互に協力することが絶対に必要」との思いがあり、アジアの農協組織が協力して各国の農業、農村を発展させていこうと1963年に設立、海外の農協人材の育成研修や、開発協力などを行ってきた。
これまでに世界の135か国から7000人近くがIDACAの研修を受けた。研修ではJAなどの現場で学び、帰国後のアクションプランを作成する。さらに研修生のアクションプランの実践をオンライン研修などでフォローしている。小林氏は「IDACAの卒業生は日本のことを知り、語ることができる貴重な人材。JAグループの共有財産」と話した。
一方、60年を経て時代の変化とともに国際協力のあり方も変わるべきだと提起した。
その一つが日本の地位の変化。日本は長く世界最大の農産物純輸入国だったが、今や中国にとってかわり、また世界の穀物市場で中国やインドの影響力は桁違いに大きい。たとえば、日本は小麦を500万t程度輸入しているが、中国の生産量は1億3400万t、消費量は1億5000万t、インドは生産量1億t、消費量1億tと巨大マーケットであり日本の存在感は小さい。小林氏は「世界最大の農産物純輸入国というアイデンティティにいまだ縛られていないか。アジアでの日本一強時代は終わったがその自覚に乏しいのでは」と指摘した。
一方、IDACAと国際機関との共同調査結果をみると、アジア・アフリカの農協の関心はスマート農業、デジタル化などへの期待が高いという。とくにDX(デジタルトランスフォーメーション)を検討したいとする国は多く、導入目的を技術革新か、農業者の経営力向上かなど明確にした議論が必要ではあるものの、日本も含め「今後、世界の農協運動の共通アジェンダとなり得る」と話した。
また、注目される最近の動きとしてインドを挙げた。2024年のICA(国際協同組合同盟)ニューデリー大会でモディ首相が「フカル・セ・サムリディ」という考え方を強調した。これはインドの経済発展や農村の発展と自立を協同組合が担うという考え方で協同組合省を設置したという。インドの成長戦略だが、協同組合の価値と矛盾しない戦略であり、インドでの今後の展開と、さらにはこの概念のグローバルスタンダード化も期待されている。
こうした状況を踏まえると、アジア・アフリカは世界の成長センターであり、各国の協同組合の役割にも期待が高まっている。日本の国際協力も一方的に教える関係ではなく、「情報を共有し、ともに考える関係」への再構築が求められていると小林氏は提起した。
シンポジウムではJICA(独立行政法人国際協力機構)経済開発部の大島歩次長が「小規模農家向け市場志向型農業振興」の取り組みを紹介した。これは農家自身が市場調査を行い、「作ってから売り先を探す」から「売れるものを作る」へ意識と行動を変えていくことを支援するプログラム。これまでは農業普及員による技術指導が支援の中心だったが、農家自ら市場関係者と会って価格だけでなく求められている農産品とその品質、量などを知ることを重視する。市場調査をもとに農家グループが民主的に栽培品目を選定して生産するという。
2006年からケニアで始まったプログラムで農家の所得が大幅に増加したことから現在60か国以上で展開されている。
大島氏はアジア・アフリカ地域では農村も含めた経済発展で人材が育っていると指摘。「教えるというより、先方とともに学び合うことも重要になっている」と話した。
2025国際協同組合年全国実行委員会は連続シンポジウム・座談会を計9回開催する。日本社会が抱える課題を起点として、協同組合の実践や課題解決に向けた貢献を明らかするとともに、今後、努力すべき方向を議論する。
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