【2025国際協同組合年】SDGsと協同組合 連続シンポジウム第4回2025年7月10日
2025国際協同組合年全国実行委員会は7月5日、第4回シンポジウム「SDGsと協同組合」を東京国際フォーラムを会場に開き、オンラインでも配信した。
SDGsと協同組合をテーマにした第4回シンポジウム
SDGs達成に赤信号
SDGs市民社会ネットワーク共同代表理事の大橋正明恵泉女学園大名誉教授は、国連のグテーレス事務総長は2030年に向けて「飢餓をゼロに」、「貧困をなくそう」など17の目標を掲げるSDGs(持続可能な開発目標)の進捗状況は17%で「落第点」と表明したことを紹介した。達成に赤信号が灯っている理由として、トランプが再び大統領となった米国がSDGsを拒否するといった国連を中心とした多国間主義の揺らぎや、そもそも法的拘束力がない目標であることなどを挙げた。
しかし、世界の持続可能性が失われると、途上国の弱者の生存が危機に瀕するだけでなく、いずれ自分たちにも影響が及ぶとして「市民社会は政府や国際社会がSDGs達成に向けて取り組むよう声を挙げていく必要がある」と強調した。また、市民社会の中核的な一員が協同組合であるとして「協同」をキーワードに「他者をどこまで広げ、一緒になって社会を変えるかが大事」などと呼びかけた。
全国社会福祉協議会の村木厚子会長は、行政依存型社会から市民自立型社会へ変わり、地域住民や多様な地域の主体が「わが事」としてつながることで暮らしと生きがいを作っていくことが求められていると話し、その際にNPOや協同組合が強みを生かすことに期待した。
とくに協同組合には、▽「助け合う」というコンセプトがある、▽「食」に強い、▽力を持った「組合員」がいる、▽学習する文化があるなど特性を持っていることを指摘した。そのうえで「他の組織を巻き込んでほしい。協同組合との連携は"掛け算"で力を発揮する」と期待した。
JCA(日本協同組合連携機構)の比嘉政浩専務は、2025国際協同組合年全国実行委は活動目標に「SDGsの達成に貢献する」を掲げたことを改めて紹介し、事業を通じた課題解決を図っている協同組合の取り組みを紹介した。
その一つがコープさっぽろのリサイクル事業で段ボール、宅配カタログ、廃食油などをリサクルし黒字化を達成している。この事業は組合員の願いから始まったもので、組合員の分別の徹底あるからこそ事業化できていると指摘した。
このように事業を通じた課題解決には、組合員のニーズや願いがスタートとなり、役職員がそれを受け止めることが必要だ。また、黒字化するには常勤役員と職員が効率的で効果的なビジネスモデルを検討し実現することも求められる。そしてリサイクル事業を実現したのは組合員よる徹底した分別であるように、組合員の参加、役割発揮が重要になる。
ただし、すべての組合員がアクティブではないため、学習と相互の意思疎通を通じて事業と活動の充実を図る必要性を指摘した。村木氏も指摘したように協同組合の「学習する文化」がSDGsへの貢献となる。
比嘉専務は、他の団体との関係について「困っているところに手を伸ばす」ことに共感して連携することの必要性を強調した。
シンポジウムでは慶應義塾大学院の落合航一郎氏がSDGsの取り組みの現状と日本の進捗状況などを報告し、日本生協連の新良貴泰夫氏が生協のSDGsの取り組みなどを紹介した。生協では消費者が起点となってアクションを起こしており、最近では流行語大賞のトップ10にもなった「手前どり」の取り組みがある。また、24年度に更新された行動指針では「バリューチェーン全体において人権尊重の取り組みを進めます」を盛り込んだという。
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