【2025国際協同組合年】ディーセントワークを協同の力で 連続シンポ第2回2025年5月19日
2025国際協同組合年全国実行委員会は5月15日、第2回シンポジウム「協同組合とディーセント・ワーク」をハイブリッドで開催。会場に56人、オンラインで155人が参加した。
協同組合のポテンシャルへの期待を語る高﨑真一ILO駐日代表。左は認定NPO法人抱樸の奥田知志理事長
日本の協同組合組織等で構成する2025国際協同組合年全国実行委員会は、SDGsに関わる社会的課題について協同組合がどのように取り組んできたのか、今後の課題は何かを明らかにする連続シンポジウムを開催している。第2回は「協同組合とディーセント・ワーク」をテーマに開催された。国際労働機関ILOがめざすディーセント・ワークは「働きがいのある人間らしい仕事」を意味する。
協同組合がCSV(共有価値の創造)の道標に
日本労働者協同組合連合会の中野理事務局長の開会あいさつ、趣旨説明を受け、ILO駐日代表の高﨑真一さん、生活困窮者自立支援全国ネットワーク代表理事・認定NPO法人抱樸理事長の奥田知志さんが講演した。
高﨑さんは、ILO初代事務局長アルベート・トーマはフランスの協同組合運動の主導者で賀川豊彦とも親交を深めたと「ILOと協同組合」の縁から話し始めた。ディーセント・ワークの実現には、仕事の創出、社会的保護の拡充、社会対話の推進と紛争解決、仕事における基本的人権の尊重と横断的目標としての男女平等が「戦略目標」になる。高﨑さんはハラスメントなど日本の課題にも言及しつつ「ビジネスが人権尊重に取り組む意義」を指摘し、協同組合がCSV(共有価値の創造)の道標になると説いた。
「就職祝いは炊飯器」
奥田さんは、出会った際は家族に炊事がなかった長女が、支援と出会って8年の歳月を経て就職した際、「就職祝い、何がいい?」との問いに「炊飯器ください」と答えたケースなど、北九州市で取り組む「希望のまちプロジェクト」の経験を印象深く紹介。その目的が①助けてと言えるまち、②まちを大きな家族に―家族機能の社会化、③まちが子どもを育てる―相続の社会化、にあると述べた。
事例報告をした(右から)労働者協同組合ワーカーズ・コレクティブ・キャリーの落合純子前理事長、ワーカーズコープ・センター事業団北海道事業本部札幌中央事業所・まちなかキッズサロンおおどりんこの
三宅皓(ひかる)さん、北海道労働金庫の槙田恵治地域共生推進室室長
配送、子育て支援、労金の事例とディーセント・ワーク
その後、3人が事例報告を行った。
市民連帯経済つながるかながわ理事で労働者協同組合ワーカーズ・コレクティブ・キャリー前理事長の落合純子さんは、生活クラブ生協の野菜配送受託から始まり地域に必要なものやサービスを非営利・市民事業化してきたキャリーで、多様なメンバーが増えたことに対応して共に働くための条件、環境整備を進めてきたことを紹介した。
ワーカーズコープ・センター事業団北海道事業本部 札幌中央事業所 まちなかキッズサロンおおどりんこの三宅皓(ひかる)さんは、都市部の子育てサロン(札幌市からの委託事業)の運営とともに、自身のワーカーズコープとの出会いも紹介。そして、気軽な話し合い、互いの尊重、提案の自由、力を合わせるといった点で協同労働がディーセント・ワークだとした。
北海道労働金庫・地域共生推進室室長の槙田恵治さんは、労働金庫が労働者のための銀行、協同組織の福祉金融機関として生まれ発展してきた軌跡をたどり、北海道内のさまざまな協同組合とネットワークを広げながらフードバンク、子ども食堂、北海学園大の学生たちとの現場視察などの取り組みを報告した。「意思あるお金をいかに地域のみなさんと連携して循環させるか」を考えている。
ディーセント・ワーク実現のために大切にしていることついて落合さんは「働きづらさを抱える人たちがいきいきと安心し差別なく、ある程度の収入を得て働けること」。三宅さんは「一人ひとりの声に耳を傾け、さまざまな背景に柔軟に対応する。自分の居場所がある」と答えた。
真摯な学び合いが信頼感に
「これから」について、落合さんは「社会に問題意識をもって、協同組合をツールに地域で活躍する人が増えたら素敵だな」。三宅さんは「労金との連携や協同組合間のネットワークで、活動が点ではなく線になった。協同労働を北海道から発信したい」と語った。心掛けていることについて槙田さんは「相手の団体からていねいに真摯に学ぶ。その積み重ねがお互いの信頼感を高めていく」と話した。
貧しさ・さびしさ・学のなさとの闘い
全体の締めくくりで、高﨑さんは「協同組合のポテンシャルに期待する。不安定な世界情勢だがあきらめたら終わり。地域で民間ビジネスとも連携し、交流を通じて解が見つかれば」と提唱した。奥田さんは「貧しさが戦争に行く人を作り、さびしさから国家による『大きな物語』にからめとられ、学のなさから(わが身へのそれも含め)暴力に走る。だからディーセント・ワークは貧しさ、さびしさ、学のなさに対する闘いであり反戦平和だ」と述べた。
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