(224)コロナで伸びた仕事・減った仕事【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2021年3月26日
世間では「ウィズ・コロナ」などという洒落た言い回しが良く聞かれますが、感染症はアパレルの流行とは異なります。首都圏や関西が緊急事態宣言で苦労していた頃、比較的感染者が少なかった東北が今や新規感染はピークの真っただ中にあります。
早いもので「コロナ危機」も2年目になります。少し振り返ってみました。あくまで私見です。
感覚的な話で申し訳ないが、「宝くじ」の結果を他人に話すのは、小額当選者が一番多いのではないだろうか。外れた人は言うのを嫌がるし、大金が当選した人は「タカリ」や「強盗」を恐れてより慎重になる。
それに近いことが世の中では良く起こる。例えば、今回の「コロナ危機」では昨年春からかなり長期にわたり「夜の街」や「飲食店」の話がメディアで流れた。直接的に影響が生じた以上、当然である。(一社)日本フードサービス協会が公表しているデータによれば、パブレストラン/居酒屋の売上高前年同月比は4月で8.6%、5月で10.0%というとんでもない数字である。
通常100万円の売上がある店舗が10万円前後の売上になれば、どのような名経営者でも手の打ちようがない。前年比9割減というのはまさに「想定外」だからだ。その後、秋口にかけてかなり改善したが、年末年始の感染急増で再び減少に陥っていることは既に各種メディアで報道されている。先日、久しぶりに仙台の歓楽街の近くを通る機会があったが閉店している店舗がかなり目立った。
だが、こうして「夜の街」や「飲食店」の苦境が連日のように伝えられている間、着々と業績を伸ばしている業界や企業もあるはずなのに、どうもそれらは余り表に出てこないし、報道が比較的少ないと感じるのはウィズ・コロナに慣れたせいか。
以前にも述べたがコロナで在宅勤務・テレワークが急拡大したことで、最初に思わぬ売上げ上昇が見込まれたのは、まず1山500円割れで投げ売りされていたマスクである。
また、パソコンおよびその周辺機器(ヘッドセット、マイクなど)などであり、この流れの中からは第2ディスプレイなどが以前よりも普及したのではないかと感じている。
さらに、自宅でパソコン作業を実施するために、パソコン台や、机、椅子、場合によっては自宅のリノベーションなどもテレワークを想定した形に急速に変化している。SNSに出てくるレンタル家具の広告もテレワークを念頭に置いたものが多い。ニーズか便乗かは判断が難しいがこれが商売というものであろう。
一方、閉店した飲食店の後に何が出来るのかと思ったら、セパレーションで区切り、換気設備を付けたワーキング・スペースができたりしている。1時間数百円でwifiだけ通しておけば十分というニーズがあちこちに存在するからだ。これでパソコンを抱えてカフェをいくつも回る必要がなくなるのはある意味助かる。
JRの駅中にできた個人用ワークボックスも当初は「誰が使う?」と思っていたが、最近は結構使用中の緑のランプがついている。近くの無料ベンチでヘッドセットをしたまま大声で通話をしている人がいれば、やはり中に入りたくなるものか。
さらに、なかなか盛り上がらなかったネット通販が品目によってはコロナ危機を機会に一気に伸びただけでなく、クリックのたびに実際にモノを動かす物流に携わる人の数も増えている。これは食品デリバリーも同じである。減る仕事があれば増える仕事があるということだ。農家の皆さんは、コロナで何が伸びたかをよく研究されると面白い。
最後に、会議である。これも遠隔ツールを使用した画面越しが急増している。移動時間がなく予定が組みやすい反面、1~2時、2~3時などと区切りの良い時間でばかり設定されると、参加者はトイレに行く時間すらないということにもなりかねない。自分の首を絞めることにならないようにしたいものだ。
* *
仙台にもようやく春の気配があちこちに出てきました。年度末のこの時期、妙な忙しさが続いていますが、コロナ2年目の新学期がもうすぐ始まります。「対面か遠隔か」ではなく、状況に応じてどちらにも対応できる柔軟性が教育現場にも求められています。恐らく皆さんの職場でもそうではないでしょうか。
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三石誠司・宮城大学教授のコラム【グローバルとローカル:世界は今】
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