(225)同級生たちからのメール【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2021年4月2日
ここ2~3日、久しぶりのメールがちらほら届きます。3月31日で定年を迎えた友人・知人からのものです。「そうか、そうなんだよな…」と思うことしきり。
厚生労働省の統計を見ると、第2次大戦終了後、1949年の出生数は270万人である。いわゆるベビー・ブームの頂点の年だ。その後、年間出生数は減少し、私達が産まれた1960年は161万人である。出生数は1960年代半ばから再び増加に転じ、1971~74年には200万人の大台を記録している。これが第2次ベビー・ブーム世代である。
1960年生まれは両方のベビー・ブーマーに挟まれたいわば谷間の世代である。物心ついた時にはいわゆる高度経済成長が始まり、毎日新しいモノが登場してきた。流石に筆者は「街頭テレビ」は知らないが、幼稚園に入る前だったか、近所の子供達で夕方になるとテレビのある家に集まり、ウルトラ・シリーズの最初の名作「ウルトラQ」を一緒に見ていた記憶がある。あのイントロの音楽はゾクゾクしたが画面は怖かった。
その後、しばらくして自宅でテレビを見ることになるが、早い時間の子供向け番組の多くは米国からの輸入品を日本で吹き替えたものであった。液晶テレビなど無く、ブラウン管テレビの端に小さく出ていた【カラー】という文字を、白黒テレビを見ながら羨ましく思ったものだ。ウルトラ警備隊が連絡用に使っていた腕時計型の画面付き無線機は今では普通に実用化されている。
現在、巷で話題の東京オリンピックは4歳の時のため曖昧な記憶しかないが、何となく覚えている。小学校から中学時代は日本でも歌謡曲(Jポップではない)と洋楽が流行った。「Let it be」など意味がわからず、上級生が口ずさむ歌詞が「エルピー」としか聞こえず何のことだかわからなかったし、それよりはライダー・スナックのカードを集めていた気がする。学生運動は上の世代の話であり、当時入学した高校にはかすかに痕跡が残っていたようだが連日プールで泳いでいた身には全く無縁であった。
大学入試は国立一期・二期制度が終わり、共通一次試験の最初の年だ。国公立が一校しか受験できず、数年後に前期・後期などの制度が登場した時には随分と損をした気分を味わったものだ。
現役で大学に入り、4年で卒業した同級生達の多くは60歳、約40年仕事をし、この3/31で定年を迎えた。筆者は同級生達から1年遅れて就職したが、当時は昭和の後期であり、今ではあり得ない様々な「慣行」が職場にも生きていた。詳細は別の機会にするが、初めて赴任した名古屋の職場で、隣席の同期女性が契約書を綴じるための「こより」を作っていたのには驚いた。
あの時代、食糧事務所からの払下大麦・小麦の入札に使う契約書は「こより綴じ」であり、ホチキスは重ねると傾くからダメだと聞いて卒倒しそうになった覚えがある。
職場に新しく入った数台のパソコンをめぐり座席取りが熾烈化したこともあったし、早朝出勤して海外からのFAX(筆者はテレックス世代ではない)を上司の回覧前に全て読みこなすなど、携帯で書類が確認できない時代にはそれなりの苦労もあった。
定年は当初55歳だったが途中で57歳になり、気が付いたら60歳に延長された。今の職場は65歳だが、世の中の流れは70歳か、そもそも定年制度そのものが廃止になるのかもしれない。
先日、2021年の出生者数は過去最低の87万人というニュースを見た。ピーク時から見れば、同級生の数が3分の1、私達の時代から比べても2分の1ということだ。単純に考えれば、小学校のクラスが半分以下ということでもある。コロナが無くてもイベントは大変な時代になる。絶対数の減少がじわじわと影響する。
さて、60歳まで仕事をしてきた同級生たち、そしてそれを支えてくれたご家族の方々には心から「お疲れ様」と言いたい。80年の春夏秋冬を20年ごとに分ければ、これからは冬になるが、冬には冬の楽しみ方をすればよい。親と学校から育ててもらった20年、社会に育ててもらった20年、そして社会に尽くす20年を経て、次の20年プラスアルファをどうするか、それは人それぞれである。
とりあえず、同級生の皆さん、本当に「お疲れ様!」。私ももう少し残務処理をしてから切り上げたいと存じます。
* *
このコラムが掲載される時は4月2日、新年度ですね。毎年のことですが、新入生や新入社員の眼は輝いています。気を引き締めて頑張りたいものです。
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三石誠司・宮城大学教授のコラム【グローバルとローカル:世界は今】
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