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2013.02.08 
相続・事業承継支援トップセミナーを開催 JA全中・JAまちづくり情報センター一覧へ

 第26回JA全国大会決議では、組合員の世代交代の波が迫っているなか、農地・資産の相続や管理・保全、遺言、事業承継などに対してJAが的確に対応する体制構築をめざすことを提起した。その体制づくりに全国で取り組むためJA全中とJAまちづくり情報センターは現場の実践に学び、その取り組みを共有しようと1月16日、東京都内で「相続・事業承継支援トップセミナー」を開催した。実践報告はJA東京むさしとJAあいち中央。先進事例に学び現場で実践しようとJA組合長や常勤役員ら100名が参加した。

「組合員のくらしと資産を守る」
JAの役割発揮を

「次代へつなぐ協同」の実現に向け資産管理事業の再構築が課題

◆迫りくる世代交代

相続・事業承継支援トップセミナー JA組合員の世代交代への取り組みの重要な柱として、第26回JA全国大会では「『組合員のくらしと資産を守る』観点から従来の資産管理事業を抜本的に見直すとともに、総合力によりこうしたニーズへの的確な対応が図られる体制を構築する」ことを盛り込んだ。その背景には迫りくる世代交代の波がある。
 トップセミナーでは事例報告に先立ちJA全中の馬場利彦参事が情勢報告と課題提起を行った。
 組合員の現状は「農協をつくり、まさに農協と農業を支えてきた第一世代」(馬場参事)が正組合員の4割を占め80歳以上が2割というものである。
JA全中・馬場利彦参事 一方、この第一世代は出資の3割以上、農地の約5割、貯金・共済も3割以上を占めており、まさにJAの事業・経営基盤の支えとなっている。そのため世代交代にともなってどう円滑に次世代に継承していくかは「JAの経営基盤にとっても差し迫った問題」(馬場参事)との認識が必要だ。
 とくに組合員世帯の特徴をみると、所有資産の大半は土地(農地)だ。とりわけ都市JAの例では84.2%と圧倒的で金融資産は10%にも満たない状況。この土地は組合員にとってはかけがえのない財産(資産)であると同時に、農地としての営農基盤であり、加えて組合員とJAを結びつける事業基盤でもある。そのためこの資産相続の「事前対策の成否が世代交代対策の成否を分ける鍵」となる。
 とくに農地を農地として次の世代に、しかも分散させないで引き継いでいくという対応も含めた事前の承継対策の実施が求められている。資産管理事業といえば都市的地域の問題だと捉えられがちだが、トップセミナーで報告したJAあいち中央の石川克則組合長の報告からは農地集約化を進め集落営農組織など担い手が育っている地域でも、組合員を取り巻く環境変化によってこの問題は避けて通れない問題であることが示された。

◆求められるJAの総合力

 こうしたなか、都市近郊も含め農村地域には、資産相続相談をきっかけにした銀行など競合他業態の攻勢も始まっている。しかし、それら他業態による相続対策が行われた結果、代々受け継いできた資産が散逸しJAとの関係も途絶することも懸念される。
 その意味でまさに世代交代を迎えた組合員と向き合うことが、次代につなぐ協同の実践のためにも不可欠。土地(農地)法制や税制に明るく地域に根ざしたJAが相続・事業承継支援を行うことは極めて意義が大きい、と馬場参事は強調した。
 実際に組合員への調査によってJAに対して相続対策に関わる事業へのニーズの高まりがJA運営の基本指針に反映されたことは、JA東京むさしの須藤正敏組合長の報告でも示された。
 その事業構築をどうイメージするか?
 JA全中が提起するのは「相続・事業承継支援」の基本は「組合員世帯のライフプラン設計」を行うJAの相談活動であるということ。そのライフプランを実現するための「手段」として既存の資産管理事業を再構築することが求められる。
 具体的なサポートとしては確定申告対策といったフロー対策と相続・事業継承対策というストック対策を両輪で展開する体制を築く。
 確定申告対策では記帳代行や青色申告決算書作成支援などにこれまで以上に取り組むと同時に、相続・事業承継対策では、セミナーや個別相談を通じて、土地をどう活用していくか、あるいは遺言書の作成、管理などまでが事業対象となる。

◆営農継続の視点も重要

 このうち土地(農地)の利用については、これまでは非農業的土地利用として宅地化による売却、賃貸住宅等の建設など、まさに経済事業的な資産管理事業として取り組まれてきたが、今後はそれだけにとどまらず農業的な利用を承継していくことも課題になる。
JC総研・櫻井勇客員研究員 JC総研の櫻井勇客員研究員は講演で最近の都市計画のあり方や税制改正の問題点を解説し、都市的地域でも「宅地はこれ以上不要」という流れを指摘した。人口減少社会のなかで宅地ニーズがこれまでと同じように増えていくと見込まれないとすれば、営農継続の観点から、賃借か、あるいは市民農園の整備といった農地の多目的利用も求められる。
 既存の資産管理事業の再構築には、このように広く環境変化も見据えることが必要になりそうだ。さらに馬場参事はそのための体制づくりとして中央会・連合会による連携とサポート体制も課題としていると話した。
 また、JA段階では大会決議で「支店を核に」と決議した運営をめざし、この問題でも支店に総合相談体制を構築することが課題となる。JAあいち中央からは「資産相談員」と「くらしの相談員」の両輪で支店を核にして「組合員との距離を縮める」JAづくりをめざすことも報告された。
 櫻井勇研究員は「相続・事業承継支援の問題は、役職員が自分の事業基盤そのものだという意識を持つ必要がある」と強調した。


主催者あいさつ
JAまちづくり情報センター会長・JA愛知中央会
倉内巖会長


先進事例に学び実践の促進を

JAまちづくり情報センター会長・JA愛知中央会・倉内巖会長 JAグループは第26回JA全国大会で「次代につなぐ協同〜協同組合の力で農業と地域を豊かに〜」をメインテーマに掲げ、その実践に向け、持続可能な農業の実現、豊かで暮らしやすい地域社会の実現、JA経営基盤の強化、国民理解の醸成に取り組むことを決議した。
 足下の情勢では組合員の世代交代が急速に進んでいる。この大会決議では「次代につなぐ協同」を実践するための具体策として、「組合員のくらしと資産を守る」観点から、従来の資産管理事業を抜本的に見直し、組合員の相続や資産承継を支援するための総合的な取り組みへと転換していくことを決議した。 全国で取り組み機運を高めるため先進事例の報告や有識者から得られる知見を共有し各JAでの実践の足がかりとしていただきたい。

○実践報告1
JA東京むさし
須藤正敏代表理事組合長


「資産管理」と「農業振興」はJAの両輪

●アンケートで組合員と向き合う

JA東京むさし・須藤正敏代表理事組合長 JA東京むさしは平成10年に三鷹市、武蔵野市、小金井市、小平市、国分寺市のJAが合併して誕生した。総面積は7050haで農地は673ha。総人口は73万人、農業人口は1800人あまりだから、いかに地域住民にJAを理解してもらうかがテーマとなっている。
 平成19年に策定した長期基本計画に基づいて事業展開。計画策定にあたってはシンクタンクなどに任せずオリジナルアンケートを作成し組合員への意向調査を実施。その結果、JAへの要望は健全経営、営農支援、職員のレベルアップが上位を占め、さらに今後強化すべき事業ではトップが資産管理事業、さらに農業経営指導も上位に入った。
 つまり、組合員の声は資産管理と農業経営指導を強化してほしいということ。そこで私たちは農業振興と資産管理は「JA事業の車の両輪」であると考えた。東京で農業を守るためには資産管理事業が不可欠だということでもある。
 農業振興の具体的な取り組みは(1)営農指導50人体制で農業サポート、(2)ファーマーズマーケットや学校給食など地産地消、(3)正職員が農作業をサポートする営農支援事業、(4)農業支援資金融資の4つを柱にしている。

●農業振興は地産地消で

 地産地消による売上げ増を図るためポイント制度も導入したほか、出荷者に売上げ状況を伝えるメール配信も行っている。商品説明ができるよう役員も含め食育ソムリエ資格取得も進めてきた。
 目標は5店舗で100万人来店、売上げ10億円。管内の農業生産額は約33億円のうち3分の1をJAの直売所で販売、それによって終身営農と農地維持を図っていきたい。
 農作業をJAが請け負う営農支援事業は23年度には80軒の農家から依頼があり157日の稼働実績となった。JAに対する信頼感を高める事業として考えている。

●組合員資産の喪失はJA基盤の喪失

 資産管理事業につなげるには確定申告相談と記帳代行サービスも重要だ。記帳代行サービスは8年前のスタート時には90件だったが現在では230件以上。 資産相続のための事前資産分析の利用者も増えている。事前分析を依頼した組合員は実際に相続が発生したときには100%JAに相談と手続きを依頼してくる。
 また、「争族」を防ぎ、後継者にスムーズに相続するための遺言信託も重要な取り組みになっている。
 資産管理事業を円滑に進めるための組合員台帳システムの整備も実施している。自主申告だが家族構成や保有資産などの情報を集積、現在はこれをJAのサーバーで管理し更新もするようにしている。
 農地保全と資産管理を支える融資も重要と考え、相続税納税資金融資も創設した。一方、賃貸住宅も建設から年月が経つと競争力が落ちるため、JAでは補改修資金のためのリニューアルローンや、正組合員やその次世代後継者や兄弟も対象に含めた自己住宅資金のための正組合員住宅ローンも創設した。
 次世代対策として結婚相談センターにも力を入れている。後継者に配偶者がなければ存続も難しくなるからだ。平成13年から現在までに15組が成婚した。職員が専任であたっている。
 こうした事業を展開するには人材育成が重要になる。専門的知識習得のため奨励金を給付する資格取得奨励制度も導入している。同時に組合員への説明会には外部講師ではなく資産管理担当職員が行うようにしている。
 組合員の資産の喪失はJAの事業基盤の喪失である、と考えたい。


○実践報告2
JAあいち中央
石川克則代表理事組合長

JAは組合員のくらしの拠点
全支店に資産相談員を配置

●タテ割事業からいかに脱却するか

JAあいち中央・石川克則代表理事組合長 組合員は4万1700人。正組合員の平均年齢は男性68.8歳、女性が74.2歳という高齢化が現状だ。とくに女性組合員のほうが高齢化しているのは、いわゆる第一世代の父親が亡くなっても息子ではなく、母親に相続されている傾向にあるのが理由と思われた。ここは今後の相続・事業承継を考えるうえで注目する必要があると考えている。
 資産管理事業は資産相談部でおもな業務を行っているほか、金融部にも金融資産相談センターがあり、子会社でも行っている。
 資産相談員を設置したきっかけは、JAの事業がタテ割りになっていて組合員・利用者への対応が単独事業の範囲内にとどまっており、これを打開しなければならないという問題意識だった。また70歳以上の正組合員が約45%に達し相続相談機能の強化が急務になってきていた。
 その一方で職員からは「相談があったときに専門部署にスムーズにつなぐことができたら組合員から感謝された」、「葬式に参列して困ったことがあったら何でもJAへ、と声をかけることでJAに相談が寄せられた」といった声もあり、これが「組合員の目線に立つ」ということだと整理した。

●資産相談員制度の狙い

 ただし、資産相談部の職員は32名。この職員だけではすべて対応ができないことから平成21年に支店に資産相談員を設置することにした。現在、45名を資産相談員として任命しているが、メンバーは支店長、次長、渉外担当課長などである。
 この制度を導入する契機には、JAが進めてきた支店再編もある。合併当初、75支店だったのが現在は29支店。半分以下に減らしたわけだが、JAが掲げる基本理念のひとつ、JAは「くらしの拠点」を実現するため支店を中心とした相談機能をしっかり発揮することを課題としてきた。
 その課題解決の糸口は支店活動を活性化するしかないと考え、組織活動、渉外活動にしっかり取り組もうと考えてきた。

●資産管理事業は信頼度のバロメーター

 資産相談員制度もその取り組みのひとつであるが、それも資産管理事業はJAに対する信頼度のバロメーターだと考えているからだ。 こうした資産管理に関わる分野には今、不動産業者や信託銀行なども積極的に進出している。そのなかでJAが守らなければならないことは3点あると考えている。
 1点めは業者とJAが異なる点として業者の多くは自分たちの利益を優先して考えるということ。ここはJAは違うときちんと整理をしておかなければならない。JAが利益を優先するようなスタンスをとればJAは農家組合員からの信頼をなくす。たとえば市街化調整区域内農地を利益が出るからと転用するようなことをやればJAは何をやっているのか、ということになる。
 2点めは、やはりJAは相談業務からこの事業に取り組むことがいちばん大事だということ。不動産仲介だけの事業にしないことである。
 3点めはJAは組織活動が基本だということ。資産相談部の職員だけでは対応に限界がある。こうしたなかでは支店を中心にした組合員の資産管理のための相談会などの組織をきちんとつくっていくべきでそれが事業の継続につながると思う。
 JAの基本理念である「くらしの拠点」という面から支店運営を整理すると、支店には「資産相談員」と「くらしの相談員」を配置しているということにある。くらしの相談員は分かりやすくいえば生活指導員だ。くらしの拠点となるために、支店では資産運用セミナーや組合員学習会、食農教育も行っているほか、全支店での「支店まつり」、「支店たより」も発行している。
 やはり組合員がJAに来てもらうことが大事でそれが事業の発展につながると考えている。今後もくらしの拠点づくりをめざして支店の「資産相談員」と「くらしの相談員」を中心に、さらに生活文化活動にもしっかり取り組んでいきたい。

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