JAの地域貢献を探る 高齢者の生活支援を JA共済総研がセミナー2023年3月6日
JA共済総研は3月3日、協同組合による地域貢献のあり方について、オンラインによるセミナーを開いた。特にJAの生活支援活動を通じ、どのように地域にアプローチできるかを探った。長野県のJAあづみと北海道のJAはまなかの2JAの取り組み報告をもとに意見交換した。
協同組合の地域支援の在り方を探ったセミナー
信用共済、営農経済などと並んで生活活動はJAの重要な事業の一つであり、昭和36(1961)年の農協大会で「生活改善活動の積極化」が決議され、同45(1970)年の第12回農協大会では生活基本構想が採択された。この構想にそって生活の防衛・向上、女性のエンパワーメントなどに取り組んできたが、農村社会や価値観の変化に追いつかず、生活活動は他の事業に比べ取り残されてきた。
しかし、高齢化が急ピッチで進み、とくに農村では地域の人々の生活や産業のインフラを支える役割が協同組織であるJAに求められるようになった。いま地域ではRMO(地域運営組織)など、多様な組織との連携、自助・互助による地域づくりの必要性が高まっている。
セミナーで報告したJAあづみNPO法人「JAあづみくらしの助け合いネットワークあんしん」は、誰もが避けられない「生きていく不安」「老いていく不安」「暮らしの不安」を安心に変えていく「安心の里づくり」に20年近く取り組んできた。
同法人は、①元気なうちはいきがいをつくろう、②援助を受けながら自分のことができる暮らし、③困ったときはお互いさまの暮らし、④介護保険制度としての信頼のサービスの4つの目標を掲げる。
このため誰でも参加できる「生き活き塾」を開設。参加者は塾を通じて何でもよい、やってみながら自分が目指すものを見つけて生きがいづくりにつなげる。塾の修了生はすでに1000人を超える。この活動の中から、野菜づくりや直売所開設、朗読ボランティア、童謡と唱歌の会、さらには菜の花栽培し、ナタネ油を学校給食へプレゼントするなど、さまざまな活動が広がった。
同法人の池田陽子理事長は「私たちが活動の目標に掲げた〝なだらかな老い〟を重ねることは、活動に参加することで、介護予防につながると積極的に考え、生きがいづくり、健康づくり・仲間づくり・地域の文化づくりを通じ、〝あんしん〟して暮らせる里をつくりたい」と抱負を語る。
JAはまなかは高齢者を対象に元気に暮らせる地域づくりの一つとして、デイサロンを開設し15年間続けている。管内の浜中町は全国有数の酪農地帯であり、広い原野に点在する住宅が点在しており、車の運転ができない高齢者は自由に外出できない。
このため同居する高齢者の通院は一日がかりとなり、日々の酪農業に追われる家族の負担が大きい。JAはまなかデイサロンはこうした家族の負担を軽くするため平成18(2006)年開設した。
サロンはJA本店の1階にあり、週に1度開催。朝、送迎バスが各牧場を回って利用者を集め、JA店舗での買い物や診療所での受診、美容室に行ったり、郵便局や役場での用足ししたり、おしゃべりや体操、ゲームなど個々で自由に過ごすことができる。
JAの惣菜店舗だけでなく、地元の運送会社による送迎、看護師によるキャンナス(介護ボランティア)など、地域全体でデイサロンを支えている。理学博士で同サロンを運営するキャンナス釧路代表の竹内美紀さんは「これまで酪農を支えてきた高齢者にとって居心地がよく、家族によっても安らげる場となるようにして、酪農が末永く反映することをめざしたい」と話した。
なお、セミナーでは摂南大学の北川太一教授が、1980年のICA(国際協同組合同盟)大会におけるレイロドー報告の4つの優先分野を紹介するなかで、第2の「生産的労働のための協同組合」に触れ、労働者協同組合(ワーカーズ)に地域による、さまざまな協同活動による自助・互助・近所・共助・控除を紡ぐ協同のネットワーク構築の必要性を強調した。
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