【どうするTPP 農業改革(下)】地域の協同を守る政策を TPP再交渉阻止へ 山田俊男参議院議員2016年10月25日
山田俊男参議院議員
聞き手:小松泰信岡山大大学院教授
◆現場から政策提案を
小松 この状況のなかでJAグループはTPP対策をはじめ農政について全国組織は話し合い路線を強調しています。それは組合員の期待に応えているのかどうか。闘う路線であるべきとは言いませんが、人々が集まって怒りや反対意思の表明を声を大にして、まさに見える化することは重要な権利です。 山田 JAグループとして必要なのは国民的理解だと考え国民運動を展開しようとしてきたと思います。自給率向上もWTO、TPPもその考えで進めてきたと思います。
しかし、農協改革が打ち出されて農協攻撃が激しくなると、なかなか正しい理解を広げられず農協改革ではわれわれは負けました。
その背景にあったのは、安倍総理の「既得権益の分厚い岩盤を打ち破ります」、「私の鋭い槍にかなう岩盤はありません」というダボス会議などでの発言でした。世界にも約束したということにもなって、結局、中央会が農協法の世界からなくなってしまった。
この経緯をみると、集まって主張しているだけでは成果を生まなかったという反省はあります。非常に悩んでおられると思います。
小松 協同組合はやはり運動性を考えるべきだと思います。
山田 自らの要求はあるわけですから、より効果的な方法をもっと深刻に詰めなければいけないと思います。
7月の参院選は農政連の推薦候補は上位で当選できましたが、県によっては十分に取り組めなかったという実態もありました。TPPに対する反発もあったと思います。
小松 私は、TPPに反対しているJAに対しては厳しい農協改革を迫り、さらに安保法案では自ら違憲だと言っている証人を国会に呼んだにもかかわらず強行採決する自民党から、なぜ立候補するかと唖然としました。
山田 そこは見解の相違です。やはり政権与党にいることがTPPについても一定の歯止めや修正につながっていると思います。合意後の経営安定対策や予算確保なども野党では力になりません。与党のなかでしっかり発言をしていくことが重要です。
小松 私は全青協のポリシーブック活動に注目しています。自分たちはここまでやっている、政治はこれをやってほしいという政策提案です。本当はJAとして必要な活動ではないかと思います。
山田 大賛成です。ポリシーブックをしっかりつくるということで議論し、そして自分たちの要求を固めて与野党問わず議員に働きかけ、政策を提起し、若い担い手の主張として国民全体に伝えることは非常に大切だと思います。
◆与党内で可能性追求
小松 ところで安倍首相のここが許せないという点はどこでしょうか。
山田 納得のいかないところはあります。野党時代に同僚議員とまとめた第1次産業を国づくりの基本にすえる「まっとうな日本をつくる」という私たちの提言に対して「私の瑞穂の国の資本主義と同じ考え。賛成です」と言われた。ところがTPPに反対するJAグループが許せなかったのか、「既得権益の岩盤を打ち破る」という動きになってしまったのは残念でした。
生産資材の問題でも全農やJAの攻撃になってしまっている。17日の衆院TPP特別委員会で小泉進次郎委員の質問に「時代の要請に応え全農も新たな組織に生まれ変わるつもりでがんばっていただきたい」との答弁でした。もちろん改革は進めなければなりませんが、これまでの全農やJAの取り組みをまったく評価しないような言い方になっています。
世界的な景気低迷のなかで、金融・財政政策の改革と成長戦略が必要だということで、遅れている農業と農協に成長と競争を求めるということになっている。農業は成長と競争で力強いものにできるのか、家族農業や地域の協同の取り組みを壊してはなりません。
小松 今後、どうされますか。
山田 地域における農業の実態を十分承知し、家族農業や協同の取り組みが大事だということを承知している議員の仲間が多くいます。与党のなかで精一杯可能性のあることを詰めてみようと考えています。
【インタビューを終えて】
TPP、食料自給率、安定した経営所得安定制度への回答には、不満が残った。権勢を欲しいままにする首相や小泉氏がつくる流れの中で、多くを期待することは酷なのだろう。このことは、グループとして政治への関わり方を真正面から考えねばならないことを意味している。"家族農業や地域の協同の取り組みを壊してはなりません"との思いを胸に、自民党議員としての晩節を汚す覚悟での一暴れを期待したいのだが、いかがであろうか。
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