米の「民間輸入」急増 25年は6万トン超か 輸入依存には危うさ2025年4月30日
米の不足感と小売価格高騰を受け、主食用米の民間輸入が急増、25年度は6万トンを超えようとしている。ただ、主要輸出国の一つ、米国では国内消費も堅調で、これ以上の輸出余力は乏しいとの見方もある。財務省・財政審は「輸入米の機動的な活用」を打ち出すが、国産米の安定生産・安定供給こそ急務だ。
輸入米も並ぶスーパー店頭。カルローズは売り切れだった(東京都内)。
日本経済新聞(4月25日付)は1面トップで「コメ民間輸入20倍 今年度、米国産が過半」「関税上乗せでも割安」と報じた。記事によると、2025年度の主食用米の輸入量は、兼松や神明など主要商社・米卸だけで4万トンを超え、24年度の20倍前後に達する見通しという。日経が取り上げた主要商社・米卸に話を聞くとともに、他の動きも取材すると、25年度の輸入は6万トンを超える可能性があることがわかった。
兼松は2万トン輸入
当初「年1万トン」を見込んでいた兼松は、外食や卸とすでに約1万トンが成約し、2万トンまで扱いを増やそうとしている。同社は「仕向け先は外食やスーパーなど小売だ。当社としては需要に合わせた分しか輸入していない。安定供給に寄与するためだ。価格高騰もあるが品不足が大きい。この状況下で(米を買う)選択肢を増やしている」と話す。
神明も輸入増、「需給は落ち着く」と見通し
神明は、夏までに輸入する2万トンのほとんどが成約済みで、仕向け先は業務用と家庭用とがほぼ半々。輸入増の理由については「国産米高騰や不足感もあるが、既存のお得意様には世界各国のさまざまなメニューの取り扱い、消費者のみなさまに喜んでもらえる提供をお考えの先様もおり、年々(輸入米の)取り扱いは増加傾向にあった」。米の需給状況については、出来秋まで毎月備蓄米を放出するという農水省の決定、対応によって「(令和)7年産端境期までの短期的な部分では(不足感は)解消に向かうのではないか」と見通す。
木徳神糧「安定供給のため」
24年、ミニマムアクセス(MA)のうちの主食用米枠で4000~5000トン仕入れていた木徳神糧は25年、民間輸入分も加え約1万トンを輸入する。同社は「実需の方の要望があり、安定供給のため輸入する。仕向け先には業務用も家庭用もある」とする。
ベトナム産米、2万トン輸入を予定
輸入が拡大されようとしているベトナム産ジャポニカ米
兼松、神明、木徳神糧とも米国からカルローズを輸入する。他方、ベトナムの食品流通大手タンロングループは25年、ベトナム産ジャポニカ米を2万トン、日本に輸出する予定だ。支援するきらぼし銀行は「スーパーだけでなく外食産業もベトナム産米に関心を寄せている」(海外事業部)とする。日経が報じた「主要商社・米卸」分にタンロン・グループからの輸入を足すと約6万トンとなる。
財政審「MA米の主食用米枠、広げよ」
こうした輸入増や国内の米不足感を背景に勢いを増すのが、安易な輸入拡大論だ。
財務省・財政制度等審議会委員の増田寛也氏(日本郵政社長)は、4月22日のBSフジ・プライムニュースで、「昨年来続く『令和の米騒動』の中で備蓄米にまで手を付けた。備蓄米を調整弁にするのなら、(計77万トンの)MA米の中の主食用10万トンの入札を前倒しし端境期に(実施)するとか、主食用米を10万トンより増やして需給の調整弁に使ってはどうか。国内で米が足りない......(需給が)タイトであれば、(10万トンの)枠を増やして市場に放出すればいい」と、財政審の提言内容を説明した。
米国産米、日本向け輸出には限界
アメリカ産米の輸出先は多岐にわたる
USDA「Rice Outlook」2025.4から新潟大・伊藤助教作成
輸入米はいつでも欲しいだけ買えるのだろうか。兼松は「作柄には上下があるが、今は問題なく入ってくる」という。「今」はそうでも、先々はどうか。米問題に詳しい新潟大学農学部の伊藤亮司助教は、こう解説する。
「アメリカの米の生産価格は、2024年8月~25年2月の加重平均で玄米1キロ87.2円(精米では96.9円)で、1キロ341円の関税を乗せても日本の国産米より安い。だが、アメリカで中短粒種は年302万トン生産されるが、56%は国内消費される。輸出の販路(国)も多様で、いきなり日本向けの輸出量が増加する余地は少ないのではないか」
カリフォルニア米は地下水頼みで、数年に一度、水不足から不作になることが知られる。第二次トランプ政権の登場は、貿易が外交(取引)のカードにされかねない危険を白日にさらした。国内の生産基盤を弱める副作用も考えず輸入米依存を高めようとする財政審のような考えは危うい。安定供給のためには、市場の過熱を冷ましつつ、国内生産基盤を強化することこそ求められている。
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