【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(1)2025年4月30日
食品の品質に対する消費者の関心は高まり、農業生産現場でもGAP(農業生産工程管理)の取得をはじめ食の安心・安全確保の取り組みが進められており、米麦を保管する農業倉庫にも自主的衛生管理が求められている。そうしたことなどから、JAグループと農業倉庫基金では、毎年4月15日から6月30日までを「農業倉庫保管管理強化月間」とし全国一斉に保管管理の強化に取り組んでいる。そこで、今回は福島県のJA夢みなみが岩瀬倉庫で行っている保管管理の取り組みを取材した。
計画的に安全荷受け
左から後藤さん、根本課長、永山課長、會田さん
農家の管理リスク回避
岩瀬倉庫1号・2号はJA夢みなみ岩瀬支店と同一敷地内にある。1号は1993年に稼働1号し収容力2000tでフレコンを、2号は2012年に稼働しており収容力1500tで紙袋を保管している。
岩瀬支店管内には1990年代に9つのミニライスセンターが建設され、そこから出荷される米を保管するために岩瀬倉庫1号が建設された。また、2号は東日本大震災で損壊した倉庫を集約する大型低温倉庫として建設された。
管内の米の生産はコシヒカリが4割強、天のつぶが2割強などとなっており、JAでは今後、単収の多い天のつぶの作付けを増やしていく方針だ。また、この地区は1980年代半ばから生産されているコシヒカリの特別栽培米「岩瀬清流米」の産地であり、岩瀬倉庫でも区分管理を行っている。
集荷のスタートは例年9月中旬。その時期に前年産米を保管している場合は出荷しやすい場所に寄せて新米の受入スペースを確保して荷受け体制をつくる。あわせて、組合員の出荷契約をもとに入庫計画も予め立てておく。
荷受け前に作成した「はい見取り図」に従って積み上げられたフレコン
JAでは、自ら米を乾燥調製して倉庫に持ち込む組合員に対する助成金の支出や、フレコンや紙袋を載せるパレットの貸し出しを行っており、この取り組みの結果、組合員から持ち込まれた米は、令和6年産で岩瀬支店における集荷量の4割強を占めている。
組合員自らが倉庫に
組合員自らが米を持ち込むことは、組合員自身にとってもメリットがある。地域内では高齢化が進み担い手への農地集積が進み、米の作付面積で100haを超える法人経営も生まれているが、依然、5~10haが中心で兼業農家も少なくない。
そのため土日など休日に収穫作業をする組合員も多いが、個人の倉庫では保管できる量に限りがある。自分で搬送できるのなら搬送してしまえば、保管の負担はなくなり、盗難防止にもなる。
この仕組みは、一見、組合員に負担を課すように思われるが、個人での保管負担を軽減し、リスクも回避する仕組みでもある。しかも助成金で支援し、荷受け日の指定もしていない。この取り組みもあり、令和6年産米は産地での集荷競争が激化する中、目標の8割を集荷できたという。
紙袋を保管している岩瀬倉庫2号
声掛けなど事故防止
米の搬入のピークは10月で、例年11月中旬に終了するが、JAでは他部署からの応援の職員と臨時雇用者で受け入れ対応している
搬入期間中はそれぞれの倉庫にフレコンと紙袋が倉庫内に順次積み上がっていく。岩瀬サブ営農センター指導担当の後藤克幸さんは「なによりもけがの防止が大切。朝礼で作業員に念を押します」と強調する。
倉庫内や前室に米が積み上げられていくと「見通しが悪くなる」。後藤さん自身もフォークリフトを運転して荷受け作業をするが、運転は基本のとおり見通しを確保できるバックで行っている。作業員に近寄らないよう声を掛けることは重要で、とくに米が積み上がった陰からの「出会い頭」でぶつかったりしないよう要注意だという。
ヘルメットと安全靴の着用は当然だが、それでも作業が立て込み、急いでトラックから荷降ろししようとする際に足や腰を痛めるということもある。「とくに天気が下り坂のときは、米を持ち込んで来られる組合員も気が急いてか、慌ただしくなります。集荷のピークともなれば私たちにも疲れが溜まってきていることを分かっておかなければなりません」と後藤さんは話す。つまり、荷受け作業が進むにつれ、事故などのリスクが高まっていくと考えておく必要があるということだ。
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