米高騰 根底には産地の弱体化 食糧部会で現場の声2025年7月31日
7月30日に開かれた食糧部会では生産者委員が中山間地域を含めた米産地から現場の厳しい実態を伝えたほか、食料生産だけはなく景観や国土維持に果たす農業の価値を見据えた政策を求める意見も出された。その一方、今後の水田政策は「意欲と能力のある担い手に支援を集中すべき」、「生産性向上による経済合理性を議論すべき」との主張もあった。立場や見解は異なっても、こうした意見はこれまでの部会でも出されてきた。しかし、大橋弘部会長は「我々の意見が政策立案のなかでどう生かされてきたか、実はあまり見た記憶はない」と苦言を呈し、食糧部会のあり方が改めて問われるかたちともなった。
山形川西産直センターの平田勝越社長は、店頭で5kg2000円での販売をめざした政府による随意契約米の放出について「役所は価格にはコミットしないと言っていた。市場介入には強い違和感があった」と話した。しかし、米価高騰で輸入米急増することには「どうしても我慢ができない」として、今回の随契米の販売は「生産者にとっても不健全な高値となったことへの介入というより、サーキットブレーカーが働いたと理解している」と話した。
そのうえで今回の米騒動には「産地の弱体化が根底にある」と指摘した。
米農家は努力で統計では30%コスト削減を実現しているが、一方、相対取引価格は50%引き下げられているなど「コストを下げても単価が下がり、米生産だけでは生活が成り立っていかない時代が長く続いた」として、健全な価格になれば再生産できることが24年産の米価高騰で示されたと話す。
そのために「実は生産調整をしっかりすることが、生産継続にうまく作用していたのではないか」と指摘し、今年度の作付意向で56万t増となっていることについて「出口戦略を定めないで需要を大きく超えた生産をしてしまうのは、自分たちだけでは需給調整ができないことを示したと思う。生産調整は生産者にとって悪ではない」とその重要性を強調すると同時に、米価下落時には「不健全な低米価に対してサーキットブレーカーが発動されるべき」とセーフティネットの必要性も説いた。
新潟県で米生産をするAGRIKOの小林涼子代表は現場では渇水に苦しみ「雨に任せる農業が通用しなくなっている。常態化した異常気象をリスクとして検討すべき」と述べた。また、今年産の主食用が増産傾向にあることは喜ばしいとしつつ「急落したら生産者の心が折れて離農が進むのではないか。そしてまた米不足になるのではないか」と懸念、米は日本の食文化の基盤であり文化でもあることから「安心して作れることと安心して食べられることが同じように守れる仕組みをつくってほしい」と訴えた。
岩手県雫石町のファーム菅久の菅原紋子常務は、父から「米づくりは地域と国土を守ること」と言われてきた。ただ、地域で高米価となっても「生産者が増えるわけではなくむしろ減っていく。農地をどう守っていくが政策の課題だ」と強調した。
山波農場の山波剛社長は、今回の米不足についてJAなど集荷業者へ出荷契約をしていたにも関わらず、出荷しなかったことについて「契約が履行されなかったことについて何もお咎めなしは疑問だ」と指摘した。また、需要に応じた生産をめざしてきたにも関わらず、販売価格を決めた随契米が市場に投入され「価格にメスを入れられ、いつの米を供給するには常にダブついた状態にしなければならないのか、周りの生産者は下落を心配している」などと現場の声を伝えた。
その一方で今後の米政策は「意欲と能力のある担い手に支援を集中すべき」(岩村有広経団連常務理事)、「転作助成と所得補償に頼らず、農地の大区画化、スマート農業などで生活者と生産者の経済合理性を追求すべき」(山田貴夫日清製粉社長)といった意見もあった。
大橋弘部会長は食糧部会はこれまで需給見通しの数値など基本指針をめぐって了承するだけでなく、こうした意見も出される場となっていたが「意見がどう施策に反映されたか見た記憶はない」として、今後は議論が積み上げる場となることも期待した。
重要な記事
最新の記事
-
【JA全農の若い力】家畜衛生研究所(1)養豚農家に寄り添い疾病を防ぐ クリニック北日本分室 菅沼彰大さん2025年9月16日
-
【石破首相退陣に思う】戦後80年の歴史認識 最後に示せ 社民党党首 福島みずほ参議院議員2025年9月16日
-
【今川直人・農協の核心】全中再興(6)2025年9月16日
-
国のプロパガンダで新米のスポット取引価格が反落?【熊野孝文・米マーケット情報】2025年9月16日
-
准組合員問題にどう向き合うか 11月15日に農協研究会開催 参加者を募集2025年9月16日
-
ファミリーマートと共同開発「メイトー×ニッポンエール 大分産和梨」新発売 JA全農2025年9月16日
-
「JA共済アプリ」が国際的デザイン賞「Red Dot Design Award2025」受賞 国内の共済団体・保険会社として初 JA共済連2025年9月16日
-
秋元真夏の「ゆるふわたいむ」北海道訓子府町で じゃがいもの新品種「ゆめいころ」を収穫 JAタウン2025年9月16日
-
山形県産「シャインマスカット」品評会出品商品を数量限定で予約販売 JAタウン2025年9月16日
-
公式キャラ「トゥンクトゥンク」が大阪万博「ミャクミャク」と初コラボ商品 国際園芸博覧会協会2025年9月16日
-
世界初 土壌団粒単位の微生物シングルセルゲノム解析に成功 農研機構2025年9月16日
-
「令和7年8月6日からの低気圧と前線による大雨に伴う災害」農業経営収入保険の支払い期限を延長(適用地域追加)NOSAI全国連2025年9月16日
-
農薬出荷数量は1.3%増、農薬出荷金額は3.8%増 2025年農薬年度7月末出荷実績 クロップライフジャパン2025年9月16日
-
林業の人手不足と腰痛課題解消へ 香川西部森林組合がアシストスーツを導入 イノフィス2025年9月16日
-
農業支援でネイチャーポジティブ サステナブルの成長領域を学ぶウェビナー開催2025年9月16日
-
生活協同組合ユーコープの宅配で無印良品の商品を供給開始 良品計画2025年9月16日
-
九州・沖縄の酪農の魅力を体感「らくのうマルシェ2025」博多で開催2025年9月16日
-
「アフガニスタン地震緊急支援募金」全店舗と宅配サービスで実施 コープデリ2025年9月16日
-
小学生がトラクタ遠隔操縦を体験 北大と共同でスマート農業体験イベント開催へ クボタ2025年9月16日
-
不在時のオートロックも玄関前まで配達「スマート置き配」開始 パルシステム千葉2025年9月16日