【農業倉庫保管管理強化月間特集】現地レポート:福島県JA夢みなみ岩瀬倉庫 主食用米確かな品質前面に(2)2025年4月30日
食品の品質に対する消費者の関心は高まり、農業生産現場でもGAP(農業生産工程管理)の取得をはじめ食の安心・安全確保の取り組みが進められており、米麦を保管する農業倉庫にも自主的衛生管理が求められている。そうしたことなどから、JAグループと農業倉庫基金では、毎年4月15日から6月30日までを「農業倉庫保管管理強化月間」とし全国一斉に保管管理の強化に取り組んでいる。そこで、今回は福島県のJA夢みなみが岩瀬倉庫で行っている保管管理の取り組みを取材した。
先を見て事故防止
農業倉庫の管理を担当する、すかがわ営農センターの永山賢一営農経済課長は集荷の期間中は、米検査の立ち会いも含めて農業倉庫を巡回する。その際、それぞれの作業現場で報告された、いわゆる「ヒヤリ・ハット」事例などを巡回先の作業担当者に伝えている。他の現場での身近な事例を全体で共有することで、事故防止意識を高めている。
清掃用具の整理整頓は基本
保管管理は外部委託
JAは2015年に岩瀬倉庫の保管管理を外部委託し、新米の搬入終了後は、委託先の運輸会社社員1名が専任担当者として常駐して保管管理を行っている。保管管理の外部委託はJA職員が減少する中、農業倉庫の専任者を確保するために決断した。委託先はJAが米の集出荷時の運送や倉庫での保管作業など委託している運輸会社で、會田誠さんが10年間担当している。
日々の作業は、入出庫や温湿度管理、倉庫内外の清掃が基本。ネズミや虫の侵入防止ための粘着テープの毎日の確認と取り替えも行う。
毎日の外気温や庫内の温湿度、穀温の計測と日誌への記入は当たり前のことだ。クーラーが故障し庫内温度が上昇することも考えられるため、温湿度の計測は品質管理に重要だという。
フレコンに設置された穀温計
また、出荷があるときは、必ず前日にはいを崩して前室に並べてトラックへの積み込み準備を終えておくという。「出荷当日に準備するのでは事故の恐れもある」と會田さん。指示どおりの出荷数量が用意できているか、銘柄や等級、外装袋などのチェックも済ませておく。
基本は會田さん一人で作業を行っているが、一人ではできない出庫作業となりそうな場合は、JA職員の応援を依頼する。「とにかく安全に作業することがいちばん大切ですから」と會田さんは力を込める。
永山営農経済課長は月に1回以上、岩瀬倉庫に出向き、保管されている米穀の品質調査、會田さんが付けている日誌の点検など保管状況の確認を行っている。
保管管理を外部委託したことについて営農部の根本直毅米穀課担当課長は「出庫作業などは毎日ある仕事ではなく、職員が兼務する体制になっていた。しかし、保管管理業務は片手間にできる業務ではなく専任者が確保できたことは品質管理にとってもメリットがあります」と話す。
一方、他の倉庫では外部委託はできていないため、JAとしては農業倉庫の担当となった職員には全農等が開催する研修会で保管管理に関する知識を習得してもらうことに力を入れているほか、9月上旬の米穀担当者会議で荷受け、保管管理作業の留意点等の周知を行っている。
毎年岩瀬倉庫で行う米の初検査式には常勤役員が出席する。また、最近では米の集荷、検査、保管業務は組合員の営農を支え、消費者に食料を安定して届けるJAの重要な役割であることを理解してもらうために、金融・共済部門も含めて若手職員が検査や米の積み降ろしなどを手伝う取り組みも進めているという。
今後も営農と食料の安定供給の重要なインフラとしての農業倉庫の役割発揮が期待される。
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