米の需要 見通しより37万t増か 農水省が推計2025年7月30日
農水省は7月30日に食糧部会を開き「米穀の需給及び価格の安定に関する基本指針」を諮問し、部会は了承した。
食糧法では7月末までに基本指針を定めることとしており、今回、「基本指針」は提示した。
しかし、核となる2023/24年の需要実績とそれにもとづく24/25年の需要見通しや需給見通しについては示さなかった。農水省によると毎年開かれる食糧部会で需給見通しなどが提示されなかったのは初めてだという。
代わりに資料として提出されたのが「現時点でわかっている値」。
このうち注目されるのが「24/25年の主食用米等の需給見通し」のうち、需要量で、この1年(24年7月から25年6月末)までの需要量が基本指針で見通した674万tではなく711万tと推計したことだ。
この数値はもともとの供給量832万tに6月末までに供給された政府備蓄米36万t(入札分31万t、随契分5万t)から、6月末の民間在庫量157万tを差し引いたもの。
基本指針で示された数値よりも、この1年間の需要量は37万tも増えたことになる。備蓄米の放出がその需要を補ったことになるが、この日の食糧部会では「にわかには信じられない」(平田勝越・山形川西産直センター社長)、「この2年、需要は増加したと感じるが、肌感覚でここまで増加しているかと思う」(澁谷梨絵・シブヤ代表取締役)などとまどいの声も出された。
神明ホールディングスの藤尾益雄社長は前年も需要見通しより24万t多い705万tが結果として実績だったことを指摘し「2年で60万tの誤差がある」として、インバウンドや健康志向からの米回帰、さらに精米の歩留まりも「需給にインパクトがある」として、これらを分析し今後の需要実績や需給見通しを作成すべきだと主張した。
農水省は今回、大手卸業者、地方卸売業者、米穀店など43事業者から2020年産から24年産の精米歩留まりを調査した。それによると24年産米の精米歩留まりは89.2%で、この影響で必要な精米供給量は玄米にして6万t増となると推計している。
このため需要が上振れた37万tのうち、6万tは精米歩留まりの影響と考えられる。残る31万tがどのような影響によるものか、農水省は分析するとしている。食糧部会ではこれまで米の消費拡大策を求めるなど、米の消費増は評価するものの「本当に(米消費が)戻ったのか、ムードに乗ったものか心配。ずっと食べてもらう努力が必要」(宮島香澄日本テレビ解説委員)と慎重な分析を求める意見もあった。
また、農水省が示した「現時点でわかっている値」のうち、「25/26年の主食用米等の需給見通し」では、2025年産米の生産量を6月末時点の作付意向調査結果をもとに前年より56万t多い、735万tとした。その結果、主食用供給量は892万tの見込みとなっている。さらに随意契約による政府備蓄米の売渡しも25万t予定されている。
こうしたなか、今回の基本指針では、備蓄米の買い戻しについて従来の説明どおり、「買い戻しの環境が整った場合には、備蓄水準の回復に向けて計画的に行う」ことを盛り込んだ。時期は明示していないが、今後の検討で需要量見通しの検証のうえ、備蓄米の買い戻しの具体策などが盛り込まれた需給見通しが策定されることも考えられる。
その場合、来年6月末の備蓄水準が焦点となるが、現在では政府備蓄米の81万tの放出と25年産米の生産増見込みで在庫水準で適正とされる180万tを大幅に超える「250万tから300万tともなると言われており不安」(平田委員)との声が出ている。全中の藤間則和常務は「需給緩和を心配する声がある。適正備蓄水準に戻す施策を適切に実施を」と求めた。
食糧部会には小泉農相が出席した。今回、需給見通しなどを示さなかったことについて「昨年、新米が出回れば大丈夫だと言っていたがそうはならなかった」と反省し、それを踏まえると農水省として今回需給見通しを示すことは「不遜だ」と判断したと話した。
一方、今回の米価高騰の要因について生産や流通にいたるまでの検証とさらに備蓄米放出という対応への検証はさらに続け、その結果については政府の閣僚会議で報告される。それに基づいて今後の需給見通しなどが策定される見込みだ。全中の藤間常務は「需給見通しは現場にとって大変重要な指標。改めて食糧部会を開いて審議を」と要望した。
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