中小農家を含め農業・農村のグランドデザインを-企画部会2019年12月24日
農水省は12月23日、食料・農業・農村政策審議会企画部会を開き、次期基本計画の検討に向けた課題の整理を行った。委員からはこれまでの取り組みで担い手の大規模化や法人化で成果を上げる一方、現場では小規模・兼業農家も含めた多様な形態が支えていかないと地域農業が成り立たないのが実態で「小規模農業の維持・継承にも対処する必要」があることなどが強調された。
今後の食料・農業・農村政策の基本的な考え方について企画部会では、気候変動、災害の多発、農業者の高齢化と減少、TPP等の発効など社会構造が変化するなかで、農業・農村の持続可能性、食料安全保障を確保する必要があると意見のほか、▽大規模な担い手の育成だけでなく小規模農業の維持・継承にも対応する必要がある、▽持続可能な農業構造、生産、環境、地域政策を一体化したパッケージとして検討する必要がある、▽引き続き農地の集積、集約化など経済合理性に基づく取り組みを進めつつ、採算性が厳しい地域の支援のあり方も検討する必要があるなどの意見が出ている。
また、田園回帰など農村に関心を持つ人のすそ野の広がりに呼応して地域を開いていくことが重要との指摘も出ている。
23日の企画部会では、今後の担い手像について大規模経営だけでなく規模の大小ではなく、どう成長したいかの意欲を支援すべきとの意見や、「主たる担い手も兼業農家と農業をやっていかないと地域ではなりたたない」と地域のなかに担い手が厚みを持つ姿が必要だとの指摘もあった。
一方、食品産業の委員からは、企業が国産農産物を使いたいが持続的に仕入れ、企業として国際競争力を持つには農地の集積・集約化と機械化を徹底的やるべきだと強調する意見もあった。ただ、中小経営を否定するわけでなく「それはそれ、これはこれ、と分け議論をすべき」(磯崎功典キリンホールディングス社長)と指摘した。
JA全中の中家会長は多様な担い手が必要で国は担い手への8割集積を目標にしているが、地帯別に品目も異なることから「地帯別に集約目標を設定」することを提起したほか、経営継承の観点から親元就農への支援が必要だと主張したうえで「あらゆる形態の農業者が農地を守る。小さくても農地を維持していく取り組みが必要だ」と話した。
食料自給率目標についてカロリーベースと生産額ベースの両方を提示すべきとの意見や、飼料自給率を反映しないカロリーベース自給率を示すときには、国民に数値の意味について説明が必要だとの指摘もあった。そのほか自給率の向上のために国産農畜産物の消費拡大や原産地表示の拡大、子どもだけなく若者、親世代への食育の推進なども強調された。
農村政策の観点からは農村それぞれの条件をふまえて林間放牧や飼料生産などの地域での農業のあり方をモデル化して国が示すことや、地域内ではなく人口の多い都会に直売施設を設置することを国が応援する政策なども必要ではないかとの意見もあった。
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