「一人ひとりの命を守る」 「防災対策」で片田教授が講演 日本共済協会セミナー2020年1月29日
(一社)日本共済協会が1月28日、東京都内で開いた2019年度のセミナーで東京大学大学院情報学環・片田敏幸特任教授が「厳しさを増す災害に向かい合う~いま求められる主体的な自助・共助」のテーマで講演を行った。同教授は河川の堤防や防潮堤などのハード面の防災対策に頼ることの危険性を指摘し一人ひとりの命を守ることの大切さを強調した。
「命の教育」を訴える片田教授
内閣府中央防災会議や消防庁・国交省の災害に関する各種委員会の委員や委員長を歴任した片田教授は、最近の相次ぐ大規模な自然災害に対し、「今の災害対策が本当の対策になっているのか。予想される南海トラフ、首都圏直下型地震に対してわれわれはどう向き合えはいいのか」と問題提起した。
同教授は、防災の問題点として行政や技術に頼り過ぎを挙げる。特に最近頻発している水害に関しては堤防の強化が主要な「対策」になっているが、東日本大震災などで、「堤防があるから大丈夫」と考え、逃げ遅れた人が多かった。
災害史からみて、この数百年は気象的に穏やかな時代で大きな災害が連続することは少なかった。しかし、この数年は気象災害が頻発しており、従来の、「行政頼りの防災対策は通じなくなった」と言う。
東京の江戸川区が11年ぶりに改訂した水害ハザードマップで「ここにいてはダメです」と訴えたことがSNSで拡散し、「行政の責任放棄」だとの批判もあったが、多くの区民に「我がこととして考える契機になった」と、片田教授は評価する。その意味で同教授は、防災の呼びかけで「社会がどう受け止めるか」のソーシャルコミュニケーションのあり方の重要さを強調する。
また、災害では常に高齢者の避難が問題になる。2018年の西日本大水害で大きな被害に遭った岡山県の倉敷市は、人口48万人のうち、避難の際の要配慮者が4万人とされていた。これを行政で支援するのは不可能。だが片田教授によると、本当に必要な要配慮者は10分の1で、行政はこの人たちの避難に責任を持ち、残りの10分の9は地域で支える仕組みが必要と指摘。「一人ひとり、それぞれの事情があり、それに合わせたメリハリのある支援が求められる」と言う。
その上で同教授は「防災対策の行き着くところは、日本の社会のあり方にある」と指摘。その例として、東日本大震災で、児童全員が自主的に高台に避難し手助かった釜石市の小学校の防災教育をあげる。「津波が来たら、とにかく逃げる」ということを普段から聞かされ、それを家族で共有することで親子ともに助かる。同教授はこれを「命の教育」として、"自助"の主体性のあり方として、考える必要がある」と指摘する。
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