2025年の値上4月までに6千品目 24年比6割増ペース 価格改定動向調査 帝国データバンク2024年12月27日
帝国データバンクは、2024年通年の動向および2025年以降における食品の値上げ動向と展望・見通しについて、分析を行った。2025年の値上げは、4月までに6千品目、2024年比6割増ペースと見込まれ、値上げラッシュ続く。また、年間1.5~2万品目ペースの値上げが予想され、2024年を上回る可能性がある。
月別値上げ品目数推移
同調査によると、主要な食品メーカー195社における、家庭用を中心とした2024年の飲食料品値上げは累計で1万2520品目を数えた。年初に想定した1万品目の水準を上回ったが、バブル崩壊以後の過去30年間でも例を見ない記録的な値上げラッシュとなった23年の3万2396品目に比べて約6割減少。22~23年にかけて続いた、月間2千品目超の水準が常態化した「値上げラッシュ」は抑制された1年となった。
2024~2024年の食品値上げ比較
2024年の値上げを月別にみると、年間で最初に1千品目を超えた2月(1626品目)は、パスタソースなどパウチ食品のほか、トマトジュースなどトマト加工品で一斉値上げ。4月(2897品目)は、23年10月以来6か月ぶりに2千品目を超え、ハム・ソーセージなど加工食品で一斉値上げとなった。
以降は月1千品目を下回る水準が続くなど値上げラッシュは「ピークアウト」の兆しもみられたが、10月には酒類・飲料を中心に年内最大となる2924品目で値上げとなったほか、11月は11か月ぶりに単月で前年同月を上回るなど、飲食料品における値上げペースが再び加速する兆しもみられた。
総じて、前年の急激な円安進行を決定打とした原材料コスト高のほか、電気・ガス代などのエネルギーコストの高騰は一服感がみられ、年間では2022~23年に比べて大幅に抑制された水準が続いた。また、物価上昇に賃上げペースが追いつかず、プライベートブランド(PB)製品など安価な代替製品へのシフトや、値上げ後に購入点数が減少する消費行動である「値上げ疲れ」を背景に、年初に多くみられた本体価格の引き上げから、年後半では内容量減による価格の「据え置き・維持」へのシフトが目立つようになるなど、本体価格への転嫁には限界感も強まった。
人件費や包装・資材費など、原材料高以外の値上げ圧力が高まるなかでも積極的な値上げがしづらい状況が続き、総じて価格設定の判断が非常に難しい1年となった。
一方、トマトのほかオリーブオイルやカカオ豆、海苔、オレンジ等では天候不順を要因とした不作により価格が高騰。チョコレートなど菓子製品では断続的な値上げが続いたほか、オレンジジュースでは休売やサイズ・容量の制限が発生するなど、原材料高の影響を大きく受けたケースもみられた。
2025年の値上げ動向:4月までに6千品目 春先まで値上げラッシュ続く
2025年1月から4月までに値上げが決定している飲食料品は、パンのほかビールなど酒類・飲料、冷凍食品など6121品目が判明。このうち、25年1月はパン類を中心に1380品目を数え、1月としては調査を開始した22年以降で最多となった。また、23年7~10月以来、約1年3か月ぶりに4か月連続で単月あたり1千品目を超えた。
食品分野別の値上げ品目数
このほか、23年12月時点で判明した翌年(24年)の値上げ予定品目数が3891品目だったのに対し、25年の値上げ品目数は約6割の増加となり、25年春にかけて24年を上回る値上げラッシュが常態化する見通しとなる。
1回当たりの値上げ率平均は18%となり、2024年(17%)と同等か、もしくはさらに上回る水準で推移する見通し。加工食品や菓子類、酒類・飲料を中心に、20%を超える大幅な価格引き上げを行う食品が多いことも、値上げ率が高止まりした要因となっている。
2025年1~4月間の値上げで最も多い食品分野は「加工食品」(2121品目)で、全体の約3割を占めた。弁当向け冷凍食品類のほか、チルド麺、缶詰製品など多岐にわたり、24年と同等のペースで推移している。次いで多いのが「酒類・飲料」(1834品目)で、缶ビールのほか缶チューハイなどRTD飲料、輸入ワイン・ウイスキーなど洋酒、レギュラーコーヒー製品などが中心。特にビール類では25年4月に大手4社で価格が引き上げられ、23年10月以来1年6か月ぶりの値上げラッシュとなる。「パン」(1227品目)では、25年1月に1千品目超が価格引き上げの対象となり、23年7月以来1年6か月ぶりの値上げラッシュとなる。
値上げ要因の推移(品目数ベース)
2025年の値上げは、24年のトレンドを引き継ぎ原材料などモノ由来の値上げが多くを占める一方、物流費など「サービス」価格上昇の影響を受けた値上げで拡大傾向がみられる。25年の値上げ要因のうち、最も多いものは「原材料高」(93.2%)となり、3年連続で値上げ品目全体の9割を超えた。
他方で、トラックドライバーの時間外労働規制などが要因となった輸送コストの上昇分を価格に反映する「物流費」由来の値上げが78.4%、最低賃金の引き上げや定期昇給など賃上げによる影響を含む「人件費」由来の値上げが43.9%を占め、いずれも23年以降で最高値となった。
2025年の見通し:年間1.5~2万品目ペース 24年を上回る可能性
足元では、急激な円高が進行した年半ばまでのドル円相場が一転して円安傾向で推移し、輸入食材などを中心に値上がり圧力が高まりつつある。加えて、世界的な天候不順を背景にコーヒー豆やカカオ豆といった一部商品作物では値上がりに収束のめどが立たず、特にコーヒー製品やチョコレート菓子などでは年内に複数回の値上げが実施されるといったケースも発生。原材料のほか、プラ容器など包装資材を含めたモノ由来の値上げに加え、物流費や人件費などサービス由来のコストでも値上がりが続いており、企業努力による製品価格引き下げや据え置きによる販売量の維持は収益面で限界に達しつつある。
各種コスト高を背景に値上げマインドは再び高まりつつあり、少なくとも25年4月頃までは断続的な値上げラッシュが続く。特に、値上げタイミングが集中しやすい2~4月にかけて月当たり2千品目を超える値上げが見込まれ、今後の展開次第では月3千品目に達する大規模な値上げラッシュの発生も想定される。
2025年5月以降については不透明な状況ながら、足元の円安傾向によって輸入品では再び調達費用の増加が想定。また、物流費のほか、24年内に実施した賃上げによる人件費増など原材料高以外の要因を背景に、粘着質な値上げトレンドの継続が見込まれる。25年通年の値上げ品目数については、現状のペースが続いた場合24年を上回る年1.5~2万品目前後に到達する可能性がある。
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