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2017.09.11 
購買事業と相乗効果 主体者として地域に関与【若森資朗・パルシステム生活協同組合連合会・元理事長(現顧問)】一覧へ

パルシステムグループはなぜ元請けを維持したか

若森資朗・パルシステム生活協同組合連合会・元理事長(現顧問) 2007年生協法改正を受け、日本生協連では2008年10月に日本コープ共済連を設立し、共済事業を分離した。その際、全国の大多数の生協では、保持してきた「CO・OP共済《たすけあい》」の日本生協連との共同引受の共済元請事業を、新しく設立した日本コープ共済連へと移管した。何故ならば、元請けを維持する場合、共済事業を分離し、独自で共済生協を設立し、そこへ移管する必要があったからだ。それぞれに単協の事情があり、移管理由は様々あったと思う。元請であることのリスク回避、大数の法則による結集、購買事業への資源の集中、赤字対策等々。
 パルシステムグループでは「CO・OP共済《たすけあい》」の日本生協連との共同引受による共済元請事業は、パルシステム連合会と会員生協であるパルシステム東京と両方で保持していた。コープ共済連への移管にあたっては、組合員不在の営業権の「売買」、金銭的補償などの条件が提示されていた。しかし、共済事業の剰余金は、本来契約者に帰属する危険差益によって大半が生じている。共済事業の区分経理を勘案するなら、将来の利益を生み出し得る無形の財産的価値である営業権を設定し、対価を会員生協に支払うということについては、共済事業の剰余金の性格からして、はなはだ疑問が残ると考えた。内部論議を経て、パルシステムグループとして、パルシステム共済連を設立し、そこで元請共済事業を続けることを確認した。
 この結論に至ったことについては、パルシステムグループの活動の歴史経過が色濃く反映している。生活クラブ連合、九州のグリーンコープ連合もパルシステムグループと同様、それぞれ独自の共済連合会を設立した。

(写真)若森資朗・パルシステム生活協同組合連合会・元理事長(現顧問)


◆自らリスクを負う

 ところで生協は農協と違って、同一地域で複数の地域生協が設立できる。例えば東京都では現在、日本生協連に加盟している生協だけでも、コープ未来、パルシステム東京、生活クラブ生協、東都生協、自然派くらぶ生協等が活動している。それぞれが独自の政策、運動論で活動を行っている。お互いに競合しつつ、切磋琢磨しながら生協運動に取り組んでいる。
 パルシステムグループも設立以来、独自の事業政策、商品政策、福祉政策、保障政策等々と多岐にわたる総合政策で、存在価値を高めてきた。そのような背景があって、パルシステムの会員生協は、自らの元請共済を担う専業組合として、パルシステム共済連を設立した。そして当事者として、リスクはあるが事業責任を負い、将来展望を切り拓く事業として設立を決断した。
 その判断の背景としてあったのは、事業見通しが一定程度確認されたことにある。

 (1)購買事業が築いてきた信頼関係をさらに強める―パルシステムは利用結集が高い。

 (2)主力業態(無店舗事業)の特性と首都圏の人口動態が、独自性を打ち出せる可能性を秘めている。

 ▽パルシステムの業態である無店舗事業の特性として、店舗事業と比較して組合員の年齢層が若く、経過年数も短い
 ▽首都圏の人口動態(人口の伸びは鈍化しているが、当面は増加基調、特に東京圏は2020年までに総人口の30%程度が集中すると予想されている。しかも女性中心の人口流入)

 (3)購買事業との相乗効果

 ▽こども共済と女性コースへの加入が7割を占め、購買利用の中心的な家族層に支えられている。2000円コースは、子育て層の30~40代から大きな支持をえている。
 ▽また、女性コースの契約者と同一組合員番号を持つ家族の2013年度の月平均購買利用高は高い。(L2000=2万5888円、L3000=2万6737円、L4000=3万555円)。
 ▽共済加入は、組合員脱退の抑止効果にも繋がっている。
 加えて、COOP共済たすけあいの取り組みを通して、組合員や地域社会から、生協への期待や新たな取り組みへの要望が広がってきていた。そのことに対し、パルシステムとして直接組合員に対応すべきだと考えた。このことに応えるには、その機能をパルシステムグループ内に持つ必要があり、人材の確保、資金的裏付けもしなくてはならない。それにはリスクもあるが、事業として実際に担う部門を持つことが必要と判断した。その要望とは次のことが挙げられる。
 ▽いまや、個人も自分の「ライフプラン」にあったオーダーメードの「保障」をつくる時代。専門的なアドバイス機能を充実させてほしい。
 ▽共済だけでなく、福祉、医療、年金、貯金等の専門知識をもった人を育成し、ライフプラン作りのサポートをしてほしい。
 ▽家計支出のなかでは、住宅、教育、そして保障に関する支出がかなりを占める。保険会社の選び方や保険の最新情報も広報活動に組み入れてほしい。
 ▽年齢やハンディのある人も、一定の条件で参加出来る保障のしくみ、制度を作ってほしい。
 ▽経済的な給付にとどまらず、現物給付、ケアを保障に加える等、福祉面との連携を図ってほしい。
 ▽年金や生活を取り巻く金銭補償の取り組みもほしい。
 ▽生活資金、教育資金の貸付けも検討できないか。


◆組合員に寄り添う

 パルシステムグループでは、より身近に組合員に寄り添い、生活課題の解決に貢献することを確認してきた。保障事業もそのことを実践する立場を貫くとの思いであった。
 確かに事務作業として、集中して効率化できる部分は業務委託したとしても、元請団体であり続けることは共済事業の主体者として価値があると考えている。地域社会で多様な活動している生協やJAが、主体者として共済事業を通して地域社会に入り込み、協同組合の価値を最大限発揮し、組合員や地域社会に貢献する。
 世界では、資本主義の限界が叫ばれている中で、確実にオルタナティブとして協同組合や社会的企業が地域に定着してきている。しかし日本では市場化の流れにさらされている。当事者意識を持った対抗が求められている。

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