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特集:農協改革を乗り越えて -農業協同組合に生きる 明日への挑戦―

2017.11.02 
「地方のガンバリ」なめんなよ(第2回・後編)「農協改革」を乗り越えよ!一覧へ

◆長野のガンバリ 組合員との対話活動

小松 泰信(岡山大学大学院 環境生命科学研究科教授) JA長野県グループは、平成28年11月開催の第69回JA長野県大会において、自己改革を加速するため、「農業所得10%増大に向けた取り組みの強化」「組合員が主役のJAづくりの推進」「組合員のJA参画によるメリットの最大化に向けた、JA長野県グループの機能を重視した『組織・事業・経営のあり方』の研究と構築」の3項目に取り組むことを決議した。
 その後、28年度の自己改革への取り組みの総括を行った結果、各JAや県域の取り組みにおいて優良事例は見られるものの、「全体として組合員を巻き込んだ、具体的な行動にまで十分つながっていない状況」であることが明らかになった。そして、「各JAが、自己改革の取り組み状況の点検と評価を行い、組合員との徹底した話し合い、取組施策・取組成果の共有化などを通じて、組合員(とりわけ担い手)の評価を高め、JAの理解醸成につなげていく必要がある」との結論に至った。
 そこから提起されたのが次の3課題である。

 (1)組合員との徹底した話し合いや施策の共有化など組合員を巻き込んだ取り組み
 (2)組合員のニーズをふまえた事業内容など、組合員目線からの取り組みの点検・見直し
 (3)准組合員のメンバーシップ強化の取り組みの実践

 具体策において注目したいのが、「全役職員による組合員との対話活動の強化」である。
"対話活動"の強調は、「自己改革が実践されていたとしても、また今までJAが農業発展・地域振興の取り組みを行ってきたとしても、組合員に伝わらなければ評価にはつながらない」という危機意識からである。
 対話活動の先進事例として取り上げられているのが、県内のJA上伊那の役員による法人訪問である。
 日本農業新聞(7月12日)によれば、当JAは7月から自己改革の一環として地域農業の中心的な担い手である43の法人組織を常勤役員が訪問し、要望や苦情などを吸い上げる活動を始めた。出された意見はJA内で共有し、できるものは翌日から対応、もちろん今後の事業にも反映させる、とのことである。対象法人との面識はあるものの、"個別に具体的な意見を聞く機会はなかった"という反省に基づく企画である。
 訪問先の法人組合長は、JA出荷のメリットが出ることを求めるとともに、地域農業を支える個人農家への訪問も求めている。別法人の組合長は、営農技術員の育成を要求したうえで、このような訪問活動を評価している。これらを受け、JA役員は「厳しい意見はあって当然。膝を突き合わせて有意義な意見交換ができた。スピード感を持って対応を進めたい」と、語っている。
 同JAは、7月1日に「組合員との対話活動をベースとしながらJA自己改革の着実な実践と、将来にわたりJAが自立的な事業・経営を行っていくために必要な課題を全役職員が共有し危機感とスピード感を持って取り組むことを目的」として、JA自己改革推進本部を設置した。また「JA上伊那自己改革の実践報告」と銘打たれたパンフレットに、29年度上半期までの取り組み状況をまとめ、組合員・利用者に配付し、情報の共有と交流に努めている。
 このような現場での動きにも少なからぬ影響を受け、今年11月に開催される第70回JA長野県大会では、「最終的に改革の成果を判断するのは国でもJAでもなく"組合員"であり、組合員にJAの努力や成果を伝えることが重要である」という面前に横たわる危機への対応に加えて、「高齢化や人口減少等により、組合員数やJA事業量の大幅な減少も予想される中で、総合事業を営むJAとして、自律的なJA自己改革により、将来にわたり組合員・地域にとって『なくてはならないJA』となっていけるよう、組合員の意見や要望に真摯に向き合い相互理解をすすめ、組合員のJAへの参画意識を高めていく必要がある」と、長期的展望に立った危機問題にまで言及している点は注目に値する。
 そしてそれらの危機克服をめざし、「『なくてはならないJA』に向け、組合員との対話活動を強化し、自己改革の実践に取り組みます(案)」という第1議案を審議する予定である。

◆「農協改革」を乗り越えよ!

「組合員との接点となる役職員は、つねに自己改革のことを意識して組合員に接していく必要があります」とは、中家全中会長の談(『家の光』10月号)。残念ながら、職員に自己改革もそれに伴う危機的状況も徹底されていない。連合会も例外ではない。JAよりも他人事の感あり。
 JAグループ和歌山もガンバル。全8JAと中央会・連合会で自己改革と大宗組合員調査に関する研修会を行っている。ただしこのような研修会が有効なのは、グループ内で発信されている情報を役職員が常に意識している場合だけである。研修会は一過性のものでしかない。
 今回の(上・下)で取り上げた事例の内容は、執筆依頼を受けてからの約一か月の間に、別件で訪問した機会を利用して行ったヒアリング調査に基づいている。決して評判を聞きつけていったわけではない。にもかかわらず、どの県からも自己改革で農協改革を乗り越えようという気概が伝わってきた。
 自己改革は"賽の河原の石積み"の如し。積めども積めども鬼どもがきて崩してしまう。しかし、ひるむことなく積み続けよ。なぜならそれは一つの抵抗、そして明日への挑戦。

 「地方のガンバリ」なめんなよ

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