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2017.07.07 
【緊急寄稿】都議選の結果を読む 森田実一覧へ

◆自民歴史的惨敗

 自民党が獲得した議席数(23)は、総議席数(127)の18%にすぎません。長い間東京都議会をリードしてきた自民党は「2割以下政党」にまで落ちてしまったのです。
 こんな惨めな結果になるとは、おそらく誰も予想していなかったと思います、私自身は「30台前半」と予想していました。「予測」のなかでは「自民党に最も厳しい予測」といわれましたが、この予測より10議席も下回りました。
 予想を超えた選挙結果の衝撃は非常に大きく、マスコミは今にも安倍内閣が崩壊してしまうような極端な見方をしていました。たしかに政党に与えた衝撃は大きいものでした。とくに注目されたのは、安倍首相ら中央政界の政治家への批判が都議選の流れを決めたことでした。
 都議選直前に出た安倍首相側近(下村博文前文相、萩生田光一内閣官房副長官)の加計学園関連の疑惑、豊田真由子衆議院議員(当時自民党<細田派>のち離党)の秘書への異常言動、稲田朋美防衛相の大失言などが、国民の感情に大きな影響をもたらしました。
 私自身も今回は都民に対するヒアリングを行いました。サンプル数は少かったのですが大変参考になりました。従来からの自民党支持者は「今回だけは自民党には投票したくない」と言いました。その原因を問いましたところ、ほとんどの人から「安倍さんの依怙贔屓と強権政治が露骨すぎます」との答えが返ってきました。少ないサンプル数での全体の流れを推し測ることには問題がありますが、東京都民への安倍首相の政治のすすめ方への強い不信が、「自民党歴史的敗北」の主原因だったと、私は思います。
 安倍首相は2006~2007年の第一次内閣の時には「お仲間内閣」との批判を受けました。2012年以後最近までの第二次内閣、第三次内閣においては「お仲間内閣」との批判はあまりありませんでしたが、最近、依怙贔屓と強引さが目立つようになりました。とくに「加計学園問題」で安倍首相の依怙贔屓の疑いが濃厚になりました。さらに稲田朋美防衛大臣への安倍首相の異常な甘すぎる対応が「依怙贔屓政治」への疑いを深めました。
 巨大な政治権力者が依怙贔屓を行えば国は乱れます。これは昔も今も変りません。どんな巨大権力も国民の支持を失えば砂上の楼閣にすぎなくなります。
 「依怙贔屓政治」は政治権力者と側近が高慢、傲慢になった時に現れます。シェイクスピアは「高僧には必ず墜落がある」と言いましたが、安倍首相にはこの言葉を拳拳服膺してほしいと思います。

◆強権政治への不信

 安倍首相の政治への嫌悪感の底には、安倍首相の力ずくの強引な政治手法への不信もあります。多くの国民は安倍政治には「和の精神」が欠けていると思っています。力ずくの政治があまりにも目立つのです。
 中国の古典「古文真宝」に「剛強なるは必ず死し、仁義なるは王なり」という格言があります。自らの剛強をたのみ、力ずくで世を制する者は必ず亡びる。しかし、仁義をもって立つ者は王者となる、という意味です。私は「仁」とは「民を考する心」、「義」は「正義」だと解釈しています。
 安倍首相と側近には、この「古文真宝」の格言を学んでほしいと願います。
 政治権力者に最も必要な資質は「謙虚さ」です。ゲーテは「謙虚であることをわきまえている者は最高のことを企てることができる」と述べています。安倍首相はこれから謙虚な政治を進めなければなりません。方向転換が必要です。
 安倍首相の具体的課題の第一は、小池知事との和解と協力関係の確立です。2020年東京オリ・パラリンピックの成功のためには必要不可欠です。第二は公明党との関係修復です。今のままでは実効のある選挙協力は困難です。とくに安倍首相の側からの和解の努力が必要です。第三は改選による信頼の回復です。

◆小池ショックと金正恩ショック

東京都議会議員選挙の2日後の7月4日、北朝鮮はICBM試験発射の成功を発表しました。衝撃的ニュースです。これによって小池ショックは過去のものになりました。
 友人のジャーナリストは「安倍首相の強運はまだつづいていますね。金正恩が小池旋風を止めました」と電話してきました。小池旋風は安倍政権の基盤を崩す動きですが、金正恩ショックは、結果的に、安倍政権の求心力を高めます。
 知人のジャーナリストの中には「安倍首相を支えているのは自民党の団結力(批判者不在)。北朝鮮の脅威。そして野党(とくに民進党)のていたらくの三つ」と言う者は少なくありません。たしかに、安倍政権の強さの秘密はここにあるのかもしれませんが、安倍首相の賞味期限が切れつつあることは否定できないと思います。安倍首相の内閣と党の惰性とくにおごり打破への努力が求められています。

◆どうなる内閣の命運

 次の衆議院議員総選挙は2018年12月までに行われます。衆院選の時期は2017年秋、2018年春~夏、2018年秋~冬の三つです。この衆院選で安倍内閣の命運が決まります。
 現状においては、政党間の政権交代の可能性はほとんどない、と言えます。野党第一党の民進党があまりにも弱体だからです。日本国民の不幸は、政権交代の受け皿になる政党が存在しないところにあります。
 そこで注目されるのが小池新党の動きです。小池新党が地域政党の枠内にとどまるか、それとも「日本ファースト」党に変身するかに関心が集まっています。私は変身の可能性はあると考えています。この場合小池氏は都知事にとどまり代理人が全国政党の党首になる可能性もあります。政局は緊張してきました。

(森田実 / 政治評論家・山東大学名誉教授)

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