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TPP攻勢排し、自らの手で改革を 農協研究会2014年7月1日

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農業協同組合研究会が第10回研究大会

 JAの役職員やOB、研究者などが農協のあり方について考える農業協同組合研究会(代表=梶井功・東京農工大学名誉教授)は6月28日、東京都内で第10回総会を開き、併せて第10回研究大会を開いた。テーマは、「財界主導の農業・農協改革を問う」。鈴木宣弘・東京大学大学院教授が「TPP・規制改革・農業・農協改革の正体」で、冨士重夫・JA全中専務が農協改革とJAグループの取り組みについて報告した。会員外も含め、約100人が参加し、規制改革会議等の"中央会廃止"論に対する現場JAの意見を交えて意見交換した。

農家の意見反映担保を
冨士重夫・JA全中専務

◆組織運営の体制整備進む

冨士専務 JA全中の冨士重夫専務は、今回の規制改革会議の農協改革の答申の背景に、政府のTPP推進とそれに反対してきたJA陣営に対する攻撃があるのではないかとみる。その上で攻撃する側の「ある種の手詰まり感があるのではないか」と分析する。これまで信用・共済事業など、民間の銀行、保険会社などとのイコールフッティングが議論されてきたが、その過程で、JAの組織や運営も民間の企業並みに整理されてきた。また中央会については、経営指導と併せて健全な経営ができるよう、内部監査体制が整備されてきた。
 今回の規制改革会議は、検討の過程で現地調査や単位農協のヒアリングを行ったが、その現場からは中央会の廃止や全農の株式会社化など、JA組織の根本にかかわるような話はなにも出ていなかった。これは答申が、ほとんど議論をしないまま出されたことを示している。そこに規制改革会議の「最初に結論ありき」の姿勢をみることができる。
 全中も規制改革会議や農水省などから、情報を集めていたが、「農家の所得向上、農業生産力を上げるための規制緩和といっていたものが、こんな結果を出すとは予想しなかった」と冨士専務は言う。

(写真)
冨士専務

 

◆与党案に提案、「答申」に反映

 JA全中は、規制改革会議の農業ワーキンググループ報告を踏まえて、与党とともに交渉を重ねた結果が6月10日の与党案であり、それを踏まえて6月13日の規制改革会議の答申となった。その答申には、農協改革が必要だとする理由に「中央からの共通に指導に基づくのではなく、地域の農協が主役となり、それぞれの独自性を発揮して農業の成長産業化に全力投入できるように抜本的に見直す」となっている。
 冨士専務は「農家所得の向上、農業生産力の増大というが、今回は単位農協が主役になっているのが特徴」という。答申は、単協の創意工夫の発揮を縛っているのが中央会だとして、結局は中央会と連合会が標的になっている。特に中央会は、昭和29年の発足以来60年が経過し、合併が進んで単位農協の規模が大きくなり、ガバナンスも確立して自立できるようになった今日、発足当時のままの強い権限で中央会が指導するのはどんなものかというロジックに基づいている。

 

◆廃止撤回させ新たな仕組みに

 当初の農業ワーキンググループの提言では、「農協法に基づく中央会制度は廃止」との文言があったが、答申では「具体的な事業や組織のあり方については、農協系統組織内での検討を踏まえて、関連法案の提出に間に合うよう早期に結論を得る」に修正された。特に中央会の「廃止」でなく、「新たな仕組み」にしたこと、それへの移行期間は示さなかったこと、それに自らの事業、組織のあり方は、自らで検討するべきだと主張し、その趣旨を答申に反映させることができたと評価する。
 ただ、今回は中央会と連合会が主たるターゲットだが、来年の通常国会にむけて始まる第2ランドでは、これまでの政府の動きからみて「単協の総合事業と准組合員、員外利用問題が出てくるだろう」と、引き続き注視するよう呼びかける。
 その上で今後、主張すべき点として、農協の模範定款をつくって指導してきたのは行政機関であり、中央会の強い指導とは何をさすのか、また農家の所得向上に、中央会の指導のどこが問題なのか、具体的な説明を求め、「一つひとつ徹底して検証する必要がある」と言う。
 また、中央会の仕事については、よく知られていないのが実情。特に法案を審議する国会議員は、与党300人の議員のなかで、大半が新人議員であり、中央会の仕事の内容がよく理解されていない。「改めて取り組まなければならないことを痛感した」と、第2ラウンドにおけるJA組織・事業の周知徹底を課題の一つとして挙げる。
 規制改革会議の提言は6月24日に閣議で「規制改革実施計画」として決定され、政府は具体的な制度設計の検討に入る。それに併せてJAグループは、7、8月にかけてJA改革推進本部やJAグループ革新推進会議を立ち上げ、総合審議会を開いて、課題を整理し、具体的な検討を始める。

 

◆事業のあり方、法制含め検討

 冨士専務は、JAグループにおけるこれからの検討方向についての考え方を示した。中央会の新たな制度への移行は、[1]営農・経済事業の革新やJA・連合会経営の健全性確保など、中央会の組織・事業のあり方とそのために必要な法的位置付けについて検討する、[2]制度の見直しは組合員の事業利用やJA・連合会事業運営への影響、JAグループの意思結集や農政運動のあり方等についても検討する。
 また経済連・全農の株式会社化については、[1]あくまでも自らの判断で選択することとし、株式会社化が強制されることのないように、制度として担保する、[2]現行の法人形態における会員最大奉仕や農業所得の増大、成長産業化を実現するための事業や組織のあり方について、自らの改革に取り組むことを挙げる。その上で改革に「農民の意思反映をどう担保するかがポイントだ」と、そのためのシステムづくりの必要性を強調した。

 

持続的発展壊すTPP
鈴木宣弘・東京大学大学院教授


◆真に強い農業、今こそ議論を

鈴木教授 鈴木教授は、今日の規制緩和の動きに対して厳しく断罪する。いまの状況を「イコールフッティング(対等な競争条件)を実現すれば、みんなが幸せになるというが、利益追求のための一部の人々の暴走が国の将来を危うくしている。人々の命、健康、くらしを犠牲にしても、環境を痛みつけても、短期的なもうけを優先する、ごく一握りの企業の利益に結びついた一部の政治家、一部の官僚、一部のマスコミが国民の大多数を欺いて、TPPやそれと表裏一体の規制改革、その超法規的突破口となる国家戦略特区などを推進している」と分析。
 その結果、日本が伝統的に大切にしてきた助け合い、支え合う安全・安心な地域社会が壊されてきていると危惧する。その地域社会を守ってきたのは農林水産業の営みであり、それに深くかかわる協同組合を潰そうとする動きに警戒を呼び掛け、「将来、地域社会を守るのは協同組合である。『今だけ・金だけ、自分だけ』では、持続できる農業経営も、地域の発展も、国民の生命も守ることはできない。今こそ『食と農と地域の将来を開く、真に強い農業とはなにか』が問われている」と言う。

(写真)
鈴木教授

 

◆世論を高めて農業守る力に

 日米のTPP交渉に関して、同教授は牛肉、豚肉の関税引き下げ、、それに米の特別輸入枠で合意に達したのではないかとみる。しかし米国側の「まだ足りない」の怒りが強まって“ちゃぶ台返し”になり、5月の閣僚会合が大筋合意に至らなかったと分析する。「米国の圧力に屈して日本が大幅な譲歩を重ねたことは間違いなく、今後もさらなる譲歩を続けるしか解決方法がないことが明らかになった」とみる。
 こうした交渉の一連の様子ををみて、いけいけムードの一部マスコミとは裏腹に、世論は冷静になりつつある。各種新聞の世論調査を挙げ、日米のTPP協議に関して、「妥協するくらいなら合意すべきではない」という意見が半数を超えており、また国内の畜産農家に打撃があっても安い輸入肉がよいかとの質問でも、6割以上が「そうは思わない」と回答しており、「国産の重要性、農家への理解も深まっている」と、世論の高まりに期待する。
 またTPP問題は食品の安全性と深くかかわっており、「農業だけに矮小化してはならない」と強調する。肉類に対する成長ホルモンは日本では禁止され、米国やオーストラリアで使用されているものがあり、輸入を禁止すると、ISDS(投資家対国家間の紛争解決)条項で訴えられる事態が予想される。
 遺伝子組み換え(GM)食品の輸入も懸念する。バイオメジャー会社等は、TPPをテコにGM食品の表示をなくすことに力を入れている。米国ではラウンドアップ(除草剤)をGMトウモロコシに直接にかけており、しかも耐性雑草が増えたため残留基準が緩められ、散布量がさらに増えていると言う。

 

◆拠る人々守り、持続する組織へ

 一方、日本の農業については、国内自給の重要性を強調する。特に、米国は、食料を武器とみなし、直接食べる食料だけでなく、畜産物のえさも供給することも含まれる。それによって日本の畜産をコントロールしようとしており、それを世界に拡大しようとするのが戦略であると指摘。このため膨大な輸出補助金をつけて保護しているのが米国の農業であり、「TPPで過保護な日本農業を、競争をさらに強くし輸出産業にするというのは大嘘」と、日本農業過保護論を批判する。
 その上で、元気で持続的な日本農業発展のためには、「禁止的な高関税でも、徹底したゼロ関税でもなく、その中間の適度な関税と、適度な国内対策との実現可能な最適な組み合わせを選択し、高品質な農産物を少しでも安く売っていく努力が必要」と言う。
 特に、日本の農業と地域社会の歴史的な強いつながりを強調。個別経営も集落型のシステムも、成功しているのは地域全体の将来とそこにくらすみんなの発展を考えて経営していることを挙げ、「1社の企業経営がやればよいとする考えとは決定的に違う。組織が組織のために働いたら組織は潰れる。拠って立つ人々のために働いてこそ、組織も持続できる」と、農協を含め、地域に根差した組織・団体の進むべき方向を示唆した。
 なお、同教授は新農政下における米の生産者手取りの試算結果を示した。
7月1日付「新農政下の米価1万円前後 鈴木教授が試算」参照

「農業・農協改革」で討議する農協研究会(東京都中央区の日本橋公会堂で) 意見交換では「自立できるJAをめざしており、中央会の制約は感じない。我々は利用していただけるJAを目指している。組合員から要らないといわれる事業は必要ない。JAも中央会もそれで取り組んでいただきたい」(福島県JA役員)、「現場の声をということでプロジェクトをつくった。JAへの苦情もある。JAはまだ信頼されている。これに甘んじることなく自己改革すべきだ」(茨城県JA役員)
 「農協側が、かくも簡単に寄り切られたのなぜかという思いがある。内部で検討するというが、今までの方法では国の実施計画に対して、農協側はこう考えるという程度の答えしか出ない。原点に立ち帰って、協同組合はかくあるべしの理論を組み立てないと向こうのペースにはまってしまう」(茨城県JA役員OB)などの意見が出た。
 このほか、「信用・共済事業を切り離したら単位農協ではやっていけない。総合農協だからやっていけることを政府にきちんと主張して欲しい」、「規制改革会議は一緒に論じているが、我々はできることとそうでないことを精査し、モデル的な農協をつくっていくべきだ」などの意見があった。

(写真)
「農業・農協改革」で討議する農協研究会(東京都中央区の日本橋公会堂で)


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