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2014.10.07 
【景気動向】落ち込む消費 停滞する景気一覧へ

 「アベノミクス」で日本経済は長いデフレを抜けだし、明るくなると、安倍政権が誕生してからいわれ続けてきた。しかし、本当に景気の見通しは明るいのか。ここにきていくつもの疑問が浮かんできた。

◆下方修正された見通し

 「景気は、このところ一部に弱さも見られるが、緩やかな回復基調が続いている」「個人消費は、持ち直しの動きが続いているものの、このところ足踏みがみられる」
 9月19日に内閣府が発表した「月例経済報告」(平成26年9月)の基調判断は、現在の景気をこう分析した。8月月例報告の「消費税引き上げに伴う駆け込み需要の反動も和らぎつつある」「個人消費は、一部に弱さが残るものの、持ち直しの動きがみられる」から、慎重に言葉を選んでいるが、景気の停滞を認めたといえる。
 9月8日に公表された「4〜6月期四半期GDP速報」(2次速報)でも国内総生産(GDP)を「1次速報」の▲1.7から▲1.8に(年率換算では▲6.8から▲7.1へ)下方修正。GDPの6割を占める個人消費も5.1%減と、ここにきて、さまざまなデータが「下方修正」され、安倍政権の経済政策に疑問符がつく場面が多くなってきている。

 

◆低迷する小売業界

 とくに消費の場面がそうだ。今年3月までの消費税増税前駆け込み需要が終わった4月以降、小売業界の売上げは毎月前年同月を下回っている。ここ数日、8月の速報値が公表された。小売業界を牽引しているコンビニエンスストア業界も新店出店で売上げは確保したが、既存店ベースでは前年同月比▲2.4%だ。
 総合スーパーも食料品は1.0%と前年を上回ったが衣料品などが伸びず既存店ベースでは▲0.1%となっている。また、食品スーパーは同1.6%と前年を上回っているが、関東、中部地方は前年を上回ったものの、近畿や中国・四国地方では前年を下回るなど、地域差が生じてきている。
 消費税増税の駆け込み需要の反動で消費が落ち込むことは予測されていたが、それは1〜2カ月のことでその後は回復するといわれていた。だが、こうしたデータをみると、事態はもっと深刻だと考えた方がいいようだ。
 日本経済新聞が実施した「社長100人アンケート」でも、個人消費の回復期は前回調査の回答より遅い「10〜12月になる」との見方が45.8%ともっとも多かった(9月22日付朝刊)。

消費者物価指数と実質賃金指数(平成25年7月から平成26年8月まで)

 

◆実質賃金はマイナス

 上図は、総務省の「消費者物価指数(全国)」と「家計調査報告(二人以上の世帯のうち勤労者世帯)」(いずれも8月29日公表)をまとめたものだが、消費者物価指数の上昇は、今年3月まで1%台だったが、消費税増税後は3%台へと上昇。26日公表の8月のそれは3.3%アップとなっている。増税分を差し引けば1%台で物価上昇は鈍っているというが、消費者が実感するのは税込価格だ。
 一方、勤労者世帯の実収入は25年8月以降連続してマイナスとなり、今年4月以降は5〜7%のマイナスとなっている。
 厚生労働省が公表している「実質賃金指数」も「事業所規模5人以上」の「現金給与総額」は昨年7月以降連続して前年同月がマイナスとなっている。今年の春、政府の強い圧力もあって「賃上げ」されたにも関わらずだ。さらに、非正規雇用者が2000万人を超え、年収200万円以下が1000万人以上という現実が錘になっている。
 個人消費の回復には、消費者世帯の収入(実質賃金)が増え「買物をしよう」と消費者が動くことが不可欠だ。だが、円安で輸出は伸びず、国内生産はコスト高で、日本の景気は停滞し、賃金が上がるとは思えない。

 

◆牽引役不在の日本経済

 これからの日本経済をどう読めばいいのか。
 みずほ証券(株)リサーチグループ金融市場調査部チーフマーケットエコノミストの上野泰也氏は、次のように分析する。
 個人消費関連統計や消費マインド統計も「これまでのところごく小幅だが、悪化がみられる」。「日本経済において野球の『3番バッター』にでも例えることができそうな個人消費が、消費税率の引き上げと『悪い物価上昇』のダブルパンチでかなりの成績不振」だ。
 さらに、『4番バッター』にあたる輸出も、円安にもかかわらず、大手自動車メーカー生産拠点の海外シフトなどいくつかの構造要因が大きく効いて「スランプに陥ったままである」。
 そして『5番バッター』にあたる設備投資も「国内市場の長期縮小見通しに鑑みると、大きな期待はできない」。そのうえ『ピンチヒッターの切り札』である公共投資については「人手不足や資材高騰」によって、その「得点力がかなり削られているのが実情」だ。
 このように国内景気は「得点力のあるバッターが不在のため、明らかに不安定な状態である」とみている。
 つまり円安がすすんでも輸出停滞が続き、国内景気は「牽引役不在」だから「下振れリスク増大は明らか」ということだ。
 したがって、来年の春は今年のように政府がプレッシャーをかけることもないだろうから「賃上げ」は期待できず、消費が回復するかどうかは、極めて不透明だとみておいた方がよさそうだ。
 「アベノミクス」の掛け声だけは大きいが、「株高」になっても投資家ではなく、真面目に農業に励み、汗水たらして働いている者には、「害あって益なし」となる可能性が高いということだろう。

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