【リレー談話室・JAの現場から】消費者を味方に2016年10月31日
◆スーパー店頭で
8月上旬、出張の際、広島県福山市にあるスーパーマーケットに立ち寄った。このスーパーは、畜産農家が精肉加工販売から始めた「6次化」を出発点として事業展開してきた。創業者の個性と地元密着路線を前面に出し、流通大手と果敢に戦う姿は商売において学ぶべき点が多いため、かねてからこのスーパーにも行ってみたいと思っていた。
店舗では、南九州産の新米が販売されていた。東北人の感覚からすると、ようやくコシヒカリが出穂を迎えたばかりなのにと驚かされる。しかしもっと驚かされたのは、その「売られ方」である。おそらく客寄せパンダ商品の一つだったため、店舗入口前(屋外)に客の目に触れやすいよう「(安い)特価」を掲げ、コンテナごと陳列されていた。そのため、米袋は直射日光と外気により持つに耐えないほど熱せられ、袋内部に結露が見られるものもあった。
スーパーの名称は、「お客様の心をつかみ...」に由来しているそうだ。確かに特価の新米は「お客様の心」をつかんだかもしれないが、新米の風味は台無しである。お節介とは思いつつ、このスーパーのウェブサイトから、この惨状についてメールしたところ、翌日までに店舗責任者から陳列状況の改善をしたとの返事があった。しかし、これはスーパーだけの不手際なのだろうか。
新米の包装には、生産地のほかJAや経済連が「販売者」として表示されている。そこで、生産者や販売者は出荷物がどう売られているのか把握しているのだろうかという疑問が生まれる。厳しい言い方をすれば「売りっ放し」で無責任ではないのか。生産者が価格決定権を持たないことへの不満を多く耳にする。しかしこうした現状に鑑みると、それは仕方が無いことと思わざるを得ない。
販売者が市場(会社)や(仲)卸商と頻繁にやり取りしているのは承知しているが、細かく小売店回りや消費者への直接的なアプローチまで行っているとはあまり耳にしない。ブランド化に成功している産地の多くは、そうした地道なアプローチからスタートしている。魚沼コシヒカリや三ケ日みかんなども例外ではない。
ちなみに身の回りにある小売店を見て欲しい。家電量販店では、安価な消耗品のメーカーでさえ各店舗に仕入れ権限が無いにもかかわらず、営業担当者が店舗回りをして自社商品の棚栄えを維持改善するだけでなく、販売現場で得られた情報を価格、品質改善や新製品開発を含めた「企業戦略」にフィールドバックさせている。
農業・農協改革(解体)では昨今、資材調達コストの引き下げと営農規模の拡大に注目が集まっている。与党PT等からの提案に多少無理があることは否めないが、農協側の言い分は世論が味方についてくれないのが現実だろう。
それは、売りっ放しで消費者から遠い存在になってしまったことのツケが回ってきているといっても過言ではないからだ。
重要な記事
最新の記事
-
シンとんぼ(159)-食料・農業・農村基本計画(1)-2025年9月13日
-
みどり戦略対策に向けたIPM防除の実践(76)【防除学習帖】第315回2025年9月13日
-
農薬の正しい使い方(49)【今さら聞けない営農情報】第315回2025年9月13日
-
【人事異動】JA全中(10月1日付)2025年9月12日
-
【注意報】野菜類、花き類、豆類にハスモンヨトウ 県内全域で多発のおそれ 兵庫県2025年9月12日
-
【注意報】果樹カメムシ類 県内全域で多発のおそれ 佐賀県2025年9月12日
-
【石破退陣に思う】農政も思い切りやってほしかった 立憲民主党農林漁業再生本部顧問・篠原孝衆議院議員2025年9月12日
-
【石破首相退陣に思う】破られた新しい政治への期待 国民民主党 舟山康江参議院議員2025年9月12日
-
【石破退陣に思う】農政でも「らしさ」出しきれず 衆議院農水委員会委員・やはた愛衆議院議員(れいわ新選組)2025年9月12日
-
ドローン映像解析とロボットトラクタで実証実験 労働時間削減と効率化を確認 JA帯広かわにし2025年9月12日
-
スマート農業の実践と課題を共有 音更町で研修会に150名参加2025年9月12日
-
【地域を診る】個性を生かした地域づくり 長野県栄村・高橋彦芳元村長の実践から学ぶ 京都橘大学学長 岡田知弘氏2025年9月12日
-
(452)「決定疲れ」の中での選択【三石誠司・グローバルとローカル:世界は今】2025年9月12日
-
秋の味覚「やまが和栗」出荷開始 JA鹿本2025年9月12日
-
「令和7年台風第15号」農業経営収入保険の支払い期限を延長 NOSAI全国連2025年9月12日
-
成長軌道の豆乳市場「豆乳の日」前に説明会を実施 日本豆乳協会2025年9月12日
-
スマート農園を社会実装「品川ソーシャルイノベーションアクセラレーター」に採択 OYASAI2025年9月12日
-
ご当地チューハイ「寶CRAFT」<大阪泉北レモン>新発売 宝酒造2025年9月12日
-
「卵フェスin池袋2025」食べ放題チケット最終販売開始 日本たまごかけごはん研究所2025年9月12日
-
「日本酒イベントカレンダー 2025年9月版」発表 日本酒造組合中央会2025年9月12日