コメの臭いまで検査する大手コメ卸【熊野孝文・米マーケット情報】2022年11月1日
新米入荷の最盛期を迎え流通業者にとって気がかりなことの一つに玄米の「品位」がある。
4年産米の価格は「産地高の消費地安」が顕著になっており、これに加え玄米の品位が落ちると製品精米の歩留まりに直結、コスト増の要因になるため、品位チェックが熱を帯びるのは当然だ。品位チェックを行っている全国団体と言えば一般社団法人日本精米工業会がまず挙げられる。毎年、全国からおよそ1300ものサンプルを取り寄せて、各産地銘柄米の品質データを計測し、会員精米工場にそのデータをフィードバックしているほか、食味テストも行っている。個々の企業では、品質・食味だけではなく、コメやご飯の臭いも大事だということで「臭気判定士」という資格を持っている品管職員もいる。
日本精米工業会(東京都中央区 会員者数265社)が会員社に提供している4年産米の品位データの一例を示すと、新潟コシヒカリは県内36か所から取り寄せたサンプルの計測データが出ている(計測日は10月3日から10月27日)。
測定データの平均値は、水分14.1%、白度20.6%、整粒89.9%、白未熟粒1.3%、青未熟粒0.3%、他未熟粒0.3%、胴割粒5.2%、被害粒2.3%、青死米0.0%、白死米0.2%、着色粒0.2%となっている。地区によっては平均値よりかなり高い値が計測されるところもある。たとえば胴割粒のデータを見ると、最も少ない地区の値は0.4%の混入度合いだが、多いところは17.4%も混入している。等級格付けでは2等になっているが、17%を超える胴割れが混入している玄米を搗精(とうせい)すると粉砕してちゃんとした精米にならないばかりか、炊飯時にでんぷんが溶解してべたついた飯米になってしまい外食店に納入した場合、クレーム対応に走り回らなくてはならない羽目になる。
新潟コシヒカリほどではないにしても各産地銘柄米の胴割の数値を見てみると高い値を示している産地銘柄もある。胴割れ発生要因はさまざまだが、今年の場合、刈り取り時期の台風や長雨で刈り遅れが発生、乾燥調製が予定通り進まなかったことも挙げられる。精米工業会によると台風14号の上陸前と後では同じ産地の銘柄米でも玄米の光沢に影響が出ているという。人的要因で玄米品位劣化を防止できるものはともかく、台風のような自然現象により品位が劣化してしまうケースが近年頻発しているため精米工業会でも気象データを調べている。
稲の幼穂形成期から登熟期までの月ごとの平均気温、降水量、日照時間を日本地図上に落とし込み、色分布でその産地の状況を示している。8月は全国的に暑かったという記憶しかないが、地図をよく見ると秋田県周辺は平年気温を下回っており、これが作況を低下させた一因とも考えられる。降水量では青森県は8月に平年の3倍もの雨が降っている。まさに生産地によって気象条件の違いが際立っているというのが近年の特徴ともいえ、仕入れる側としてはリスク分散のためにも特定地域の特定銘柄に偏ることは避けた方がよさそうだ。
精米工業会が指摘する近年のコメの特徴として、全国的に気温が上昇しており、稲の生育期間が早まった結果、穂数当たりの着粒数が減少、かつ小粒傾向になっているという。近年、大粒の品種に人気が出ているのもこうした気象条件が関係しているようだ。
個々の企業では、ひと昔前に比べると品位チェックは格段に厳しくなっている。中でも徹底していると言われる大手卸の品質管理室責任者に話を聞いてみた。この会社、精米工場に搬入されるトラックの荷台に靴跡が付いていただけで返品されたという逸話がある。そうした逸話があるだけに原料仕入れの品質チェックと製品段階の品質チェックの2段階になっており、30分にわたりチェック項目を説明されたが、そうしたことをいちいち紹介するより、この会社が独自に定めている品位規格の一つを示した方がわかりが早いと思われる。この会社では重量比で0.2%の着色粒が混入していると「出荷止め」になる。それだけではなく、この会社では「嗅覚官能検査」を行っている。
嗅覚官能試験は「人間の嗅覚は機械よりも高感度」という認識のもと、すべての入荷原料、出荷製品に対して訓練を受けた検査官が官能試験を実施しているという。臭いの検査にも6段階臭気強度表示法、9段階快・不快度表示法というものがあり、それを評価できるようにトレーニングが行われる。精米工場の職員もこの訓練を受け、精米工程でサンプルを取り出して臭いを嗅ぐ。驚くのは説明資料に「産地独特の臭いがある」と記されていたが、どんな臭いなのか聞くのはやめ「徹底していますね」と言うに留めた。
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