外来DNAをもたないゲノム編集植物 作出を大幅に効率化 農研機構2025年7月2日
農研機構と東京大学、龍谷大学の研究グループは、小型でゲノム編集効率が高いゲノム編集酵素である改変AsCas12fとジャガイモXウイルス由来のベクター(PVXベクター)を組み合わせることで、主要なゲノム編集酵素であるSpCas9を用いる場合と比較して、ゲノム編集植物体の作出効率を30倍以上高めることに成功した。この成果を応用すれば、外来DNAをもたない効率的かつ簡便なゲノム編集技術をより多くの植物種に適用できると考えられる。
ゲノム編集は特定の遺伝子を狙って改変する技術で、社会ニーズにあった農作物を短期間で作出できる優れた作物育種技術として期待されている。
ゲノム編集植物を作出するには、ゲノム編集酵素の遺伝子を植物ゲノムに組み込んでゲノム編集を誘導するのが一般的。外来DNAであるゲノム編集酵素遺伝子が組み込まれた作物は遺伝子組換え植物となるため、ゲノム編集が起きた植物体から種子を採って、次世代の中からゲノム編集酵素遺伝子が組み込まれていない個体を選ぶ手法がとられている。しかし、イモや果樹のように、種子ではなく茎や根といった栄養体で増える植物や種子を得るまでに長い時間がかかる植物ではこの方法は不向きとなる。
一方、ウイルス由来のベクター(遺伝子の運搬役、以降、ウイルスベクターと表記)にゲノム編集酵素遺伝子を載せるウイルスベクター法では、ゲノム編集酵素遺伝子は植物のゲノムに組み込まれず、ウイルスゲノムの一部として植物細胞内で増殖。これが細胞間を移行してゲノム編集を起こす。よって、ウイルスベクターを導入した植物体の葉から植物体を再生させることで、外来DNAをもたないゲノム編集植物体を得ることができる。
図1:SpCas9または改変AsCas12fを用いたウイルスベクター法による外来DNAをもたないゲノム編集植物体の作出
農研機構はこれまでに、ナス科植物に感染するジャガイモXウイルス(PVX)を元にしたウイルスベクター(PVXベクター)と主要なゲノム編集酵素であるSpCas9遺伝子を利用して、外来DNAをもたないゲノム編集植物体の作出に成功。しかし、この方法ではゲノム編集植物体を得られる効率が1.6%と低いことが問題だった(図1左)。
これは、PVXベクターに載せたSpCas9遺伝子が大きいために、PVXベクターが増幅し、細胞間を移行する間にSpCas9遺伝子がPVXベクターから脱落してしまい、ごく一部の細胞でしかゲノム編集が生じないことが原因と考えられた。
この問題を解決するため、同研究では、東京大学を中心とする研究グループが開発した、小型でゲノム編集を起こす活性が高いゲノム編集酵素である改変AsCas12fを利用。改変AsCas12fの遺伝子を載せたPVXベクターをナス科のモデル植物であるベンサミアナタバコの葉に導入したところ、60%の高効率でゲノム編集植物体を得ることができた(図1右)。
なお、農研機構は、ゲノム編集が生じた葉から植物体を再生させる過程でウイルスベクターを細胞から取り除く方法も開発している。
今後は、改変AsCas12fを載せたウイルスベクターを用いたゲノム編集と、ウイルスベクターを取り除く方法を組み合わせて、より多くの植物種でウイルスベクターも外来DNAももたない植物体を簡便に作出する方法の確立を目指す。
同研究成果は国際誌『Frontiers in Plant Science』に掲載された。
重要な記事
最新の記事
-
【第46回農協人文化賞】地域包括医療を推進 厚生事業部門部門・長野県厚生連佐久総合病院名誉院長 夏川周介氏2025年7月15日
-
【特殊報】ナシにフタモンマダラメイガ 県内で初めて確認 島根県2025年7月15日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 島根県内全域で多発のおそれ2025年7月15日
-
【注意報】野菜類、花き類、ダイズにオオタバコガ 滋賀県内全域で多発のおそれ2025年7月15日
-
【注意報】水稲に斑点米カメムシ類 栃木県全域で多発のおそれ2025年7月15日
-
米価 7週連続で低下 5kg3602円2025年7月15日
-
農業法人 米販売先 農協系統がメインは23% 日本農業法人協会2025年7月15日
-
2025年産米 前年比56万t増の見込み 意向調査概要2025年7月15日
-
テキサス洪水被害は対岸の火事か 公務員削減が安全・安心を脅かす 農林水産行政にも影響2025年7月15日
-
コメ増産政策に転換で加工用米制度も見直しが急務【熊野孝文・米マーケット情報】2025年7月15日
-
青森米パックご飯ご愛顧感謝キャンペーン 抽選で200人にQUOカード JA全農あおもり2025年7月15日
-
農機担当者向け「コンプライアンス研修会」を初開催 JA全農やまなし2025年7月15日
-
農機フェア2025を開催 2日間で5309人が来場 富山県JAグループ2025年7月15日
-
GREEN×EXPO2027 特別仕様ナンバープレート交付記念セレモニー開く 横浜市2025年7月15日
-
「幻の卵屋さん」アリオ北砂で5年ぶり出店 日本たまごかけごはん研究所2025年7月15日
-
子ども向け農業体験プログラム「KUBOTA AGRI FRONTの夏休み2025」開催 クボタ2025年7月15日
-
香春町と包括連携協定締結 東洋ライス2025年7月15日
-
官民連携 南相馬市みらい農業学校生へ農業経営相談機能等を提供 AgriweB2025年7月15日
-
鳥インフル 米ワシントン州などからの生きた家きん、家きん肉等 輸入停止措置を解除 農水省2025年7月15日
-
鳥インフル ブラジルからの生きた家きん、家きん肉等 輸入を一時停止 農水省2025年7月15日