輝き始めたむらの女性たち【酒井惇一・昔の農村・今の世の中】第227回2023年2月16日

21世紀に入ったばかりの頃の東北農業経済学会のシンポジウムで、ある女性研究者が農村における男女共同参画を課題にして報告した。そのなかで彼女はいかに農村婦人がひどい状況におかれているかを延々と説いた。
そしたら、パネラーの一人である福島のさる農協の組合長がこう発言した。
「私はそうは思わない、うちの地域のカカアたちはもっと元気です」
私は心の中で拍手をした。そうなのである。農村の婦人はかつてとは大きく変わっている。この女性研究者はそれを見ていないのではないか。そしていまだにその昔の農村婦人を夢見て、というよりは農村の婦人はそういうものだという先入観でもって見て、昔のタイプの研究者と同じように、いかに農家の女性の地位は低いか、虐げられているかということばかりをヒステリックに叫ぶ。そんなことばかり言うから農村に嫁が来なくなるのだと言いたくなったものだった。
もちろん婦人問題が農村にないわけではない(都市にももちろんあるが)。農協の理事や自治体の議員のほとんどが男性ということからもそれはわかる。女性が外に出るのにいまだに夫や親の顔色をうかがわなければならないという家もないわけではない。また、夫は外に働きに行き、自分が農作業の中心をなしているのに、夫の指示を仰ぎ、そのいうままに働く女性もいる。
ある女性がこう言って笑っていたが、夫がじゃまをする家もある。
「この日に農協婦人部の集まりに出ようとカレンダーに記入すると、夫がわざとその日にぶつけて用事をつくり、私が出かけられないようにする」
こんなことをいう女性もいた。
「女性の敵は女性だ」
女性の足の引っ張り合いは男以上だ、やきもち、かげ口、うわさ話、いやがらせ等々、昔ほどではないがまだ残っていると言うのである。
しかし、変わってきた。昔を考えれば信じられないくらい変わった。
まず、女性は経営面でも技術面でも男性と対等になってきた。80年代、稲作技術講習会に行くと、出席者の半数以上が女性だった。男どもの多くは兼業に出ており、日常の肥培管理の中心は女性となってきたからである。こうしたなかで農業技術に関する知識、最新知識を夫や両親よりもっていて、外に対しては夫が中心であるような顔をしながら、実質は自分が農作業や技術の決定をしている女性も出てきた。
奥さんが家で農業に従事している農協職員のある男性が言っていた。
「休日になると大変だ。カアチャンがしめたとばかり農作業で自分をこき使う。だから一週間休みはないことになる。自分はカアチャンに雇われた労働者のようなものだ」
専業農家の女性も強くなった。技術の研修会や市場視察などとなると、男性といっしょに参加するようにもなっていた。
岩手県の北上山地に行ったとき、ある農協の職員の方がこう言っていた、牛の飼育農家のカアチャンたちを市場視察に連れて行くと他の産地の牛を見たり話を聞いたりして一生懸命だ、勉強熱心なカアチャンがいろいろ頭を使いながら自発的にやっている、カアチャンが一生懸命かどうかで牛は決まる、と。その昔とは大きな違いである。
同じような話をあるトマト産地(どこだったか思い出せない)で聞いた。出荷組合で神田に市場視察に行った。ご婦人方は市場内をあちこち歩いて他産地から出荷されてくるトマトを熱心に見てその品質や規格などを比較し、その評価などを市場関係者から一生懸命聞いている。競りが始まると、目をらんらんと輝かせてどの産地のものがどれだけの値段で売れたかを見ている。ところが男どもはどうか。黙って動かない。前夜の酒の飲み過ぎで二日酔いの頭をかかえて座り込んでいる。ご婦人は男よりもずっとまじめだ、これからは女性中心に技術指導していく、同行した営農指導員はこう言って苦笑していた。
農協の直売所、これなどはまさに女性によって成り立っており、地域によっては奥さん方が運営の中心、そこへの出品物も奥さんが決定、ご主人はお手伝い・運び屋、それをあちこちの地域で見たとき、私の頬はゆるみっ放しだった。
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