【稲作農家の声】 地域の作付「23%未達」 安心して増産できる農政に 見沼田んぼの専業農家・浅子幹夫さん2025年6月11日
2024年、埼玉の米農家も高温とイネカメムシに苦しんだ。25年はどうか。田植えが始まったさいたま市・見沼田んぼを訪ね、専業農家の浅子幹夫さんに米価高騰と小泉劇場、今後の米政策への意見を聞いた。
「米の需要はもっと増やせる」と話す浅子幹夫さん(埼玉県さいたま市)
見沼代用水の近くで
利根川から取水し埼玉県東部の農地に水を運んできた見沼代用水が2019年、世界かんがい施設遺産に登録された。専業の米農家、浅子幹夫さん・紀子さん夫妻の浅子ファームは、見沼代用水東縁にほど近い。
田と畑各2ヘクタール、平飼い養鶏200羽以上、果樹20アールを有機栽培、循環農法で営んでいる。地域農業再生協議会で副代表も務める浅子幹夫さんに、米問題への思いを聞いた。
有機野菜が並ぶ浅子ファームの直売コーナー。店に立つのは幹夫さんの妻、浅子紀子さん
作付目標が約23%未達
「生産量が足りていなかったのに政府が認めないため、対応が後手後手になった」と浅子さんは話を始めた。
埼玉は猛暑とイネカメムシで収量が落ち、不稔など米の質も下がった。「作況指数ほどとれていない」。全国の産地で聞かされてきた言葉を浅子さんも発した。
地域の再生協で集約したところ、2024年の作付面積は目標の77.1%にとどまった。「需要に応じた生産」のために作付面積を調整しているのに作付目標が約23%も未達で、収量も減った。「基盤整備などで休耕した田もあると思うが、これだけ減った原因はよくわからない」(浅子さん)。主食用米の作付面積が目標に届かない事例は他県でも報告されている。
備蓄米放出には理解、「劇場」に危惧も
作況と作付面積に加え「農家が大きく減った」ことをあげ、「『時給10円』で営農が継続できるわけがない。米が安過ぎた時、政府は何もしなかった」と浅子さんは怒る。
随意契約で放出した備蓄米を量販店店頭等で5キロ2000円で売らせようとする小泉農相の政策には批判も出ているが、浅子さんは「品物によって単価は決まる。古古米、古古古米は物が違うので安くなる」と理解を示す。「ただ、仮想の敵を作って『改革』を言うのは危ういが」と小泉劇場への危惧も付け加えた。
米の需要、もっと増やせる
米不足が高騰の主因である以上、浅子さんも言うように、生産調整を緩めて米を増産するのが王道ではある。ただ米は、需給の小さな変化が大きな価格変動につながりやすい。上がる時も、下がる時も。備蓄米放出や25年産米での主食用米の作付希望などを併せると、需給はかなり緩む方向にある。米価が再び下がり過ぎる恐れはないか。
「それはありうる。ただ、米の需要は大きくできる。政府はフードバンクや子ども食堂にももっと出すべきだし、海外援助にも使える。米粉も改善し用途も広がってきたし、備蓄も増やすべきだ。生産コストをすべて反映すると消費者にとって高すぎる米価になるので、適正価格と農家への所得補償を併用するのがいいのではないか」(浅子さん)
見沼田んぼに水を運ぶ見沼代用水東縁。徳川吉宗の命で1728年から新田開発が進められた。
若い新規就農者も
江戸時代から続く見沼たんぼの多くは、長い減反と低米価の結果、畑や耕作放棄地に変わった。浅子さんたちは耕作放棄地を田んぼに戻し、近年は若い新規就農者も来ている。
取材にうかがった日、初夏の陽気の下、浅子ファームでは田植え体験が行われていた。たくさんの親子連れが横一線に並んで田植えをしたり、ヤギのえさやりや泥んこ遊びを楽しんでいた。
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